ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、チョウ類を中心とする調査記録、管理・運営活動を中心とする情報ブログです

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「ゆるむしの森」は、関東平野の休耕田跡に自然発生した森林緑地です。ハンノキ、アキニレ、エノキ、ブナ科樹木、ヤナギ類、メダケなどが生える林とイネ科植物を中心とする草地が形成されています。緑地形成は発展途上の段階にあり、植生の大きな変遷とともに、生息する昆虫の量的・質的分布の変化が見られます。私たちは、この緑地を生物多様性の復元のモデルの場として捉え、チョウ類を中心とする生態調査と保全を行なっています。

            

アカボシゴマダラとゴマダラチョウの幼虫の見分け方

カテゴリー:科学おもしろ話

はじめに

特定外来生物であるアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis は本州内で生息域を広げており、その分布拡大が注視されています。在来種との競合や生態学的影響を察る面で、本種の同定と類縁種との識別をしっかりと行う必要があります。特に、アカボシゴマダラと同じく、幼虫段階でエノキを食樹とする土着類縁種(ゴマダラチョウ Hestina japonica など)との識別は重要になります。

アカボシゴマダラとゴマダラチョウは、成虫であれば識別が容易ですが、幼虫の段階になると特徴が似ているため、識別には注意が必要です。アカボシゴマダラの幼虫は、一般的に、背面に見られる鱗片様突起対が 4 つあること(ゴマダラチョウは 3 つ),および尾部突起対(尻尾)が閉じていること(ゴマダラチョウは開いている)で識別できるとされています。

しかし、非典型的形態の幼虫が無視できない割合で存在し、上述ような同定の目安が通用しない場合も少なからずあります。幼虫段階でエノキを食樹とするアカボシゴマダラ、ゴマダラチョウ、オオムラサキ Sasakia charonda の 3 種については,特に越冬幼虫の形態的特徴に基づく鑑別法がウェブ上も含めて多く紹介されていますが、不慣れであると誤同定に導く危険性もあります。

今回、日本鱗翅学会の会報誌『やどりが』に、アカボシゴマダラと類縁種の幼虫の識別に関する論文が掲載されました(No.289, 11–19 [2026])。ここでは、その論文に基づいて、アカボシゴマダラの幼虫の形態的多様性やゴマダラチョウとの見分け方を紹介します。

1. 一般的特徴

1.1 越冬幼虫

アカボシゴマダラは年 4 回発生しますが、一般的に 3 化目の成虫から生じた幼虫が 10 月に集中して短角型 4 齢幼虫に変態し、越冬に入ります(図1)。一部は 4 化目に移行し、その成虫の産卵から越冬幼虫が発生します。3 化目の発生においては、長角 4 齢までに成長してから短角型 5 齢に変態する場合もあり、さらには 4 化目の長角 5 齢幼虫が蛹化せず、そのまま越冬に入ることもあります [1]

1. アカボシゴマダラの季節的発生サイクル. 既報 [1] に基づいて作図.年4回の発生の中で,越冬型(短角型)幼虫の多くは3化目の成虫の産卵から発生し,一部は4化目から発生する.

短角型幼虫は主に 11 月から幹上に移動し、さらに宿木根元の落ち葉の下に潜って越冬に入りますが、幹上での一時滞在を経ないで直接落ち葉に向かう場合もあります。従来言われてきたような幹上での越冬はまれです。越冬型幼虫の観察・調査の時期としては、落葉前の葉上の場合は 11 月中旬頃まで、落葉下においては 12 月下旬から 2 月までが適しています。

アカボシゴマダラおよびゴマダラチョウの典型的越冬型幼虫を 図2 に示します。両種とも、葉上の幼虫の体色は、季節的に緑葉と紅葉の色に対応して緑色(図2A, C)から褐色に変化し、保護色効果を生んでいます。アカボシゴマダラの場合は,落葉下で過ごす間に体色はさらにモスグリーンに変化します(図2B)。一方、落葉下のゴマダラチョウの場合は、褐色がかった、あるいは薄紫色がかった灰色のことが多いです(図2D)。

2. アカボシゴマダラおよびゴマダラチョウの典型的短角型幼虫.A, 葉上のアカボシゴマダラ; B, 落ち葉に付着して越冬するアカボシゴマダラ; C, 葉上のゴマダラチョウ; D, 落ち葉に付着して越冬するゴマダラチョウ.

越冬型 4 齢幼虫の頭部突起対(角)を除いた体長は、多くがアカボシゴマダラで 14–17  mm、ゴマダラチョウで 15–18 mm の範囲にあります。ゴマダラチョウの方がやや大きく、太った印象を与えます。

アカボシゴマダラの幼虫には、背面の鱗片状突起が 4 対あり、3番目の突起対が最も大きく、2 番目と 4 番目は相対的に小さいです(図2A, B)。尾部突起対(尻尾)は一般的に閉じています。一方、ゴマダラチョウの背部突起は 3 対のことが多く、真ん中の対が最大です(図2C, D)。

しかし、ゴマダラチョウの場合、かなりの割合で 4 対の個体も存在し、その場合の 2 番目の相対的大きさはアカボシゴマダラと同様です(図3)。そのため、ゴマダラチョウの幼虫は背面突起が 3 対であるという従来常識に拘泥しすぎると、同定を誤る可能性もあります。ゴマダラチョウの尾部突起対は、ほぼ例外なく開いてます。

3. 背面突起が 4 対のゴマダラチョウ短角型幼虫.A, B, 葉上の幼虫; C–F, 落葉下の幼虫.F は 5 対にも見える.

