ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

7月のチョウ類

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」では、6月初旬に短時間ですが、ヒョウを伴うゲリラ豪雨に見舞われました。その際、低幼木を中心に枝折れや葉の損傷などがあり、多大な被害を受けました。クヌギやコナラの低木は何本か根元から折れ、アオキなどの大きい葉の樹木はズタズタになりました。

その時以来、オオスズメバチの姿が全く見られなくなりました。きっと豪雨で巣が流されたのでしょう。木に傷を付ける役目をもつスズメバチがいなくなったせいか、ヤナギやアキニレの樹液の出が悪くなり、7月に入ると全くと言っていいほど、樹液を見ることがなくなりました。いま、クワガタなどの樹液に集まる昆虫も表面上激減しています。

楽しみにしていた樹液に集まるタテハチョウの姿も見られなくなりました。しかし、森の中では飛翔する沢山のチョウの姿を目撃することができます。ここでは7月に見ることができたチョウ種を紹介します。

7月も中旬を過ぎると、2化目のタテハチョウが飛ぶ姿が増えてきました。最も多く見られるのがコムラサキとアカボシゴマダラです。コムラサキはいつものとおり、樹木の高い位置にとまることが多いので、なかなか写真に収めることができません。一方で、アカボシゴマダラは低い位置でもユラユラ飛びながら静止するので、割と簡単に撮影することができます。

写真1、2は、樹木の低い位置に静止するアカボシゴマダラです。

写真1  カキノハ上に静止するアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis(2022年7月24日)

写真2  クワの葉上にとまるアカボシゴマダラ(2022年7月24日)

コムラサキ亜科のチョウとしては、ゴマダラチョウもこの森の常在種ですが、アカボシゴマダラよりも個体数が少なく、まだ2化目の個体を写真に撮るチャンスがありません。

上記のチョウ類に続いて、目撃回数が多いのがイチモンジチョウ亜科のアサマイチモンジ(埼玉県準絶滅危惧2型)、イチモンジチョウ、そしてコミスジです。7月の個体数としてはアサマイチモンジが最も多く、その半分くらいの割合でイチモンジチョウが見られます。5月には最多であったコミスジはめっきり少なくなりました。

写真3は、前翅の3室にある白紋の内側に小さな白点をもつアサマイチモンジです。

写真3  メダケの上に静止するアサマイチモンジ Limenitis glorifica(2022年7月7日)

写真4は、上記の個体を翅の裏側から撮ったものです。

写真4  メダケの上に静止するアサマイチモンジ(2022年7月7日)

アサマイチモンジは、ハンノキの森中央の少し開けた領域で飛んでいることが多く、下草やハンノキの葉上によく止まります(写真5)。

↑写真5  ハンノキの森の下草で静止するアサマイチモンジ(2022年7月24日)

写真6はイチモンジチョウです。アサマイチモンジといっしょによく飛んでいますが、近づいてよく見ないと識別することは難しいです。

写真6  ハンノキの葉上で静止するイチモンジチョウ Limenitis camilla(2022年7月24日)

上記のように(写真5)、アサマイチモンジは前翅第3室に白紋を有しますが、イチモンジチョウにはこれがありません。翅の裏側を見ても両者を識別することができます。写真7(矢印)に示すように、前翅に並ぶ白紋の4番目がはっきりしているのがアサマイチモンジ、この白紋がきわめて小さくなっているのがイチモンジチョウです。これらは翅の表側の模様にも反映されています。

写真7  翅の裏側からみたアサマイチモンジ(左)とイチモンジチョウ(右)の見分け方

写真8は7月に入ってめっきり少なくなったコミスジです。

写真8  アキニレの葉上で静止するコミスジ Neptis sappho(2022年7月24日)

写真9はキタテハです。一年中見られますが、7月は個体数が減るようです。

↑写真9  下草で静止するキタテハ Polygonia c-aureum(2022年7月24日)

