ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

12月の越冬幼虫調査

カテゴリー:生き物観察

今年も12月に入り寒さが増してきました。ゆるむしの森では飛翔するチョウの姿もめっきり減りましたが、それでもモンチロチョウ、キタキチョウモンキチョウ、キタテハ、ウラナミシジミヤマトシジミなどがまだまだ見られます。一方で冬支度が本格化し、各々の越冬態での姿があちこちで見られます。

というわけで、今年の冬最初のコムラサキ亜科の越冬幼虫の調査を行いました。対象はエノキ Celtis sinennsis を食樹とするゴマダラチョウ Heitina p. japonica とアカボシゴマダラ Hestina a. assimilis、それにヤナギ類を食樹とするコムラサキ Apatura metis です。

写真1はアキニレ Ulmus parvifolia を中心とする混成の森で、ところどころに樹高10 mを超えるエノキの高木、3–<10 mの亜高木が生えています。このエリアのエノキを中心に根元の落葉にいる越冬幼虫を探索しました。

写真1 アキニレを中心とする混成の森

主なエノキ高木は落葉が風で拡散しないように、木の枝でこしらえた囲いと防風壁を設けています(写真2)。

写真2  落葉の拡散防止のための囲いと防風壁

写真2のエノキ高木は、例年10匹近くのゴマダラチョウの越冬幼虫を産出しますが、今回も落葉をめくってみると無事続々と出てきました(写真3)。他の高木、亜高木も約半数から1本あたり1–4匹のゴマ幼虫が出てきました。体長は頭部突起を除いて15-18 mmです。

写真3  ゴマダラチョウの越冬幼虫

エノキ高木から出てくるのはもっぱらゴマダラチョウで、アカボシゴマダラは稀です。アカボシが出てきたとしても数の上では圧倒的に少ないです。写真4は樹高 7 m 程度の亜高木ですが、この程度の樹高だとよくゴマダラチョウとアカボシゴマダラが時折混在して出てきます。

写真4  樹高 7 m のエノキ亜高木の根元

この亜高木を探ってみるとゴマダラチョウが3匹、アカボシゴマダラが2匹見つかりました(写真5)。

写真5 ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの越冬幼虫

この日は樹高 2 m 以下のエノキ低幼木も30本ほど探索しました。ほとんどからアカボシゴマダラが検出されました。数で言えば、幹上にいたものが4割、落葉にいたものが6割でした。だんだん寒くなるにつれて、幹上の幼虫は落葉に潜っていくものと思われます。

エノキの探索に時間をかけ過ぎて、コムラサキがいるヤナギ類の調査の頃には陽が傾き始めました。薄暗くなった状態での、ヤナギの樹皮の間にいるコムラサキの越冬幼虫(体長は頭部突起を除いて10 mm弱)を探すのはなかなか大変です。1本のヤナギからやっと1匹見つけました(写真6

写真6  カワナヤギ Salix gilgiana の主幹上のコムラサキの越冬幼虫(よく目を凝らして見つけてください)

ヤナギ類の探索はまた日をあらためて詳細に行ないたいと思います。

             

カテゴリー:生き物観察

晩秋のエノキと虫

カテゴリー:生き物観察

11月も後半になり、チョウを見る機会はめっきり少なくなりました。しかし、「ゆるむしの森」にチョウの成虫個体数調査に行くと、まだまだがんばっている種もいます。キタキチョウ、キタテハ、ウラナミシジミヤマトシジミなどです。同時に、この時期になると越冬幼虫の調査も始まります。特にエノキ Celtis sinensis を食樹とするコムラサキ亜科のチョウの越冬幼虫の調査は毎年詳細に行っています。

写真1は、エノキ幼木の葉上にいたアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis の越冬型4齢幼虫です(褐色化しています)。通常の4齢幼虫とは異なり、頭部突起が短くなり、胴体もコンパクトになっています。

写真1  エノキ幼木葉上のアカボシゴマダラの越冬型4齢幼虫(2022年11月18日)

11月に入るとアカボシゴマダラの越冬型幼虫は葉上から幹上に徐々に引っ越しします。写真2は幹上の位置取りを終えた個体です。さらに12月に入るとほとんどの個体は落葉の下へ移動し、そこで冬を越します。幹上に引っ越ししないで、直接落葉へ向かう個体もけっこういます。

写真2  エノキ幼木幹上のアカボシゴマダラの越冬型4齢幼虫(2022年11月18日)

なぜアカボシゴマダラは落葉に潜る前に幹上で一定期間過ごすのか、理由はよくわかっていないようです。これは類縁種のゴマダラチョウには見られない特徴です。

ある一本のエノキ幼木にはアカボシゴマダラの蛹の抜け殻がぶら下がっていました(写真3)。この幼木は一ヶ月前に調査したときは、通常型5齢幼虫しかいませんでしたので、その個体が蛹になり羽化したものと思われます。この時期だと4化目の羽化になります、

写真3  エノキ幼木にぶら下がるアカボシゴマダラの蛹痕(2022年11月18日)

エノキを見ていると割とカメムシの仲間が目撃できます。あるエノキ幼木には、アオクサカメムシ Nezara antennata の幼虫がいました(写真4

写真4  エノキ幼木葉上のアオクサカメムシの終齢幼虫(2022年11月18日)

別の日には、葉上にはエサキモンキツノカメムシ Sastragala esakii がいました(写真5)。紫色がかった褐色の体の中央に特徴的な白いハート型の斑紋があるので、同定は容易です。体の周囲と脚は緑から黄緑色をしています。