オオムラサキの幼虫は、アカボシゴマダラと同様に 4 対の背面突起をもちます(図4B–C)。しかし、アカボシゴマダラの背面突起対は 3 番目が丸っこく大きく目立つのに対し(図4A)、オオムラサキの背面突起対はほぼ三角形で、3 番目まで大きさが比較的揃っているので(図4B, C)、識別・同定はそれほど難しくはありません。さらに、オオムラサキは尾部突起対が常に開いています。ただ、越冬態としての褐色への体色変化が遅い個体では、アカボシゴマダラと紛らわしい場合があります(図4A, B比較参照)。

4. 落葉下におけるアカボシゴマダラ,ゴマダラチョウ,およびオオムラサキの越冬幼虫の比較.A, アカボシゴマダラ; B, オオムラサキ(体色変化不十分の個体); C, オオムラサキ(典型的な褐色個体); D, 1本のエノキ下から検出された複数のアカボシゴマダラとオオムサキ; 

そもそもアカボシゴマダラは低幼木を、オオムラサキは高木を好むのに加えて、お互い生息域も異なるので、両者が 1 本の高木から同時に出てくることはそれほど多くはりません(ほぼ関東域に集中)。オオムラサキは 1 本のエノキ高木から時に 100 頭を超えて検出されることがありますが、アカボシゴマダラの場合は多くても 10 頭以内が普通です。

まれに、オオムラサキ、ゴマダラチョウ、およびアカボシゴマダラの 3 種が一つの落ち葉で同時に見られることもあります(図5)。いっしょに比べてみれば識別は容易です。

図5. 一つの葉で越冬するアカボシゴマダラ(矢印a),ゴマダラチョウ(矢印j),およびオオムラサキ(矢印c).

オオムラサキの越冬幼虫サイズはさらに小さく、13–15 mm 程度です(頭部角を除く)。すなわち、成虫の大きさがオオムラサキ>アカボシゴマダラ>ゴマダラチョウの順になるのに対して、越冬幼虫の大きさは逆の順序になります。

1.2 終齢幼虫

アカボシゴマダラとゴマダラチョウの終齢幼虫(通常 5 齢)の場合は、比較的識別が簡単ですが、脱皮直後(特に春型)は酷似しているので注意が必要です(図6A, B)。

春型の場合、脱皮後数日で両種の春型幼虫の特徴が顕著になってきます。すなわち、背面中央に緑の縦縞が走ることは共通しますが、その傍に並走する赤褐色の帯がアカボシゴマダラではぼかし気味になっている(図6C)のに対し、ゴマダラチョウでは明瞭です(図6D)。

6. アカボシゴマダラおよびゴマダラチョウの1化目終齢(5齢)幼虫.A, 脱皮直後のアカボシゴマダラ; B, 脱皮直後のゴマダラチョウ; C, 脱皮3日後のアカボシゴマダラ; D, 脱皮3日後のゴマダラチョウ. 

また、春型では、胴体の両脇に緑の斜め縞模様が両種で見られますが(図7A, B)、アカボシゴマダラの方がよりはっきりしています。背面の帯模様や脇腹の縞模様は夏型では見られず、春型の幼虫がエノキの新葉の色や模様に適合してきたことがわかります。

春型のもう一つの識別の特徴として、ゴマダラチョウの場合、背面突起対が明瞭に認められますが(図7B矢印)、アカボシゴマダラは成長すると背面突起対が青色(図7A矢印)あるいは褐色(図7C矢印)に変わり、かつ小さく目だたなくなります。

図7. 春型終齢幼虫の特徴. A, 脱皮 9 日後のアカボシゴマダラ; B, 脱皮 10 日後のゴマダラチョウ; C, 脱皮 6 日後のアカボシゴマダラ.矢印は背部中央の突起対を示す.

幼虫の体色は、春型、夏型も含めて相対的にアカボシゴマダラの方が緑色感が強く(ゴマダラチョウは黄緑感)、かつすべすべした印象があります(ゴマダラチョウは少しザラついた感じ)。

両種とも、1–3 齢の時は背面突起対が小さく、尾部の突起対は開いているので、識別は難しいです。脱皮齢を経るごとに、それぞれの特徴が明確になってきます。

2. 非典型的形態

2.1 背面 3 対突起

一般的に言われているように、また上述したように、アカボシゴマダラ幼虫の特徴の一つは 4 対の背面突起をもつことであり、3 対を特徴とするゴマダラチョウとの鑑別性状の一つになっています。しかし、 2 番目を欠いた 3 対突起のアカボシゴマダラ幼虫も珍しくなく、同定においては注意が必要です。

図8 に、3 対の背面突起をもつ終齢(5 齢、図8A, B)および短角型 4 齢幼虫(図7C, D)を示します。これらの非典型的個体では、2 番目突起対が痕跡すらなく,一瞬見ただけではアカボシゴマダラかゴマダラチョウか紛らわしいです。短角型個体においては,背面中央の丸みを帯びた突起対が目立ちますが(図8C)、小さい突起対の個体(図8D)もしばしば見られます。また、2 番目突起対の一方だけが欠けた,言わば「3.5対」の個体もしばしば存在します(図8E, F)。

8. 非典型的な背面突起対をもつアカボシゴマダラの幼虫.A, B, 背面突起が3対の終齢幼虫; C, D, 背面突起が3対の短角型幼虫; E, 2番目の片方を欠いた終齢幼虫; F, 2番目の片方を欠いた短角型幼虫.

背面 3 対突起のアカボシゴマダラ幼虫の出現頻度は高くはありませんが、場所や時期によっては多く見られる場合があります(〜10%).