ジャノメチョウ亜科では、ヒカゲチョウサトキマダラヒカゲ、ヒメジャノメが常在種ですが、前2種は7月に入り、ほとんど見られなくなりました。写真10はヒメジャノメです。

写真10  ヒメジャノメ Mycalesis gotama(2022年7月24日)

シジミチョウの仲間で7月に入って見られるようになったのがルリシジミです(写真11)。ハンノキの森の灌木の間を飛翔する姿が見られました。

写真11  ハンノキの森で見られたルリシジミ Celastrina argiolus(2022年7月7日)

この日休憩をしていると、ルリシジミがやってきて身体にとまりました。汗の匂いにつられてやってきたのでしょう。そのうち手の甲の上で汗を吸い始めました(写真12)。

写真12  手の甲で汗を吸うルリシジミ(2022年7月7日)

写真13はダイミョウセセリです。この個体は、関東型では通常見られない後翅の白紋がかすかに確認できました。

写真13  後翅にかすかに白紋がみられるダイミョウセセリ Daimio tethys(2022年7月24日)

最後は、チョウではないですがオナガミズアオです(写真14)。ハンノキの根元にいました。この森では4月と7月〜8月に多産します。

写真14  ハンノキの根元にいたオナガミズアオ Actias gnoma(2022年7月7日)

上記の写真で紹介した種の他、今年7月中に目撃できたチョウ類は以下のとおりです。

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アゲハチョウ科ナミアゲハナガサキアゲハ、クロアゲハ、アオスジアゲハ

シロチョウ科:モンシロチョウ、キタキチョウ

タテハチョウ科コムラサキゴマダラチョウヒメアカタテハルリタテハツマグロヒョウモン、ヒメウラナミジャノメ

シジミチョウ科:ミズイロオナガシジミヤマトシジミベニシジミ、ウラギンシジミ

セセリチョウイチモンジセセリ、オオチャバネセセリ、キマダラセセリ

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これから証拠写真を揃えていきたいと思います。

             

カテゴリー:生き物観察

ヤナギ類に群がる昆虫

2022.06.29更新  カテゴリー:生き物観察

樹液を出す木と言えばクヌギがコナラがよく知られています。残念ながら「ゆるむしの森」のクヌギやコナラはまだ低幼木の段階であり、樹液は期待できません。他方、樹液ではクヌギに劣らないヤナギ類が豊富にあります。ここで、5月の終わりから6月に観察できたヤナギ類上の昆虫について紹介します。

まずは、マルバヤナギに飛来したアカボシゴマダラの春型(白化型)です(写真1)。先のブログ記事(→クワガタムシ発生)でもすでに紹介していますが、この写真を撮った5月終わり頃に樹液を吸う姿が最もよくみられるチョウの一つです。6月に入ると急激に個体数を減らし、このブログを書いている時点ではほとんどみられなくなりました。7月に入れば、2化目の成虫がみられるようになるでしょう。

写真1  マルバヤナギ Salix chaenomeloides にとまるアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis の白化型(2022年5月28日)

写真2ゴマダラチョウです。アカボシゴマダラの類縁種で、ほぼ同時期に発生しますが、この森ではアカボシと比べると樹液を求めて飛来する姿は少ないです。個体数が少ないというわけではなく、エノキやアキニレの樹上を飛翔する姿を頻繁にみることができます。

写真2  マルバヤナギの樹液を吸うゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica(2022年6月1日)

樹液の吸蜜に飛来するチョウはほとんどがタテハチョウの仲間で、タテハチョウ亜科のルリタテハも頻繁にみることができます。5月はまだ越冬型の個体が主です。先のブログ記事(5月のタテハチョウ)でも紹介しています。

写真3  マルバヤナギにとまるルリタテハ Kaniska canace(2022年5月28日)

写真4はキタテハです。タテハチョウ亜科のなかでは、最も目撃が多い種です。

写真4  マルバヤナギにとまるキタテハ Polygonia c-aureum(2022年6月1日)