写真5  エノキ幼木葉上のエサキモンツノカメムシ(2022年11月2日)

エノキ葉上にいろいろなチョウが翅を休めていることがありますが、この日はチャバネセセリ Pelopidas mathias がとまっていました(写真6)。

写真6  エノキ幼木葉上のにとまるチャバネセセリ(2022年11月18日)

エノキ高木のほとんどは、まだ葉が沢山ついた状態ですが、比較的落葉が進んだ木を数本選んで根元を探索してみました。すると、ゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica の越冬幼虫が1匹出てきました(写真7)。この森でも、アカボシゴマダラはもっぱら低幼木で、ゴマダラチョウは高木根元で越冬します。

写真7  エノキ高木根元の落葉にいたゴマダラチョウの越冬型4齢幼虫(2022年11月18日)

落葉をめくっていたら、ここにもエサキモンツノカメムシがいました(写真8)。

写真8  エノキ落葉にいたエサキモンツノカメムシ(2022年11月18日)

最後に、まだまだ目撃できるチョウの一つとして、キタテハ Polygonia c-aureum を挙げます(写真9)。

写真9  晩秋のキタテハ(2022年11月18日)

             

カテゴリー:生き物観察

2022年秋のチョウ−2

カテゴリー:生き物観察

昨日(11月8日)は、「ゆるむしの森」のチョウの種と数の定期調査の日でした。先の記事で「2022年秋のチョウ」を紹介していますが、今回はその第二弾です。特に、この森におけるチョウと食草、蜜源植物との関係について、あらためて考えたいと思います。

写真1はゆるむしの森の遠景です。田んぼは稲刈りの後に再び伸びてきた穂もすっかり刈り取られていて晩秋の様相です。森全体はまだ紅葉にはちょっと早いです。

写真1  北側からみたゆるむしの森の全景

先の記事でも何度となく紹介していますが、森の草地部分に生えたセイタカアワダチソウコセンダングサに、依然として多数のキタテハ Polygonia c-aureum が群がっていました(写真2、3)。

写真2  セイタカアワダチソウで吸蜜するキタテハ(1)

写真3  セイタカアワダチソウで吸蜜するキタテハ(2)

この森で秋にキタテハが大量に見られる理由の一つは、蜜源植物としてのセイタカアワダチソウ、センダグサ類、アザミ類などの花がたくさん咲いていることです。花にチョウが訪れていれば、それだけ私たちの目に触れる機会は多くなります。おそらく、これらの植物から空中に放出される大量の誘因物質が、チョウたちを誘き寄せているのでしょう。

キタテハが大量に発生する理由はもちろん食草の量にあります。森の中や周辺には、幼虫の食草となるカナムグラ Humulus japonicus が豊富にあります(写真4)。アサ科カラハナソウ属のつる性植物(一年草)で、茎から葉柄にかけて下向きの小さな鋭い棘があり、触るとザラザラして痛いです。

写真4  カナムグラ

写真5はカナムグラの実です。ちなみに、類縁種で葉の形が似ているセイヨウカラハナソウオランダ語でホップ)の雌花(毬花)は、ビールの主要な原料の一つです。

写真5  カナムグラの実

キタテハと並んでタテハチョウ亜科の普通種としてアカタテハヒメアカタテハが知られていますが、この森ではキタテハと比べると目撃回数ははるかに少ないです。その理由はやはり食草の量にあると思われます。たとえば、アカタテハ幼虫の食草はイラクサ多年草のカラムシやヤブマオですが、森内および周辺を探しても、きわめて局所的にしか生えていませんでした。ヒメアカタテハの食草であるヨモギもやはり少ないです。

アカタテハは、まれにカナムグラやケヤキも食べると言われていますが、あくまでも代用食程度のものでしょう。

写真6は、森の一角にわずかに生えているヤブマオ Boehmeria japonica です。

写真6  ヤブマオ

果実が多数集まり、球状になって隙間なく連なる特徴があります(写真7)。

写真7  ヤブマオの果実

カラムシ Boehmeria nivea var. nipononivea になると森の中には見当たらず、近くの雑木林の縁まで行ってやっと見つけることができました(写真8)。

写真8  カラムシ

果実はやはり球状に固まってつきます(写真9)。

写真9  カラムシの果実

キタテハやシロチョウの仲間を除いて、この時期目撃できるチョウの多くは、発生ピークを過ぎて翅が破損しているものが多いです。写真10ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius で、翅が痛んでいます。

このチョウの食草はスミレ類ですが、外来のパンジービオラと呼ばれる園芸種も食べます。森内にはタチツボスミレやスミレが所々に生えていますので、発生を支えていると思われます。

写真10  ツマグロヒョウモン

写真11はヒメジャノメ Mycalesis gotama で、やはり翅が破損しています。めっきり数が減り、この日はわずか1頭のみでした。幼虫の食草は、ススキ、イネ、チヂミザサなどの単子葉イネ科植物で、この森では食べ物に困ることはありません。

写真11  ヒメジャノメ

アキニレの森の縁に生えているセイタカアワダチソウにムラサキシジミ Narathura japonica がいました(写真12)。このチョウの幼虫はブナ科の樹木の葉を食べますが、この森には隣接する神社にシラカシの高木があるものの、ブナ科樹木はもっぱら低幼木しかありません。そのせいか目撃頻度は少ないです。