2.2 開いた尾部突起対

もう一つのアカボシゴマダラ幼虫の一般的特徴は「閉じた」尾部突起対を持つことですが、例外的に尻尾が開いた個体が見られます(図9A–D矢印)。尻尾が開いた個体では、その開き具合が様々であり、多くはゴマダラチョウほど顕著ではありません。

とはいえ、背面 3 対突起および開いた尾部突起対というゴマダラチョウの特徴を持つ個体も、まれに見られます(図9A)。ゴマダラチョウ並みに尻尾が開いた個体も時折みられます(図9B)。これらの場合では、識別・同定は慎重を要します。

9. 尾部突起対(矢印)が開いたアカボシゴマダラ幼虫.A, B, 終齢幼虫; C, D, 短角型幼虫.

開いた尾部突起対をもつアカボシゴマダラ幼虫の出現頻度は、3 対突起幼虫のそれと比べても高いです。どのくらいまでを開いていると判断するか微妙なところもありますが、調べた範囲では 5% 程度です。

2.3 その他の非典型的形態

アカボシゴマダラ越冬幼虫の特徴の一つは、3 番目の背面突起対が大きく目立つことです。しかし、この突起対が小さく、かつゴマダラチョウのように三角形に近い個体も出現します。

図10A, Bには、それぞれ越冬態の典型的個体および背面突起対が小さい個体を比較して示します。背面突起対が未発達の個体は、4 化目から発生した短角型幼虫に多く見られ、通常は体色と同じ緑色の頭部の角が赤っぽくなることが多いです(図10B)。

10. 様々な非典型的形態のアカボシゴマダラ幼虫.A, 典型的短角型個体(対照); B, 背面突起対が小さい個体; C, 背部突起対が5列の個体; D, 頭部の角を欠いた個体.

そのほか非典型的個体としては,まれに背面の突起対が 5 列のものも存在します(図10C)。さらに、頭部の角が一部欠損した春型、夏型の幼虫も見られることがあります(図10D)。

3. 鑑別性状

以上をふまえながら,あらためてアカボシゴマダラとゴマダラチョウの幼虫の見分け方を、特に非典型的形態個体を例にして示します。同定の基準として、尾部突起対が閉じていれば、まずアカボシゴマダラと考えて間違いありません。しかし、背面突起対の数についてはあまり当てにならず,さらに尻尾が開いている幼虫の場合も注意を要します。

尾部突起対が開いたアカボシゴマダラの幼虫で紛らわしいのが、特に起眠後脱皮間もない春型の個体です(図11A)。ゴマダラチョウ(図11B)と比べると、尻尾の開き具合(図11A, B矢印b)はやや小さいですが、現場での比較対象がないと判断は難しいです。

同定の拠り所の一つとしては,背面を走る 2 本の赤褐色の縦帯が挙げられます。前記したように、その縦帯がボヤけていればアカボシゴマダラ、明瞭であればゴマダラチョウです(図11A, B矢印a)。そして、全体の体色としては、ゴマダラチョウの方が黄緑色が強い印象を与えます。成長すれば背部の赤褐色縦筋は薄くなり(ゴマダラチョウでは消失する)、両脇の斜めの筋がアカボシゴマダラでは強く出てくるので(図7A, C)、同定は容易になるでしょう。

11. アカボシゴマダラとゴマダラチョウの非典型的形態幼虫の見分け方.尾部突起対が開いたアカボシゴマダラ(A)とゴマダラチョウ(B)の春型個体では,背部の赤褐色の縦帯(矢印)の明瞭さで識別可能.  背面突起が3対で尾部突起対が開いたアカボシゴマダラ(C)とゴマダラチョウ(D)の短角型個体では,頭部の黄色の線(矢印a),背面中央の突起対の形(矢印b),および尻尾の開き具合(矢印c)で識別できる.

3 対の背面突起と開いた尾部突起対の両方をもつアカボシゴマダラでは、特に葉上の幼虫の場合、細心の注意が必要です。短角型幼虫の背面中央の突起対は、アカボシゴマダラでは丸みを帯びて目立つので(ゴマダラチョウは三角形に近い)、同定の一つの目安にできます(図11C, D矢印b)。しかし、この中央突起が小さい個体も存在することも考慮しておくべきです(上述)。

尻尾の開き具合は,あくまでも相対的ではありますが、アカボシゴマダラではゴマダラチョウに比べて小さいです(図11C, D矢印c)。より頼りになると考えられるのが、頭に近い突起対に走る黄色の線です。この黄色線はゴマダラチョウでは目立つのに対して、アカボシゴマダラではあまり目立たないか、消失しています(図11C, D矢印a)。

おわりに

アカボシゴマダラとゴマダラチョウの幼虫の識別・同定は、慣れていれば全体的な特徴や印象からそれほど難しくはありません。ただここで紹介しように、形態的多様性が両種において見られるので、ウェブ上で見られるような「常識」にとらわれ過ぎると、間違いを起こす危険性もあります。

現場での幼虫観察と同定は、常に慎重に行うことが肝要です。しばしば写真撮影してはじめて識別・確認できる場合もあるので、画像での記録は重要です。

引用文献

[1] Hiraishi, A., Hiraishi, R.: Seasonal occurrence of the non-native nymphalid butterfly Hestina assimilis in the Kanto region, Japan. Lepidoptera Sci. 77, 35–55 (2026). https://www.jstage.jst.go.jp/article/lepid/77/1/77_35/_article

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カテゴリー:科学おもしろ話

2026 年春のチョウ

カテゴリー:生き物観察

今年も恒例の、ゆるむしの森でのチョウの観察(トランセクト調査)が始まりました。春(3 月から 5 月初旬)までに見られた主なチョウを順に紹介します。

写真1 は、早春のゆるむしの森内の美しいハンノキの林を示します。右側に枯れた茶色の葉がついたままのクヌギが見えます。

↑写真1  ハンノキの林(2026.03.14)