ヤナギを食樹とする代表種がコムラサキです。時おり樹液を吸う成虫をみることができますが、ヤナギ類や他の樹木の周囲を旋回する個体が主で、比較的高い位置で静止するので、なかなか写真に収める機会がありません。写真5は、樹液を吸う個体の貴重なスナップです。

写真5  マルバヤナギの樹液を吸うコムラサキ Apatura metis(2022年6月29日)

一方、6月も後半になると、2化目の終齢幼虫の姿が見られるようになります。写真6は、カワヤナギの葉を食べている最中の終齢幼虫です。

写真6  カワヤナギ Salix gilgiana の葉を食べるコムラサキ終齢幼虫(2022年6月23日)

ほかのコムラサキ亜科の幼虫と同じように、葉上に台座をつくり、頭をもたげるような格好で位置取りする姿をみることができます(写真7)。

写真7  カワヤナギの葉上で位置取りするコムラサキ終齢幼虫(2022年6月23日)

5月の終わり頃、マルバヤナギの幹上にホシカレハの卵を見つけました(写真8)。

写真8  マルバヤナギに産みつけられたホシカレハ Gastropacha populifolia の卵(2022年5月28日)

すでに先のブログ記事(→クワガタムシ発生)で紹介しているように、ヤナギの幹上にはクワガタムシをはじめとするたくさんの甲虫類をみることができます(写真9)。

写真9  マルバヤナギ上のコクワガタ Dorcus rectus とヨツボシケシキスイ Glischrochilus japonicus(2022年6月18日)

5月終わりにはまだみられなかったノコギリクワガタですが、6月に入ってからだんだんと個体数が増えてきました(写真10)。

写真10  マルバヤナギ上のノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus(2022年6月23日)

6月も後半になると、1化目の成虫が減り始め、ほとんど姿が見えなくなるなかで、ジャノメチョウ亜科の種が幅を利かしています。ヤナギの樹液を吸う姿ではヒカゲチョウが最も多く、サトキマダラヒカゲがこれに次ぎます。樹液レストランの昆虫については、また追って紹介したいと思います。

2022年6月29日更新

樹液を吸うコムラサキの写真(写真5)を挿入しました。

            

カテゴリー:生き物観察

初夏のシジミチョウ

カテゴリー:生き物観察

この記事では、「ゆるむしの森」で6月初旬から中旬にかけて見られたシジミチョウの仲間を紹介したいと思います。

この森で最も期待していたことがミドリシジミ (埼玉県準絶滅危惧1型 [NT1])の発生です。4月にはハンノキに幼虫を(→ミドリシジミ)、5月下旬には、樹木の根元にいくつかの蛹を確認していました(写真1)。

写真1  ハンノキの根元のミドリシジミ Neozephyrus japonicus の蛹(2022年5月28日)

6月初めに森を訪れると、待望の成虫が発生していました。ミドリシジミの♂です(写真2)。この森で初めて成虫を見ることができました。

写真2  ハンノキ上で休むミドリシジミ(2022年6月1日)

10日余り後に訪れると、目撃できる個体数は増加し、日中ハンノキの葉上に目を凝らすとあちこちに静止している姿を見ることができました。残念ながら、開翅する姿を撮ることはできませんでした。

写真3  ハンノキの葉上で静止するミドリシジミ(2022年6月13日)

もう一つ初めて確認できたのがムラサキシジミです。森の外れに大きなシラカシがあるので期待はしていたのですが、昨年は一度も見ることができず、今回待望の目撃となりました(写真4)。

写真4  ムラサキシジミ Neozephyrus japonicus(2022年6月18日)

さらに、初めて撮影できたのがウラギンシジミです(写真5)。普通種ですが、これまで写真に収める機会がありませんでした。タヌキの糞に止まるところを撮ることができました。

写真5  タヌキの糞にとまるウラギンシジミ Curetis acuta paracuta(2022年5月28日)

写真6は常連のベニシジミです。ヒメジョオンで吸蜜する姿は色彩鮮やかで可憐です。

写真6  ヒメジョオンで吸蜜するベニシジミ Lycaena phlaeas(2022年6月13日)