写真12  セイタカアワダチソウにとまるムラサキシジミ

セイタカアワダチソウで見るシーンは少ないので、吸蜜しているかどうか、近づいてみたら、ちゃんと口吻を伸ばしていました(写真13)。

写真13  吸蜜中のムラサキシジミ

この個体はアキニレの葉の上に移動し、翅を広げ始めたので、シャッターチャンスと思ってデジカメのズームを伸ばしましたが、きちんと焦点を合わせる前に飛び去ってしまいました。撮れたのはボケボケの写真のみ(写真14)。

写真14  アキニレの葉上のムラサキシジミ

森の南側には、コシロノセンダングサ Bidens pilosa var. minor の群生が見られ(写真15)、シロチョウ、シシミチョウ、セセリチョウの仲間がたくさん訪れていました。

写真15  コシロノセンダングサの群生

この花で吸蜜していたチョウで最も多かったのが、チャバネセセリ Pelopidas mathias です(写真16)。

写真16  コシロノセンダングサで吸蜜するチャバネセセリ

こちらは、ミズキ Cornus controversa var. controversa の葉の上にとまっている個体です(写真17)。

写真17  ミズキの葉上のチャバネセセリ

成虫はもうほとんどいませんが、この時期、エノキ Celtis sinensis の低幼木にはアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis の越冬型幼虫がいっぱいいました(写真18)。

写真18  エノキ幼木上のアカボシゴマダラ越冬型4齢幼虫

と思ったら、終齢(5齢)幼虫もいました(写真19、20)。これから蛹になり羽化するのでしょうか。それともこのまま越冬に入るのでしょうか。

写真19 アカボシゴマダラ5齢幼虫(1)

写真20  アカボシゴマダラ5齢幼虫(2)

ゆるむしの森周辺のケヤキ高木はもう紅葉に入っていますが、森の木々も部分的に色付いてきました。その中で、カキノキ Diospyros kaki は真っ赤な大きな葉を見せていました(写真21)。

写真21  カキノキの紅葉

ちなみに写真21左の白いテープで囲んだ区域は、タチツボスミレが群生している場所です。踏みつけないように囲いをしてあります。

まもなく本格的な紅葉の森になるでしょう。

             

カテゴリー:生き物観察

2022年秋のチョウ

カテゴリー:生き物観察

この記事では、「ゆるむしの森」およびその周辺において、今年の9月下旬から昨日(11月2日)まで見られた主なチョウを紹介します。

秋の黄色い花の野草の代表と言えば、セイタカアワダチソウ(キク科アキノキリンソウ属)とコセンダングサ(キク科センダングサ属)です。どちらも繁殖力が極めて旺盛な外来種で、環境省により生態系被害防止外来種とされてきましたが、コセンダングサは、今年になって外されました。これらの花は吸蜜食性のチョウに好まれ、ゆるむしの森でもこの時期数々のチョウが訪れています。先のブログ記事でも少し紹介しています(→秋の下草

写真1はアオスジアゲハ Graphium sarpedon です。夏はヤブガラシ(ヤブカラシ)によく訪れるチョウですが、この日はコセンダングサで吸蜜していました。

写真1  コセンダングサで吸蜜するアオスジアゲハ(2022年10月11日)

写真2モンキチョウ Colias erate で、同じくコセンダングサで吸蜜しているところです。

写真2  コセンダングサで吸蜜するモンキチョウ(2022年9月26日)

写真3キタキチョウ(キチョウ)Eurema mandarina で、これもコセンダングサで吸蜜中です。ゆるむしの森で最も数の多いチョウの一つです。

写真3  コセンダングサで吸蜜するキタキチョウ(2022年10月21日)

以下はコンセンダングサおよびセイタカアワダチソウで吸蜜するモンチロチョウです(写真4、5)。モンシロチョウ Pieris rapae も多産するシロチョウ科の仲間ですが、この時期、数ではキタキチョウに負けます。

写真4  コセンダングサで吸蜜するモンシロチョウ(2022年10月3日)

写真5  セイタカアワダチソウで吸蜜するモンシロチョウ(2022年10月21日)

5月、7月、9月と数多く見られたアカボシゴマダラ Hestina a. assimilis ですが、10月に入るとほとんど見られなくなりました。写真6は翅が少し痛んだ個体です。この日一頭だけ目撃しました。同じコムラサキ亜科のコムラサキゴマダラチョウも見られなくなりました。これらは樹液食性なので、樹液の衰えと同時に姿を消してしまいます。

写真6  クワの木の葉にとまるアカボシゴマダラ(2022年10月3日)

ゆるむしの森の近くの民家の庭先にタテハチョウ亜科のアカタテハ Vanessa indica がいました(写真7)。普通種ですが、この辺りでは個体数が少なく、見る機会は少ないです。

写真7  民家の垣根にとまるアカタテハ(2022年10月21日)

この時期、個体数で目立つのは何と言っても秋型のキタテハ Polygonia c-aureum です。セイタカアワダソウやコセンダングサに群がるようにいました(写真8–12)。

写真8  コセンダングサで吸蜜するキタテハ(2022年10月21日)

写真9  セイタカアワダチソウで吸蜜するキタテハ(2022年10月21日)

写真10  セイタカアワダチソウで吸蜜するキタテハ(2022年10月21日)

写真11  コセンダングサで吸蜜するキタテハ(2022年10月21日)

写真12  セイタカアワダチソウで吸蜜するキタテハ(2022年11月2日)