春に最も早く見られるチョウの一つは越冬明けのキタテハです。写真2 は菜の花で吸蜜する様子を示しています。

↑写真2  キタテハ(2026.03.24)

写真3、4 はベニシジミを示します。シジミチョウの中で最も早く発生する種の一つで、3月中旬頃から現れます。

↑写真3  ベニシジミ(2026.03.24)

↑写真4  ベニシジミ(2026.04.13)

春に新しく発生する最も馴染みの深いチョウと言えば、モンシロチョウでしょう(写真5)。このシロチョウが飛ぶ姿を見ると、本格的な春の訪れを感じさせます。

↑写真5  モンシロチョウ(2026.04.08)

タテハチョウ亜科の種は、成虫で越冬するものが多いです。その中で、キタテハほど頻繁ではありませんが、春に越冬明けのルリタテハが時々見られます。写真6 はムクノキの幹に止まっているところを撮影したものです。

↑写真6  ルリタテハ(2026.04.08)

ベニシジミとともに最も早く発生するのがツバメシジミです(写真7)。ほぼ同時期に類似種のヤマトシジミも発生しますが、飛んでいる姿はそれよりも色が鮮やかな印象を受けます。

↑写真7  ツバメシジミ(2026.04.08)

春に特有のシロチョウと言えばツマキチョウです。3 月下旬頃からオス(前翅のつま先が黄色〜オレンジ色)が発生し、遅れてメス(つま先が色づかない)が発生します。写真8、9 は、それぞれホトケノザおよびカラスノエンドウに止まるメスのツマキチョウです。

↑写真8  ツマキチョウ(2026.04.25)

メスのツマキチョウが飛ぶ姿はモンシロチョウと見分けがつきにくいですが、飛び方がやや直線的で緩やかです(モンシロチョウはそれよりもランダムにかつ早く飛ぶ)。

↑写真9  ツマキチョウ(2026.05.02)

アゲハチョウ科の中では、アゲハ(ナミアゲハ)が最も早く発生しますが、ほぼ同時期にキアゲハも見られるようになります(写真10

↑写真10  キアゲハ(2026.04.25)

アゲハやキアゲハにやや遅れてジャコウアゲハが発生します。ゆるむしの森では、4月中旬頃から見ることができます(写真11)。

↑写真11  ジャコウアゲハ(2026.04.25)

タテハチョウ科の中で最も早く発生するのがコミスジです(写真12)。4月中旬から見られるようになります。

↑写真12  コミスジ(2026.04.25)

春に発生するセセリチョウは希少種が多いです。ゆるむしの森では、環境省凖絶滅準絶滅危惧種であるギンイチモンジセセリが 4 月上旬から見られます(写真13)。

↑写真13  ギンイチモンジセセリ(2026.04.25)

ミヤマチャバネセセリも希少種の一つですが、4月上旬から見ることができます(写真14)。

↑写真14  ミヤマチャバネセセリ(2026.04.25)

上記セセリチョウ 2 種にやや遅れて、コチャバネセセリ(埼玉県準絶滅危惧種)が見られるようになります(写真15)。

↑写真15  コチャバネセセリ(2026.05.02)

これらにさらに遅れて、普通種ですが、ダイミョウセセリが姿を現します(写真16)。

↑写真16  ダイミョウセセリ(2026.05.02)

       

カテゴリー:生き物観察

外来生物アカボシゴマダラの季節的分布

カテゴリー:科学おもしろ話

はじめに

アカボシゴマダラ Hestina assimilis はタテハチョウ科、コムラサキ亜科、ヘスティナ属のチョウ種です。東アジアに広く分布しており、生息域はベトナム北部、大陸中国南部~東部、朝鮮半島と周辺の島嶼、および日本にまたがっています [1]。その分布域は、幼虫の食草であるエノキ属 Celtis 樹木の分布と重なります。

日本に分布するアカボシゴマダラは、関東を中心に分布する名義タイプ亜種の H. a. assimilis図1)と奄美諸島に分布する別亜種の H. a. shirakii が含まれます後者は土着種ですが、前者は外来種と考えられています。台湾には、さらに別亜種の H. a. formosana が分布しています。

図1. 関東産名義タイプ亜種アガボシゴマダラ♂の春型および夏型(一般に前翅長は35–50 mm).  名義タイプ亜種とは、複数の亜種が存在するときに分類上元になる本家の亜種のことで、自動的に種名と亜種名は同じになる(すなわち、学名で表すと Hestina assimilis assimilis

今回、私たちは、関東に分布するアカボシゴマダラの季節的分布に関して詳しいフィールド調査を行い、その結果をまとめて電子ジャーナル Lepidoptera Science(日本鱗翅学会出版)に原著論文として発表しました [2]。その内容をニュースリリースとしてこのブログで紹介します。

1. 背景

日本本土で最初にアカボシゴマダラが見つかったのは埼玉県内の公園で、1995 年のことです。この時は一過性のものと思われましたが、1998 年に神奈川県で見つかり、その後定着が確認されました。2000 年に入ると、関東のあちこちで目撃されるようになり、分布域は関東を中心にあっという間に拡がりました。

日本では奄美諸島に在来亜種 H. a. shirakii が生息していますが、地理的に遠く離れた関東で突然アカボシゴマダラが見つかったことは、いかにも奇異です。加えてその表現型(羽の模様など)は、奄美亜種よりも中国大陸に分布する名義タイプ亜種に似ていました。これらの点から、関東のアカボシゴマダラは、中国大陸から人為的に持ち込まれ、意図的に放蝶された(あるいは逃げ出した)ものが、その後定着した外来種と考えられました。