写真7は、これも常連のツバメシジミです。

写真 ツバメシジミ Everes argiades の♀(2022年6月18日)

このほかにヤマトシジミやルリシジミをたくさん見ることができました。6月中旬の夕方、森を後にする時にミズイロオナガシジミ?らしきチョウが飛翔する姿を見かけましたが、しっかりと確認できませんでした。

            

カテゴリー:生き物観察

クワガタムシ発生

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」では、例年5月の終わり頃になるとクワガタが見られるようになります。今年もそろそろかなと思って訪れてみると、ちゃんと発生していました。この森には樹液の豊富なクヌギの高木はないのですが、この時期、アキニレ、ハンノキ、マグワ、ヤナギ類の樹液レストランが開店中、クワガタのお客が来店していました。

写真1はハンノキ Alnus japonica の主幹にいたクワガタです。コクワガタ Dorcus rectus のオスと思われますが、特徴的な内歯の発達が確認できませんでした。小型の部類でしょう。

写真1  ハンノキ上のコクワガタのオス(2022年5月25日)

同じハンノキにいたコクワガタと思われるメスです(写真2)。

写真2  ハンノキにとまるコクワガタのメス(2022年5月25日)

写真3はアキニレ Ulmus parvifolia にとまるクワガタです。こちらもコクワガタのメスと思われますが、メスははっきり言ってよくわかりません。

写真3  アキニレにとまるコクワガタ(メス)と思われる個体(2022年5月25日)

この森には立派なマルバヤナギ Salix gilgiana が生えていますが、樹液が豊富で次々とアカボシゴマダラ Hestina assimilis assmilisオオスズメバチがやってきていました。写真4はアカボシゴマダラの白化型です。

写真4  マルバヤナギの樹液を吸うアカボシゴマダラ白化型(2022年5月25日)

同じ位置で画像を撮っていたら横から樹液の固形物を抱えたクワガタがやってきました(写真5)。

写真5  マルバヤナギ上のアカボシゴマダラとクワガタ(2022年5月25日)

こちらもアカボシゴマダラとクワガタの共演です(写真6)。

写真6  マルバヤナギ上のアカボシゴマダラとクワガタ(2022年5月25日)

もっと近づいて観察したかったのですが、どの樹液の木の周りもオオスズメバチがブンブン飛んでいて、思うようにいきませんでした。まもなく、ノコギリクワガタヒラタクワガタなども登場してくると思います。昨年は5月末に、ノコギリクワガタが見られました(→初夏の昆虫)。

            

カテゴリー:生き物観察

5月のタテハチョウ

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」は平野のど真ん中にある小さな森ですが、タテハチョウの仲間が豊富に生息し、5月のこの時期1化目の個体が乱舞する姿を見ることができます。先のブログ記事「5月上旬の昆虫」でも紹介しましたが、飛ぶ姿が目立つのはコムラサキ亜科のゴマダラチョウとアカボシゴマダラです。

今日も沢山飛翔する姿が見られたものの、なかなかとまってくれず、あるいは木々の高い位置に葉に隠れるようにとまることが多かったため、写真におさめることができませんでした。一方で、蛹や幼虫もまだまだ見られます。写真1はエノキにぶら下がっていたゴマダラチョウの蛹です。

写真1  エノキの低い位置にぶら下がるゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica の蛹(右側にオヤブジラミが見える)(2022年5月18日)

アカボシゴマダラの蛹も沢山見ることができましたが、何とこの時期、エノキの幼木にまだ脱皮していない越冬幼虫がいました(写真2)。

写真2  アカボシゴマダラ Hestina assimilis assmilis の越冬幼虫(脱皮前)(2022年5月18日)

上記2種に負けじとたくさん飛んでいたのがコムラサキです。ゆるむしの森にはヤナギ類が豊富に生えていますが、カワヤナギの周りを数個体が飛び回っていました。写真3はアキニレの葉上に静止するコムラサキです。