キタテハの大発生はこちらのツイート動画でも紹介しています。

イチモンジチョウ亜科のチョウも、数は少ないですが、10月まで見ることができます。写真13はイチモンジチョウ Limenitis camilla です。

写真13  下草にとまるイチモンジチョウ(2022年10月21日)

以下はアサマイチモンジ Limenitis glorifica です(写真14、15)。

写真14  クワの木の葉にとまるアサマイチモンジ(2022年9月26日)

写真15  下草にとまるアサマイチモンジ(2022年9月26日)

写真16、17は、それぞれドクチョウ亜科のツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius の♀と♂です。どちらもセイタカアワダチソウで吸蜜中。北上化を続ける南方系のヒョウモンチョウで、30年前には関東地方では全く見られませんでした。

写真16  セイタカアワダチソウで吸蜜するツマグロヒョウモン♀(2022年11月2日)

写真17  セイタカアワダチソウで吸蜜するツマグロヒョウモン♂(2022年11月2日)

ドクチョウ亜科の種としてはミドリヒョウモン Argynnis paphia写真18)とメスグロヒョウモンDamora sagana写真19)を一回ずつ目撃しました。ミドリヒョウモンは昨年秋も一度目撃しています。

写真17  ノハラアザミを訪れたミドリヒョウモン♀(2022年10月3日)

どちらのヒョウモンチョウも埼玉県東部では滅多に見られない種ですが、県境の千葉県側ではときどき見かけますので、飛来する可能性、あるいは生息の可能性もあります。

写真18  樹木にとまるメスグロヒョウモン♀(2022年9月26日)

クロコノマチョウ Melanitis phedima はジャノメチョウ亜科の南方系の種ですが、埼玉県内でも見ることができます。ゆるむしの森では稀にしか目撃できませんが、毎年見ることができますし(写真19)、幼虫の発生も確認しています。

写真18  エノキ幼木にとまるクロコノマチョウ(2022年9月26日)

写真19シジミチョウ科のウラギンシジミ Curetis acuta です。個体数はそれほど多くないですが、一年中見ることができます。

写真19  エノキ低木にとまるウラギンシジミ(2022年10月21日)

写真20ベニシジミ Lycaena phlaeas です。セイタカアワダチソウで吸蜜中です。

写真20  セイタカアワダチソウで吸蜜するベニシジミ(2022年10月21日)

ゆるむしの森にはアラカシ、シラカシなどのブナ科常緑樹は低木しかありませんが、隣接する神社の森ではシラカシの高木が生えており、これを食樹とするムラサキシジミを見ることができます(写真21)。

写真21  下草にとまるムラサキシジミ(2022年9月26日)

秋に最も多く見られるシジミチョウがウラナミシジミです(写真22、23)。

写真22  コセンダングサで吸蜜するウラナミシジミ(2022年10月21日)

写真23  コセンダングサにとまるウラナミシジミ(2022年10月21日)

セセリチョウ科の仲間ではイチモンジセセリ写真24)、チャバネセセリ(写真25)、オオチャバネセセリ(写真26)を常時見ることができます。

写真24  コセンダングサで吸蜜するイチモンジセセリ(2022年10月11日)

写真25  コセンダングサで吸蜜するチャバネセセリ(2022年10月11日)

写真26  カラスウリにとまるオオチャバネセセリ(2022年9月26日)

11月いっぱいまで、暖かい晴れた日には、セイタカアワダチソウを訪れるチョウを見ることができるでしょう。

                

カテゴリー:生き物観察

白いアマガエル

カテゴリー:科学おもしろ話

はじめに

森の中や田んぼでカエルの観察を行なっていると、ときどき白いカエルを見かけることがあります。写真1は、「ゆるむしの森」で見られた通常の緑色のニホンアマガエル Hyla japonica ですが、写真2、3は白くなった個体です。

写真1  エノキの葉上のアマガエル(2022年8月6日、→ゆるむしの森のカエル

白いアマガエルは割と見かけますが、ゆるむしの森では今回初めて目撃しました。

写真2  コセンダングサの茎上にいた白色のアマガエル(2022年10月21日)

写真3  白色のアマガエル(2022年10月21日)

ここでは、アマガエルの体色に関わる機構や、それが変化する意味について、文献を拾いながら紹介します。

1. アマガエルの色

最初に、アマガエルがなぜ黄緑色に見えるか、そしてそれがどのように変化するかを簡単に説明したいと思います。

色素など、物が色がついて見えるのは、それが可視光を吸収す過程で、特定の波長の光だけを透過させたり、反射したりするからです。たとえば、私たちの眼に植物の葉が緑色に見えるのは、葉の中に含まれるクロロフィルが緑色の波長帯の光以外を吸収しているためです。そして吸収された光は熱に変わります。言い換えれば、色素の色は、光エネルギーが熱エネルギーに変換される過程で発する残りの(吸収されない)光の色ということになります。

アマガエルの緑がかった体色の見え方は、上記とは異なる構造色(structural color)とよばれるものが基本になっています。アマガエルの皮膚は、表面から黄色素胞、虹色素胞(iridophore)、黒色素胞の三層構造になっていますが、真ん中の虹色素胞はその結晶構造(グアニンを主成分とするプリン結晶の反射小板)により構造色を発します [1]。構造色とは、簡単に言えば、光を吸収せず、特定の波長の光だけを反射させることにより、それが色として見える機構です [2]。これは光の物理的な作用による発色であり,基本的に光エネルギーの損失を伴いません。