ただ、本州に分布するアカボシゴマダラの春型成虫は明確に白化しますが(図1 左)、中国東北部や朝鮮半島に生息する名義タイプ亜種は白化せず、中国中部からベトナム北部の南方系にその性質があるとされています [3]。この点は、本州のアカボシゴマダラの起源を探るのにヒントになるかもしれません。

外来種としてのアカボシゴマダラについて懸念されることは、主に以下の三つです。

1) エノキ Celtis sinensis を食草とする在来種(ゴマダラチョウやオオムラサキなど)との幼虫段階における競合が起こる可能性

2) 系統的類縁種との間の繁殖干渉による生態学的悪影響の可能性

3) 奄美諸島の土着亜種 H. a. shirakii と交雑が起こる可能性

これらの懸念事項を踏まえて、2018 年、環境省は本土のアカボシゴマダラを特定外来生物に指定しました [1]

外来種としてアカボシゴマダラはいち早く注目を集め、その生態学的影響の観点から多くの調査研究がなされてきました。それらの中で、少なくとも二つの重要な現象・知見が得られてきました。

一つは、同属異種であるゴマダラチョウ Hestina japonica の季節的発生とほとんど重なり、しばしばゴマダラチョウを圧迫している様子があること、もう一つはアカボシゴマダラの幼虫はエノキの成木よりも低幼木に集中的に発生して、高木を好むゴマダラチョウとは棲み分けを行っているのではないかということです。

これらの現象は、在来種へのアカボシゴマダラの影響について異なる解釈を与えるものです。しかし、これまでの情報はまだ断片的であり、アカボシゴマダラの生態についてはよくわかっていないことも多々あります。何よりも発生に関する長期間の定量的なデータがほとんど得られていないという状況がありました。アカボシゴマダラの生態学的影響を論じるためには、まずはこのような情報が必須です。

そこで私たちは、アカボシゴマダラの季節的発生について詳しい定量データを得ることを目的として、千葉県北西部、埼玉県東部(ゆるむしの森)、および愛知県豊橋市における分布調査研究を数年に亘って行いました。

2. 研究の概要と成果

私たちがまず考えたことは、どうやってアカボシゴマダラの季節的発生を定量化するかということです。自然環境下で全ての産卵から羽化までのプロセスを追うことはほぼ不可能であり、調査を効率化する必要がありました。

アカボシゴマダラは幼虫(基本的に 4 齢)で越冬し、春に起眠し、5 齢に脱皮して1 化目の羽化に至ります。そこで、5 齢(終齢)幼虫の発生を見つけ、そのまま羽化まで追い、さらに越冬幼虫(短角型幼虫)の発生のプロセスを抑えれば、季節的発生サイクルの全体像が掴めると考えました。

次にその調査をどこで、どのようなタイミングで行うかという課題がありました。予備調査の結果、従来の仮説どおり、アカボシゴマダラは低幼木(特に樹高 4 m 以下)に、ゴマダラチョウは高木に越冬幼虫が集中的に見つかることを確認しました。

この予備調査で特に重要なのは、アカボシゴマダラがまだ侵入していなかった豊橋市において、ゴマダラチョウの越冬幼虫が高木により多く検出されたことであり、高木>低幼木の選好性は、アカボシゴマダラの影響とは無関係であるということです。豊橋市でアカボシゴマダラの越冬幼虫が見つかるようになったのは、2020 年以降でした。

このような予備調査の結果に基づいて、エノキ伐採の頻度が少なかった千葉県北西部の公園・緑地、および私たちが管理しているゆるむしの森を調査地として選定しました。2019 年から 5 年間、低幼木(<4 m)のエノキを対象として、アカボシゴマダラの 5 齢幼虫の発生と羽化、越冬幼虫の発生を本格的に追跡しました。

結果を図 1 に要約します。2019–2023 年における 5 齢幼虫の発生数および成虫の発生数を合計して、それぞれ図1の上下に示してあります。この図から分かるように、5 齢幼虫は 4月、6月、8月、9–10月の年 4 回発生し、5 齢の発生から 18–38 日遅れて成虫が発生することがわかりました。

図2. 2019–2023 年におけるアカボシゴマダラ 5 齢幼虫の季節的発生数(上)および羽化数(下).論文 [2] に基づき作成.

これらのなかで、4 化目の発生数が最も少ないことがわかります。その理由は、3 化目の成虫から発生する 3 齢幼虫の多くが 4 化目に向かわず、10 月に集中して休眠(短角)型 4 齢に脱皮して越冬に至るためです。結果として、3 化目世代から発生する休眠型(短角型) 4 齢、および短角にならない 4 齢を経由して 5 齢→羽化(4化目の発生)に至る幼虫数の比は約 5 : 1 となりました(図3)。

図3. 3 化目の産卵から発生する 3 齢幼虫のその後の行き先.短角 4 齢幼虫に脱皮し越冬するのが 81.0%、ノーマルに 4 齢→ 5 齢→蛹を経て羽化するのが 16.2%、蛹にならず長角 5 齢のまま越冬するのが 2.0%、短角 5 齢で越冬するのが 0.8%.論文 [2] に基づき作成.