写真3  アキニレの葉にとまるコムラサキ Apatura metis(2022年5月18日)

コムラサキ亜科の種と並んで沢山飛んでいたのがイチモンジチョウ亜科のチョウです。前のブログでコミスジを紹介しましたが、今日は加えてイチモンジチョウとアサマイチモンジ(埼玉県準絶滅危惧2型 [NT2])が乱舞していました。

写真4は、イチモンジチョウがとまる姿です。前翅の縦に並ぶ白紋の列の4番目が著しく小さくなる(消えかかる)ことでアサマイチモンジと見分けることができます。

写真4  クワの葉にとまるイチモンジチョウ Limenitis camilla(2022年5月18日)

写真5は翅をひらいたところを捉えたものです。前翅の縦の白紋の4番目が小さいことに加えて、前側の中央の白紋がほとんど消えることで特徴付けられます。

写真5  ハンノキの葉上にとまるイチモンジチョウ(2022年5月18日)

写真6は別の個体のイチモンジチョウです。

写真6  アキニレの葉上にとまるイチモンジチョウ(2022年5月18日)

写真7はアサマイチモンジです。埼玉県では準絶滅危惧2型(NT2)に指定されている種です。前翅の縦の白紋列の4番目がしっかり確認できます。また前翅表側の先端中央に、イチモンジチョウにはない白紋がかすかに見えます。

写真7  アキニレの木にとまるアサマイチモンジ Limenitis glorifica(2022年5月18日)

写真8は別個体のアサマイチモンジです。

写真8  カワヤナギの葉にとまるアサマイチモンジ(2022年5月18日)

マルバヤナギの樹液が出ている部分にはルリタテハがいました(写真9)。翅が痛んでいて越冬の成虫だと思われます。

写真9  マルバヤナギにとまるルリタテハ Kaniska canace(2022年5月18日)

森の傍にある石塀には別のルリタテハがとまっていました(写真10)。こちらも翅が少し痛んでいて、翅の色もくすんでいます。越冬個体だと思われます。

写真10  石塀にとまるルリタテハ(2022年5月18日)

クワの幹には、ジャノメチョウ亜科のサトキマダラヒカゲがとまっていました(写真11)。

写真11  クワの幹にとまるサトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii(2022年5月18日)

ジャノメチョウでは、ヒメジャノメも写真に収めることができました(写真12)。

写真12  カキノキの葉上にとまるヒメジャノメ Mycalesis gotama(2022年5月18日)

タテハチョウでは、上記のほか、キタテハ、ツマグロヒョウモン、およびヒカゲチョウを見ることができました。

タテハチョウ以外では、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、ナガサキアゲハ、モンシロチョウ、キタキチョウモンキチョウヤマトシジミベニシジミイチモンジセセリを目撃しました。

            

カテゴリー:生き物観察

5月上旬の昆虫

カテゴリー:生き物観察

5月初旬の大型連休に明けに「ゆるむしの森」を訪れました。森はますます緑の度合いを増していました。たくさんのチョウが乱舞していて、目立ったのがゴマダラチョウとアカボシゴマダラです。5月初めは1化目の羽化が続々と始まる時期ですが、あちこちに蛹痕を見つけることができました。

残念ながら、これらのチョウは樹木の周りを割と高速で舞っていて、写真に収めることができませんでした。他にはナガサキアゲハナミアゲハ、モンシロチョウ、ルリタテハ、キタテハ、ヒメアカタテハ、アサマイチモンジ、ツマグロヒョウモンサトキマダラヒカゲ、ダイミョウセセリを目撃することができましたが、シャッタ−チャンスがありませんでした。

それらのなかで、唯一とまるところを撮ることができたのがコミスジ(タテハチョウ科 イチモンジチョウ亜科)です(写真1)。パッパッ、スーという感じの独特の飛び方をしますが、大発生していました。

写真1  コミスジ(2022年5月4日)