誰でもコンパクトディスク(CD)を手にしたことがあると思いますが、CDが発する色を思い浮かべれば構造色が理解しやすいかもしれません。CDは見る角度によってキラキラと色が変化しますが、これはCD表面にある極小の凹凸があって、角度によって光が散乱され、反射光の波長が変化するためです。

つまり、アマガエルでは、虹色素胞が緑の光だけを反射している構造色が基本にあり、それに上下の黄色素胞と黒色素胞の光の吸収が加わって、全体として黄緑色に見えていることになります。黄色素胞にはプテリジンやカロテノイドの色素顆粒が、黒色素胞にはメラニン顆粒が含まれており、ホルモンによって調節されていると考えられています。たとえば、脳下垂体から分泌されるメラニン細胞刺激ホルモンは、黒色素胞中の顆粒を分散、凝集させます。このように、これらの三層が光を反射もしくは吸収することによってアマガエルの色が微妙に変わってくるわけです。

ちなみに、構造色をもつ動物として、カメレオン、クジャクイカネオンテトラ(熱帯魚)など、昆虫ではモルフォチョウ、タマムシなど、沢山の種が知られており、日本人研究者による総説でもまとめられています [3]

青く美しく輝くモルフォチョウの翅は有名ですが、これは翅や鱗粉そのものの色ではなく、鱗粉の微細積層構造が放つ青い反射光によるものです [4]。この構造は固定されているので色が変わることはありませんが、カメレオンの場合は、皮膚表層にあるグアニン結晶構造の間隔が変わることで瞬時に体色を変化させることができます [5]。一方、これまで、アマガエルの虹色素胞の結晶構造が変化するという報告はないようです。

2. アルビノ

アマガエルが白くなるのは、上記の体色変化の可塑性のほかに、遺伝的な欠損による場合があります。カエルに限らず、動物の体色には、皮膚や眼の色素細胞にある黒色のメラニン色素が関係しています。遺伝的にこのメラニン色素をつくることのできなくなると、いわゆるアルビノになります。メラニン色素合成の鍵になる酵素チロシナーゼであり、この酵素が欠損するとアルビノとなります(ヒトでは先天性色素欠乏症とよばれる)。

アルビノは様々な動物種で見つかっていますが、カエルについては、広島大学他の共同研究チームが行なった遺伝的解析があります [6]。トノサマガエル、ツチガエル、ヌマガエルのアルビノを用いたこの研究では、原因となる遺伝的変異の多様性があることがわかりました。すなわち、トノサマガエルでは、チロシナーゼ遺伝子のそれぞれ異なる領域にフレームシフト(1塩基挿入)があるものと、3連続塩基欠失のものが見られました。ツチガエルやヌマガエルでは、1塩基置換によって別のアミノ酸に置き換わっていました。

ちなみにフレームシフトが起こると、遺伝子の読み枠がズレてまったく異なるアミノ酸配列になったり終始コドン(翻訳停止の配列)が現れたりしますので、元のタンパク質(この場合チロシナーゼ)がつくれなくなります。3塩基欠失では、対応する一つのアミノ酸がすっぽり抜けてしまうことで、元のタンパク質の立体構造を保てなくなるので、この場合も酵素をつくることは無理です。1塩基置換では、置き換わったアミノ酸が元のアミノ酸と性質が似ていれば、かろうじて立体構造と機能が保てますが、そうでなければ、たとえ酵素がつくられても働きは悪くなります。

ヒトのアルビノではこれまでに沢山のチロシナーゼ遺伝子変化が同定されていますが、上記の研究で明らかになったカエルアルビノの遺伝子変異はそのいずれとも異なっており、かつ種によっても異なるなどの多様性を示しました。

2. 体色変化の可塑性と要因

アマガエルは、普段は黄緑色ですが、状況に応じて白、茶、黒、灰色などに可逆的に体色を変化させる性質を持っています。写真2の白色アマガエルはこの例です。カエルの体色変化に関わる要因については、まだ詳細には解明されていないようで、文献検索してもあまり出てきません。よく知られているのは、♂のカエルが繁殖期になると、仲間を集めるために色を変える性的シグナルの現象です。他にも、捕食から逃れるためのカモフラージュ(保護色)、他の仲間とのコミュニケーション、体温調節などの理由が考えられています。

2-1. 神経ホルモンの関与

性的シグナルとして起こる体色変化は、いくつかの脊椎動物において重要な特徴として知られています。カエルでは、ストーニー・クリーク・フロッグ(Litoria wilcoxii)の♂は、数分以内に背中の色を茶色からレモンイエローに変えることが知られています。しかし、この顕著な体色変化はきわめて速く生じるため、性ホルモンの影響というよりも神経細胞の制御下にある可能性が考えられています。

豪州グリフィス大学(Griffith University)の研究チームは、野生のカエルの抱接(体外受精行為、amplexus)時の体色変化を観察し、これが性ホルモンあるいは神経ホルモンのいずれかによって媒介されているかを検討しました [7]。すなわち、神経伝達物質の一つでもあるエピネフリン(アドレナリン)、♂の主要なホルモンであるテストステロン、対照として生理食塩水またはゴマ油を抱接時のカエルに注射し、体色変化を調べました。また、これらを局所的に投与する非侵襲的なアプローチも用いました。

その結果、エピネフリンを投与したカエルは5分以内に茶色から黄色に顕著な色調変化を示し、3–5時間その色調を維持しました。一方、テストステロンを投与された個体や対照個体では色調変化がありませんでした。この結果は、カエルの急速な体色変化に神経細胞の調節が果たす役割の証拠を提示しています。