図 1 下に示すように、4 化目の成虫は 9 月下旬から 12 月まで発生しますが、それらのなかで、11 月以降に羽化する個体の一部は春型(図 1 左)に類似した白化の傾向を示しました。一方、3 化目から発生した 5 齢の少数は蛹にならず(4 化に行かない)、そのまま越冬しました。加えて、長角 4 齢から休眠型 5 齢に脱皮して越冬する個体も存在しました(図3)。

4 化目の成虫ではなお産卵が見られ、多くはふ化しないか、ふ化しても成長過程で死亡し、次世代に繋げないという従来の説を支持するものでした。しかし、今回の重要な知見の一つとして、まれに 10 月に発生した 1 齢幼虫が休眠型 4 齢に成長し、越冬する例が見られました。つまり、アカボシゴマダラが年 3 回の基本世代サイクルと部分的な4世代サイクルをもつことを実証しました。

このように二つの世代サイクルがあることや、越冬態にも多様性があることは(図3)、本州のアカボシゴマダラが、まだ土地の気候に十分に馴化していないことを暗示させます。もし、日本に持ちこまれた個体が南方系の名義タイプ亜種 [3] であるとするなら、余計にそうかもしれません。

休眠型幼虫の大部分は、エノキ葉上から一時的に幹上に移動しますが、最終的に落葉下で越冬しました。一方、幹上で完全越冬するものは 3.8% 以下に過ぎませんでした。このように、大部分の休眠型幼虫は落葉下で越冬するため、従来言われてきたような幹上越冬による春の起眠時の生態学的有利さはないと考えられました。

エノキ低幼木においては、在来種のゴマダラチョウも発生します。しかし今回の調査で、アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウのいずれか、あるいは両種の幼虫が同時に検出された全低幼木のなかで、共存する割合は 1.5% と小さなものでした。

上記のように、アカボシゴマダラとゴマダラチョウとではエノキの大きさについて異なる選好性があること、および低幼木における幼虫の共存する割合が全体の 1.5% と小さいことは、従来から懸念されている幼虫段階での食草をめぐる異種間競合は、きわめて小さい可能性を示しています。

3. 波及効果と今後の課題

本研究は、アカボシゴマダラの季節的発生について、複数年に亘る追跡によって初めて定量的に明らかにしたものであり、食樹サイズの選好性に関する情報の混乱を整理するものでもあります。これらの時空間分布に関する知見は、アカボシゴマダラの生態についてのさらなる理解を深める材料となり、外来種としての従来の懸念の修正を迫ることになるでしょう。

上記の背景でも述べましたが、アカボシゴマダラの懸念事項の一つは、エノキを食草とする在来種(ゴマダラチョウなど)との幼虫段階における競合が起こるのでは?ということでした。しかし、今回の調査研究は、この可能性が極めて小さいものであり、実質無視できる程度のものであることを示しています。

エノキ高木におけるアカボシゴマダラとゴマダラチョウの分布については、本論文では予備的データしか示していませんが、今後より広い範囲でのエノキ高木における両種の分布を探ることにより、両種の空間的棲み分けについての確証を得ることができると考えられます。私たちはすでに、広範囲におけるエノキ高木の調査データやエノキの成長に伴うアカボシゴマダラとゴマダラチョウの種遷移のデータを得ており、別途報告の予定です。

外来種としての残る懸念の一つとして繁殖干渉の問題がありますが、そもそもアカボシゴマダラとゴマダラチョウは、朝鮮半島や中国大陸の広範囲で土着種として共存しています。繁殖干渉の問題があれば報告があると考えられますが、今のところそのような文献は見当たらないようです。

アカボシゴマダラがゴマダラチョウを追いかけたり、樹液場で追い出したりすることもしばしば見かけますが、これらの行動がゴマダラチョウの個体数に影響を与えているかどうかは不明です。私たちがゆるむしの森で調査している限りにおいては、今のところ有意な変化はありません。いずれにせよ、繁殖干渉の影響があるか否かについては、長期間の詳しい調査を行う必要があります。

異種間交雑の問題としては、実験下で雑交したゴマダラチョウ♂とアカボシゴマダラの♀との個体が成虫まで羽化した報告があります [4]。しかし、雑種の羽化率は低く、野外での浸透性交雑の可能性は低いと考えられています [1]私たちは、20 年近く自然界でのアカボシゴマダラの異種間交尾や幼虫を見てきていますが、ゴマダラチョウやオオムラサキとの交雑個体と思われる異常形態幼虫はこれまで確認できていません [5]

奄美亜種 shirakii と本土亜種 assimilis の交雑の可能性に関しては、これはもう完全に人間の問題です。特定外来生物ならずとも、勝手に本土のチョウ種を奄美や周辺島嶼に持ち込んではいけませんし、逆に奄美から持ち出して野外放出するのもいけません。台風などの影響での飛来は、むしろ南方からの可能性が高いでしょう。

今回の論文は 2024 年春までの調査記録に基づくものですが、アカボシゴマダラの発生に及ぼす気候変動・地球温暖化の影響は大きいようで、2024 年以降、すでに発生パターンにズレが生じてきています。この面で、本州産アカボシゴマダラの発生温度特性(積算温度など)の解明とともに、季節発生の年次変化を引き続き追っていく必要があります。

おわりにー謝辞

私たちのアカボシゴマダラの調査は、2008 年に関東において始まりました。一方、愛知県豊橋市におけるアカボシゴマダラの調査は、2014 年に初めて豊橋公園で成虫を目撃したことと、愛知県東三河生態系ネットワーク協議会との議論が動機づけになりました。ゆるむしの森(埼玉県東部)における調査は、調査地の地権者のご厚意の下で引き続き行われています。また、同地におけるチョウの調査は、環境省(生物多様性センター)「里地モニタリング1000」事業の一環として実施しています。あらためて関係者諸氏に謝意を表します。

引用文献

[1] 国立研究開発法人 国立環境研究所: アカボシゴマダラ. 侵入生物データベース. https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60400.html

[2] Hiraishi, A. and Hiraishi, R.: Seasonal occurrence of the non-native nymphalid butterfly Hestina assimilis in the Kanto region, Japan. Lepidoptera Sci. 77: 35–55 (2026). https://doi.org/10.18984/lepid.77.1_35

[3] 柏原精一: 奄美から望む中国大陸 : 特異な虫たちは何処から?  やどりが. (226), 12–17 (2010). https://doi.org/10.18984/yadoriga.2010.226_12

[4] 石垣彰一: 本州産アカボシゴマダラとゴマダラチョウの雑交実験について. やどりが. (219), 42–45 (2009). https://doi.org/10.18984/yadoriga.2009.219_42

[5] 平石明・平石玲奈: アカボシゴマダラの幼虫の形態的多様性および類縁種幼虫との見分け方. やどりが. (289), 2026. 受理中.