ハンノキの林の下は、オヤブジラミ Torilis scabra(セリ科)が大繁茂していて一面を覆っていました。前のブログ記事「ギンツバメ」でも紹介したように、ギンツバメがあちこちにとまっていました。

写真2  ハンノキの林の下に繁茂するオヤブジラミ(2022年5月12日)

ギンツバメとともに、オオウンモンクチバ Mocis undata(ヤガ科 シタバガ亜科)があちこちに見られました(写真3)。本種は、前翅内側には黒点があることで特徴付けられますが、これはその特徴がない個体です。

写真3  オヤブジラミにとまるオオウンモンクチバ(2022年5月12日)

オヤブジラミの繁みのところどころには、セイタカアワダチソウが生えていて、そのうちの一つにマメドクガ Cifuna locuples confusa(ドクガ科)の幼虫がいました(写真4)。いかにも毒々しい感じです。

写真4  セイタカアワダチソウの葉上のマメドクガの幼虫(2022年5月12日)

観察路の脇にはムラサキツメクサアカツメクサTrifolium pratenseマメ科)がたくさん見られました(写真5)。

写真5  ムラサキツメクサアカツメクサ)(2022年5月12日)

よく見ると、花にマルカメムシ Megacopta punctatissimumマルカメムシ科)が群がっていました(写真6)。本種は甲虫にも見えますが、れっきとしたカメムシの仲間で、実際触ってみるとスパイシーなカメムシ臭がします。

写真6  アカツメクサの花に群がるマルカメムシ(2022年5月12日)

アカツメクサの葉の裏側にはナシケンモン Viminia rumicis(ヤガ科 ケンモンヤガ亜科)と思われる幼虫がいました(写真7)。

写真7  ナシケンモンと思われる幼虫(2022年5月12日)

アキニレの主幹からは、まだ匂うほど本格的ではありませんが、あちこちから樹液が出ていて、甲虫類が集まっていました。写真8は、サビキコリ Agrypnus binodulus(コメツキムシ科 サビキコリ亜科)です。

写真8  アキニレ上のサビキコリ(2022年5月12日)

樹液にはヨツボシケシキスイ Glischrochilus (Librodor) japonius(ケシキスイ科 オニケシキスイ亜科)が群がっていました(写真9)。クワガタの雌のような「あご」をしています。

写真9  アキニレの樹液に群がるヨツボシケシキスイとサビキコリ(2022年5月12日)

アキニレの上にはハナムグリ CetoniaEucetoniapilifera piliferaコガネムシハナムグリ亜科)もいました(写真10)。

写真10  アキニレの上のハナムグリ(2022年5月12日)

もう少しすれば、樹液上にはクワガタやカブトムシが見られるのではないかと思います。

            

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ギンツバメ

カテゴリー:生き物観察

この時期「ゆるむしの森」には、オヤブジラミ(セリ科)が一面に繁茂してきました。ハンノキの林も下側はオヤブジラミだらけですが、今日訪れてみると、この草のブッシュの間からあちこち白いものが見えます。何だろうと思って近づいてみると、ギンツバメAcropteris iphiata(ツバメガ科 ギンツバメ亜科)でした。

ギンツバメは開張 25–30 mm のガで、翅を広げてペタッと葉上にとまった姿は、何かのデザイン画の模様に見えます(写真1)。

↑写真1  オヤブジラミの葉上にとまるギンツバメ

オヤブジラミのブッシュのところどころには、セイタカアワダチソウが生えていて、ここにもとまっていました(写真2)。

↑写真2  セイタカアワダチソウの葉上にとまるギンツバメ

ヨシの葉上にもとまっていました(写真3)。

写真3  ヨシの葉の上にとまるギンツバメ

ギンツバメの幼虫が食草とするのは、ガガイモ、オオカモメヅル、コカモメヅル、トキワカモメヅル、ナンゴクカモメヅルなどのガガイモ科(現在キョウチクトウ科に再分類)の植物です。これだけ大発生しているということは、食草がたくさんあるということでしょう。森の中のガガイモ類を今度探してみようと思います。

            

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