2-2. 環境要因

動物が環境の背景色に合わせて体色を変えるカモフラージュは、進化的適応の一つと考えられています。上記のように、カメレオンやイカは表層の結晶構造を変えることで、瞬時に体色を変えることができます。カエルはそれほど速くはありませんが、やはり背景に応じて体の色や模様を変化させます。しかし、視覚的に異質な背景(複数の色から構成される)下で体色や模様を変化させる仕組みは、まだよく分からないことが多いようです。

カエルの体色変化に与える要因は複雑です。アマガエル(Hyla)属の一種、タイヘイヨウアマガエルの体色の変化は、緑色>茶色の背景、10℃>25℃、低照度>高照度で速いことが報告されています [8]。これらの結果は、タイヘイヨウアマガエルの生理的色彩変化の機能は、単なる背景とのマッチングだけではないことを示唆しており、前述したように、体温調節にも利用されている可能性があります。

韓国の研究チームは、アマガエルの体色変化について、模様のある/ない背景、様々な無彩色/有彩色背景に対して背面模様の表現がどのように変化するかを調べました [9]。その結果、カエルは主に背景の無彩色の違いに反応すること、背景の明るさに依存して背面模様のコントラストが条件付きで発現すること、混色背景では2色の中間的な形態をとること、などが明らかになりました。これは、異なる背景に応じて背面の色と模様が変化することによって、捕食者(鳥やヘビ)の知覚に影響を与えている可能性が考えられます。

興味深いことに、アマガエルの色彩変化能力と背面パターン発現のレベルには、個体間でかなりの差があることがわかりました [9]。色彩変化能力が高いことは、様々な背景に対して最適なマッチングを達成できるため、カモフラージュの観点からは有利であると考えられます。しかし、体色を変えるという可塑性には、色素細胞の色素を並べ替えるための生理的エネルギーコストがかかることになります。つまり、体色変化の可塑性の高さを選ぶか、低いエネルギーコストで生きるか、という相反する選択圧のなかで、カエルの表現型や行動に影響を与えている可能性があります。

実際には、色変わりをしない個体は、背中の色が似ている一様な色の基質の上にいることが多く、色変わりをする個体はそのような好みがない傾向があるという報告があります [10]。このような体色変化の可塑性や行動が遺伝的要因によって誘発されるのか、環境要因によって誘発されるのかについはよくわかっていないようです。エピジェネティックな機構が関わっている可能性もあります。

おわりに

アマガエルが体の色を変えるという行動は、個体差があるという話はおもしろいです。アマガエルはよく緑色の葉の上に静止していますが、葉は均一的で模様が少なく、明るい背景色を示す特質をもちます。このような基質の上に長時間いる場合、模様をもつカエルでは生存の上で不利になりますが、そうでない場合は理にかなっています。一方、暗い基質は樹皮や落ち葉であり、複雑な模様があることが多いので、この場合は模様の有無が重要になってきます。

アマガエルが果たして、エネルギー消費を考えた上で、能動的にそのような居場所の選択をしているのか、それとも元々変色能力に個体差があるために結果としてそのような選択になるのか、興味深いところです。

それにしても、上記の写真2、3の白いアマガエルは背景の色とはまったくマッチしていません。なぜ白くなっているのか?という疑問は晴れないままです。

引用文献

[1] 市川洋子ら: 両生類の色素細胞. 電子顕微鏡 38, 207–212 (2003). https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenbikyo1950/38/3/38_3_207/_pdf

[2] 木下修一: 発色原理が異なる色―構造色―. 日本画像学会誌 50, 543–555 (2011). https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/50/6/50_6_543/_pdf

[3] Kinoshita, S. & Yoshioka, S.: Structural colors in nature: The Role of regularity and irregularity in the structure. ChemPhysChem 6, 1442-1459 (2005). https://doi.org/10.1002/cphc.200500007

[4] 東京理科大学吉岡研究室: モルフォチョウ構造色の基本原理:規則性と不規則性の共存. http://www.yoshioka-lab.com/kaisetsu/morpho.html

[5] Teyssier, J. et al.: Photonic crystals cause active colour change in chameleons. Nat. Commun. 6, 6368 (2015). https://doi.org/10.1038/ncomms7368

[6] Miura, I. et al.: Spontaneous tyrosinase mutations identified in albinos of three wild frog species. Genes Gen. Syst. 92, 189–196 (2017). https://doi.org/10.1266/ggs.16-00061

[7] Kindermann, C. et al.: The neuro-hormonal control of rapid dynamic skin colour change in an amphibian during amplexus. PLoS ONE 9, e114120 (2014). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0114120

[8] Stegen, J. C. et al.: The control of color change in the Pacific tree frog, Hyla regilla. Can. J. Zoology 82, 889–896 (2004). https://doi.org/10.1139/z04-068

[9] Kang, C. et al.: Colour and pattern change against visually heterogeneous backgrounds in the tree frog Hyla japonica. Sci. Rep. 6, 22601 (2016). https://doi.org/10.1038/srep22601

[10] Wente, W. H. & Phillips, J. B. Microhabitat selection by the Pacific treefrog, Hyla regilla. Anim. Behav. 70, 279–287 (2005). https://doi.org/10.1016/j.anbehav.2004.10.029

              