        

カテゴリー:科学おもしろ話

ゆるむしの森のチョウー2025年のまとめ

2026.01.02更新

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

2025年もあとわずか。今年も多少の数の変動はあるものの、例年通りのチョウ種が見られました。モンシロチョウの発生が特に目立ち、ムラサキツバメやクロコノマチョウなどの南方系の種も一段と増えてきました。やはり、地球温暖化の影響が大きいのでしょう。

ここでは過去5年間の観察をまとめてYouTube動画として紹介します。

youtu.be

タネツケバナ

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

タテネツバナ Cardamine occultaアブラナ科タネツケバナ属) 🟠食草とする幼虫のチョウ種:モンシロチョウ、スジグロシロチョウ、ツマキチョウシロチョウ科

アブラナ科の越年草、あるいは一年草です。別名、タガラシ、ミズガラシ、コメナズナともよばれます。茎下部から分枝して高さ 10〜30 cm になり、白い花を咲かせます。アジアの農耕地域に広く分布する植物で、日本の全土(北海道・本州・四国・九州・南西諸島)に分布します。平地の水田、あぜ道、湿地、溝、河川敷などの水辺に自生し、湿った場所を好んで群生します。水田雑草の代表の一つです。

水田の周囲によく見られるタネツケバナですが、稲刈りが終わった頃(10 月)に発芽し、葉を放射状に広げた状態で越冬し、翌春に成長し、花を咲かせます。茎は暗紫色を帯び、葉は互生し、根元と下部に一回羽状複葉の葉をつけます。葉の大きさも、草丈に応じて大きく変化します。

花期は 3 - 5月です。白色の小さな 4 弁花(十字花)を 10 - 20 個つけます。果実は棒状で上を向き、長角果は長さ2 cm ほどです。

シロチョウ科のいくつかの種の食草で、特に、春に 1 回だけ発生するツマキチョウが好んで産卵する植物です。田んぼやあぜ道によく生えているために、耕作とともに除草されることが多く、しばしばツマキチョウの幼虫が駆除されてしまうことが起こります。

       

カテゴリー:チョウの食草と食樹 

5 月のチョウ-2025

カテゴリー:生き物観察

5 月に入ると、見かけるチョウの種類も多くなってきます。ここでは、2025 年 5 月にゆるむしの森で目撃できた主なチョウを紹介します。例年と同様な種類の発生が確認できていますが、個体数は若干増えており、森の植生の変遷と成長に伴うものでしょう。

写真1 はアゲハチョウで、ホトケノザで吸蜜していました。ホトケノザで吸蜜する姿はこれまであまり見かけたことはありません。

↑写真1. ホトケノザで吸蜜するアゲハチョウ(2025.05.05)

アゲハチョウ科の種は 5 月から目立ってきます。5 月の森内には、毎年、あちこちスイカズラの花が咲き、ジャスミンのようないい匂いを漂わせますが、今年もナガサキアゲハ写真2)やジャコウアゲハが盛んに訪れていました。

↑写真2. スイカズラで吸蜜するナガサキアゲハ(2025.05.20)

ジャコウアゲハは、食草のウマノスズクサの周辺をユラユラと飛んでいることが多く、時々周辺の樹木や草に翅を休めます。写真3 は、柿の葉の上に止まったところを撮ったものです。

↑写真3. ジャコウアゲハ(2025.05.05)

ウマノスズクサをチェックしたら、早速産卵と幼虫の発生を確認できました(写真4)。

↑写真4. ウマノスズクサの葉裏に位置取るジャコウアゲハの幼虫(2025.05.28)

森内には、ところどころにタヌキのため糞があります。タイミングがいいと、ため糞の養分を吸いに来るチョウに出会えることがあります。今年の 5 月は、クロアゲハが訪れていました(写真5)。そのほかには、コムラサキやウラギンシジミが訪れていましたが、シャッターチャンスがありませんでした。

↑写真5. ため糞の養分を摂るクロアゲハ(2025.05.20)

5 月は、スイカズラと入れ替わるようにウツギの花が咲き始めます。早速モンシロチョウが訪れていました(写真6、7)。

↑写真6. ヤエウツギ(ウツギの品種)の花を訪れるモンシロチョウ(2025.05.28)

春先に発生したモンシロチョウは 5 月初旬に個体数を減らしますが、下旬から 2 化目が発生し始め、急速に個体数を増していきます。この時期、ヤエウツギやネズミモチの白い花に群がっていて、優雅な光景が見られます。

↑写真7. モンシロチョウ(2025.05.28)

シロチョウ科では、この時期モンキチョウも 2 化目の発生が始まります(写真8)。

↑写真8. モンキチョウ(2025.05.28)