カテゴリー:科学おもしろ話

秋の下草−2

カテゴリー:樹木と草本

先のブログ記事で「ゆるむしの森」の秋の草本を紹介しました(→秋の下草)。この記事では秋の下草第二弾として、昨日(10月21日)観察した草本を中心に紹介します。

秋と言えば、お馴染みのセイタカアワダチソウ Solidago canadensisSolidago altissima)です。キク科アキノキリンソウ属の多年草で、大人の背丈ほどに伸び、秋に黄色い花を咲かせます(写真1)。北アメリカ原産の外来種で、環境省が生態系被害防止外来種リストに載せている植物です。1株数万個の種子を飛ばすほか、根と茎からは他の植物の成長を阻害するアレロパシー物質を出すことによって、旺盛な繁殖力を示し、生息場所を広げていきます。

ゆるむしの森の草地部分でも、いまこの花が咲き誇っています。

写真1  セイタカアワダチソウ(2022年10月21日)

ヨシ Phragmites australis(イネ科ヨシ属の多年草)もアレロパシーを有し、繁殖力も相当なものですが、ヨシの群生をものともせず、セイタカアワダチソウが浸食しています(写真2)。

写真2  ヨシの群落のなかに生えるセイタカアワダチソウ

ゆるむしの森では、随時セイタカアワダチソウの引き抜きを行なっており、昨年と比べると2割ほど繁殖域を減らすことができました。とはいえ、セイタカアワダチソウは昆虫の吸蜜植物として優れていますので、適宜調節・管理を行なっています。

セイタカアワダチソウと並んで浸食が著しいのがコセンダングサ(キク科)で、先のブログ記事でも紹介しました(→秋の下草)。このコセンダングサに混じって、ところどころにコシロノセンダグサ Bidens pilosa var. minor(別名:シロノセンダングサ、シロバナセンダングサ)が生えていました(写真3、4)。

写真3 コシロノセンダングサ(2022年10月21日)

コシロノセンダングサは、コセンダングサそっくりですが、黄色の頭花の周りに白色の舌状花が4–7個あることで識別できます。

写真4 コシロノセンダングサ

コセンダングサもコシロノセンダングサも侵入生物として、在来植物を駆逐する恐れのある植物ですが、セイタカアワダチソウ同様、昆虫の吸蜜植物として優れています。

数は少ないですが、アキノノゲシ Lactuca indica がところどころに咲いていました。キク科アキノノゲシ属の一年草または二年草で、名前のとおり秋に薄黄色の花を咲かせます(写真5)。

写真5  アキノノゲシの花(2022年10月21日)

写真6は葉の部分です。

写真6  アキノノゲシの葉

花が終わった後は下部が膨らみます(写真7)。種子はタンポポの綿毛を小さくしたような形をしています。

写真7  花が終わった後のアキノノゲシ

次からイネ科植物が続きます。初夏はチガヤ、真夏はジュズダマの繁殖が目立ちますが、この時期はヌカキビ Panicum bisulcatum (キビ属)と思われる植物が群生しています(写真8)。

写真8  ヌカキビの群生(右側はジュズダマ、2022年10月21日)

細長い枝先には小さな穂がついています(写真9

写真9 ヌカキビの小穂

このあたりのエリアは、初夏は、セリ科のオラブジラミや同じイネ科のチガヤ Imperata cylindrica写真10)で覆われていました。

写真10 チガヤの穂(2022年5月12日)

イネ科植物で最も馴染みの深い草の一つと言えば、エノコログサ Setaria viridisエノコログサ属、通称ネコジャラシ)でしょう。イヌタデと混在していました(写真11

写真11  エノコログサイヌタデの混在(2022年10月21日)

こちらはムラサキエノコログサです Setaria viridis var. minor f. misera写真12)。花序が紫褐色に見える以外はエノコログサと同じです(種形容名も同じ)。

写真12 ムラサキエノコログサ(2022年10月21日)

こちらも馴染み深いイネ科植物で、メヒシバ Digitaria ciliaris(メヒシバ属)です(写真13)。ところどころにオヒシバ Eleusine indica(オヒシバ属)が混在しています。

写真13 メヒシバ(2022年10月21日)

写真14  メヒシバの穂

オヒシバはメヒシバよりも穂が太いことで識別できます。

写真15  オヒシバの穂

森の周囲の農道には、チカラシバ Pennisetum alopecuroidesチカラシバ属)がたくさん生えていました(写真16、17)。引き抜こうとしてもなかなか難しいイネで、名前の由来になっています。

写真16  チカラシバ(2022年10月21日)

写真17  チカラシバの穂

これも馴染みが深いイネ科植物ですが、ススキ Miscanthus sinensis(ススキ科ススキ属)です(写真18、19)。ゆるむしの森に隣接する空き地に繁茂しています。

写真18  ススキ(2022年10月21日)

写真19  ススキの穂

イネ科の植物は、タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科やセセリチョウ科のチョウにとって食草となるものが多く、草刈りには最新の注意が必要です。観察路を覆ってしまう場合にはやむおえず刈り取る必要がありますが、時折切った草に幼虫がついていることがあり、随時レスキューしています。

上記したように、草地のあちこちでセイタカアワダチソウが繁茂していますが、ポツンポツンとガマ(ガマ科ガマ属)が顔を出しています。写真20は、まだセイタカアワダチソウが花を開く前の頃のガマです。

写真20  ガマの穂(2022年9月6日)

写真21はクズ Pueraria montana var. lobataマメ科クズ属)です。草本ではありませんが(つる性落葉低木)、前の記事(→秋の下草)で紹介したカラスウリより繁殖力が強く、成長すると長さが 10 m ほどに達し、下草をまたたく間に覆ってしまいます。ゆるむしの森のなかにはまだ侵入していませんが、隣接する空き地に繁茂していました。

写真21  空き地を覆ったクズ(2022年10月21日)

最後に下草ではありませんが、ゆるむしの森を代表する樹木の一つ、アキニレ Ulmus parvifolia(ニレ科ニレ属)の今の様子です。若い果実がたくさん付いていました(写真22、23)。

写真22  アキニレのいまの様子、張り出した下枝(2022年10月21日)

写真22  アキニレの果実

アキニレの一部の葉は紅葉し始めています。本格的な紅葉の時期にまた紹介したいと思います。

            

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秋の下草

カテゴリー:樹木と草本

10月も中旬を過ぎ、寒暖の差が激しくなってきました。「ゆるむしの森」でも本格的な秋の様相を呈してきましたが、ここでは9月から10月中旬までに見られた主な下草について紹介します。

繁殖力が強いつる性植物の一つとしてカラスウリTrichosanthes cucumeroides(ウリ科)が知られていますが、ゆるむしの森でも毎年夏から秋にかけて繁茂します。9月初旬にはハンノキの森の下草をすっかり覆っていました(写真1)。

写真1  ハンノキの森に繁茂するカラスウリ(2022年9月16日)

9月下旬からはカラスウリの実が朱色に色付き始め、10月に入ると多くが鮮やかな赤色になりました(写真2)。

写真2  カラスウリの実(2022年10月3日)

この日は、カラスウリの上を数頭のキタテハが乱舞していました(写真3

写真3  キタテハがとまるカラスウリ(2022年10月3日)

夏から秋にかけてハンノキの森のなかや観察路を覆ってしまうのがイノコズチ(ヒカゲイノコズチ)Achyranthes bidentata var. japonicaです。ヒユ科イノコヅチ属の多年草で、「ヒカゲ」と名がついていますが、日当たりのよい道端や原野にも割とよく生えています。

ヒナタイノコズチと識別が難しいですが、葉が波打たないことと(写真4)、花穂が比較的長いこと(写真5)でヒカゲイノコズチと判断しています。

写真4  ハンノキの森のなかのヒカゲイノコズチ(2022年9月26日)

観察路を覆ってしまうので、適宜草刈りが必要です。引き抜こうとしても、根は地中深くに伸びているため、途中で切れてしまいます。

写真5  ハンノキの森のなかのヒカゲイノコズチ(2022年9月26日)

日当りがよい草地エリアにはイヌタデ Persicaria longiseta が咲き誇っています(写真6、7)。タデ科イヌタデ属の一年草、野原、道端などありとあらゆる場所に普通に見られる、いわゆる雑草ですが、ピンクの花は可憐です。春から秋まで見られますが、秋はよく目立ちます。

写真6  イヌタデ(2022年10月3日)

写真7  イヌタデ(2022年10月11日)

秋と言えば、黄色い花のイメージがあります。ゆるむしの森の草地を覆っているのが黄色い花のコセンダングサ Bidens pilosa var. pilosaです(写真8キク科センダングサ属の一年草です。

写真8  コセンダングサの群生(2022年10月11日)

センダングサなど類似種との識別・同定が難しいですが、舌状花がないことで見分けられます。コセンダングサという名がついていますが、センダングサよりも小さいということはないです。大人の身長くらいに伸びたものもあります。

コセンダングサの花には、たくさんのチョウやハチ、アブの仲間が訪れます。ゆるむしの森で圧倒的に見られるのは、セセリチョウ科、シロチョウ科、花蜜食性のタテハチョウ科のチョウです(写真9、10)。

写真9  コセンダングサで吸蜜するキタテハ(2022年10月11日)

写真10  コセンダングサで吸蜜するチャバネセセリ(2022年10月11日)

コセンダングサの先端に細い棘があり、衣服などに付きやすく、いわゆる「ひっつき虫」と呼ばれるものの一つです。根には強力なアレロパシー作用が確認されており、ほかの植物を駆逐しながら拡大していく性質があります。帰化植物外来生物)の一つであり、環境省によって生態系被害防止外来種に指定されていましたが、今年になって外されました。

数はそれほど多くありませんが、ノハラアザミ Cirsium oligophyllum も咲いています(写真11)。キク科アザミ属の多年草です。 これにもチョウやアチ、アブの仲間がたくさん訪れていました。

写真11  ノハラアザミ(2022年9月26日)

写真12、13はミズヒキ Persicaria filiformis です。タデ科イヌタデ属の草本です。開花期は8〜11月で、いまが見頃です。花は総状花序で、上半分が赤色、下半分が白色の小花が枝上に並んで咲きます。

写真12  ミズヒキ(2022年9月6日)

写真13  ミズヒキ(2022年10月11日)

これも数はそれほど多くはありませんが、農道脇や畑の近くでシロザ Chenopodium album ちらほら見られます。ヒユ科アカザ科)アカザ属の一年草です。花期は9–10月で、花は淡い緑色、黄緑色をしています。この日はウラナミシジミがとまっていました(写真14)。

写真14  ウラナミシジミが訪れたシロザ(2022年10月3日)

夏にはあちこちに青々と茂っていたジュズダマ Coix lacryma-jobi(イネ科ジュズダマ属)ですが、この時期葉が枯れ気味になってきました。秋を思わせます(写真15)。まれにですが、クロコノマチョウの幼虫が群生しているのが見つかります、

写真15  ジュズダマ(2022年10月3日)

次回も秋の下草を紹介したいと思います。

              

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