上記シロチョウ科 2 種と並んで、最も普通なシロチョウ種がキチョウ(キタキチョウ)ですが、例年この時期はとても少なく、写真に収めることができませんでした。

5 月は、幼虫で越冬したタテハチョウ科の多くの種が本格的に発生する時期です。ゴマダラチョウは、それを代表する種の一つです。写真9 の個体は、エノキ低木を枝上を盛んに動き回っていて、早速産卵をする様子でした。1 化目の成虫は白化していることが多いですが、この個体もその傾向が見られました。

↑写真9. エノキ上のゴマダラチョウ(2025.05.14)

ゴマダラチョウは木々の周りを高速で飛んでいることが多く、写真に撮るのが容易でないですが、写真10 の個体は、クワの木に止まっているところを偶然目撃できました。この個体も白化しています。

↑写真10. クワの葉に止まるゴマダラチョウ(2025.05.28)

白色型と言えば、1 化目のアカボシゴマダラはより顕著です(写真11)。ゴマダラチョウとほぼ同じ発生サイクルを持ち、少なくとも 5 月、7 月、8 月下旬〜9 月の年 3 回発生します。白いやや大型のチョウが森内を飛翔する姿は優雅で目立ちます。写真11 の個体は、アカボシが全く消失しています。

↑写真11. アカボシが消失した白化型アカボシゴマダラ(2025.05.28)

タテハチョウ科の中でも、成虫で越冬するタテハチョウ亜科の種の発生となると、5月はまだ早く、キタテハくらいしか見かけません。ルリタテハは 5 月下旬になると、終齢幼虫(写真12)あるいは蛹の状態で見ることができます。

↑写真12. サルトリイバラの葉裏で丸くなるルリタテハの終齢幼虫(2025.05.20)

写真13 は、幼虫で越冬するタテハチョウの仲間であるイチモンジチョウです。ウツギの花で吸蜜していました。森内では、食草のスイカズラが豊富に生えていますので、イチモンジチョウは割と見かける機会が多いです。

↑写真13. ウツギで吸蜜するイチモンジチョウ(2025.05.28)

類似種のアサマイチモンジ(写真14)も混在していました。アサマイチモンジは、埼玉県の準絶滅危惧種(NT2)の一つですが、ゆるむしの森ではコンスタントに見ることができます。

↑写真14. 小川沿いに生えたサツキの上で止まるアサマイチモンジ(2025.05.14)

5 月に入るとやはり姿を見せてくれるのがジャノメチョウ亜科のヒメジャノメです(写真15)。

↑写真15. ヒメジャノメ(2025.05.05)

ヒメジャノメと並んで姿を現すジャノメチョウが、サトキマダラヒカゲです(写真16)。

↑写真16. サトキマダラヒカゲ(2025.05.28)

セセリチョウ科の中では、5 月を代表する種と言えばダイミョウセセリです(写真17)。

↑写真17. カラムシの葉上にとまるダイミョウセセリ(2025.05.14)

春に発生するセセリチョウ種としては、ミヤマチャバネセセリとギンイチモンジセセリが代表的ですが、この 2 種に次いで 4 月下旬〜 5 月上旬から姿を見せ始めるのがコチャバネセせりです(写真18、19)。埼玉県の準絶滅危惧種(NT2)の一つです。

↑写真18. オヤブジラミの葉上にとまるコチャバネセセリ(2025.05.05)

↑写真19. ヒメジョオンで吸蜜するコチャバネセセリ(2025.05.08)

上で名前を挙げた種の他に、キアゲハ、アオスジアゲハ、コミスジ、ウラギンシジミベニシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミヤマトシジミを 5 月中に見ることができました。

         

カテゴリー:生き物観察

ミズキ

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

ミズキ Cornus controversa(ミズキ科ミズキ属) 🟠食樹とする(葉を食べる)幼虫のチョウ種:トラフシジミシジミチョウ科

落葉高木の広葉樹で、高さ 10–20 m になります。和名の由来は、漢字で「水木」と書かれるように、地中から多くの水を吸い上げて、枝を切ると大量の水のような樹液を出すことによります。別名、クルマミズキ(車水木)とも呼ばれます。横に枝を大きく伸ばし、それが階段状に成長する樹形が特徴です。葉は枝先に集まってつき、晩春に白い小花を密に咲かせます。

日本では、北海道から九州まで全土に分布し、国外では、南千島朝鮮半島、台湾、中国からヒマラヤ南部まで分布します。日当たりのよい低山、丘陵地、緑地などでよく生育します。ゆるむしの森では亜高木が多く、あちこちに幼木が生えてきます。

葉は幅 3~8cmの広卵形~広楕円形で、枝先に集まって互生します。葉柄は 2~5 cm、側脈は 6~9対で、全縁の葉が全体に大きく波打ちます裏面は粉白緑色で、全面に白色の伏した毛があります。

花期は 4 月下旬から 5 月で、新枝の先に直径 6~12 cm の散房花序を上向きにした白い花を多数つけます。花弁は 4 個、長さ約 0.5 cm の長楕円形で平開します。果実は核果、直径0.6~0.7cmの球形で、8~10月に黄紅色から紫黒色に熟します。

主幹の樹皮は灰色を示し、細かい縦筋が入ります。ごく若い樹皮や枝は暗赤褐色を呈します。春先は樹液の吸い上げが著しく、樹皮を傷つけると多量の水があふれ出します。樹液は糖分を含んでおり、酵母や真菌類が繁殖するために、その部分が赤くなることがあります]。 

ミズキはトラフシジミの幼虫の食草になります。トラフシジミは多食性で、マメ科アジサイ科、バラ科植物を主に食べるようですが、これらが少ないとミズキにも産卵するようです。しかし、ゆるむしの森では、これまでのところミズキで産卵や幼虫を見たことはありません。

        

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