ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、調査記録、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

4/30-今日の生き物観察・キジの夫婦

カテゴリー:生き物観察

今日の「ゆるむしの森」は昨夜の雨から一転、よく晴れた清々しい新緑の森でした。しかし、日中でも20℃に至らず、4月末としては肌寒い日となりました。写真1は森の中央に位置する二つのハンノキの孤立木です。

↑写真1

この森には国鳥であるキジが頻繁に見られます。今日も「キェー」「キェーン』と甲高いオスの鳴き声が森にこだましていました。写真2は森の一部にある冠水前の水田を歩くオスです。

写真2

ときどきエサをついばんでいました(写真3)。

写真3

キジはほとんど夫婦(と言っても一夫多妻で)連れ添って歩いています。今日は、普段見られるメス2頭ではなく、1頭のみでした(写真4)。

写真4

ハンノキの林は青々としてきました(写真5)。

写真5

ハンノキの葉上にはアマガエルがいました(写真6)。この森にはたくさんのアマガエルが見られます。

写真6

エノキは新緑豊富で、ゴマダラチョウの幼虫を探すのが大変ですが、1頭見つけることができました(写真7)。モッチリ太っていて、蛹化に至る直前でしょうか。

写真7

            

カテゴリー:生き物観察

クヌギとコナラ

カテゴリー:樹木と草本

昨年、「ゆるむしの森」で何種類かの樹木の幼木を見つけました(→森の中の幼木)。そのなかにクヌギとコナラがありました。この森にはブナ科の高木はありませんが(隣接する神社境内にはシラカシ高木あり)、クヌギ、コナラの低幼木(樹高 5 m 以下)はあちこちに生えていて、これから成長が期待される貴重な樹木です。

今年も春になって、これらの幼木が急激に新葉をつけてきました。写真1クヌギです。樹高は 1 m ほどです。

写真1  クヌギの幼木

葉の上を見たら、ナミテントウの蛹がありました(写真2)。

写真2  クヌギの葉上のナミテントウ(蛹)

こちらはコナラです。クヌギと同じく樹高 1 m ほどです(写真3、4)。

写真3  コナラの幼木

写真4  コナラの幼木-2

クヌギとコナラは多種類の昆虫の幼虫の食草として知られています。また成木になれば樹液が豊富で成虫のエネルギー源となります。

幼虫期にクヌギとコナラを食べる昆虫としてよく知られているのが、ゼフィルス類のシジミチョウです。この森から約 200 m の距離にある雑木林にはミズイロオナガシジミやウラナミアカシジミを確認していますので、この森での生息も十分に期待できます。

            

カテゴリー:樹木と草本

ミドリシジミ

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」の特徴の一つとして、ハンノキを中心とした雑木林があります。この森や周辺には、ハンノキが好む湿地があるわけでもないのに、数えただけでも10 m 以上のハンノキが50本程集まった森が形成されています。

ハンノキと言えば、ミドリシジミ Neozephyrus japonicusオナガミズアオの幼虫が食草とする木で、後者はすでにこの森で何度も見かけていますが(→オナガミズアオ)、前者はこれまで未確認でした。そこで、今日は、ミドリシジミの幼虫探しをすることにしました。

ミドリシジミの幼虫は大きくなると、葉を巻いて(巣をつくり)中に隠れる性質がありますので、餃子の形に似た巻いた葉を目印に探すことができます。4月下旬がちょうど探すチャンスです。

今日、ハンノキの森に入り、一本一本丁寧に探したところ、それらしき”ハンノキギョーザ”が直ぐに見つかりました(写真1)。

↑写真1

一つギョーザを確認すると、後は続けざまに見つけることができ、1本のハンノキで10個ほどになりました。ただ、写真2のようにひしゃげた形のものもあり、これら全部がミドリシジミのものか今ひとつ自信がありません。

↑写真2

そこで、典型的な形のもので、先が少し開いたものがあったので、これを覗いてみることにしました(写真3)。

↑写真3

くっついていた糸をほぐして中を開いてみると、いました。ミドリシジミの幼虫です(写真4)。ゆるむしの森で初めて確認しました。6月になれば、成虫が乱舞する姿が見られることでしょう。

なお、ミドリシジミは埼玉県の「県のチョウ」に、かつ準絶滅危惧1型(NT1)に指定されています。

↑写真4

葉を開けてしまって幼虫には気の毒なことをしてしまいましたが、3時間後に同じ葉を見たら、しっかり再縫合してありました。

それにしても水田地帯の真ん中にある森なのに、いったいどこからこのチョウはやってきたのでしょう。この森の周囲1km の範囲には、まとまったハンノキの林はありません。ところどころに、ハンノキの孤立木を含む雑木林や屋敷林があるのみです。これらの残った孤立木を食べながら細々と命をつなぎ、これまで生きてきたのでしょうか。

いずれにしろ、この森の楽しみがまたひとつ増え、保護活動の新たな目標もできました。

            

カテゴリー:生き物観察

今日のタテハチョウ

カテゴリー:生き物観察

今日は「ゆるむしの森」で、樹木の剪定・森内移植とビオトープの中心となる池の新設工事を行いました。そのついでにチョウの観察を行ないました。

越冬から目覚めたタテハチョウの成虫がまだ飛び交っていて、そのなかの一つがヒオドシチョウです(写真1, 2)しばらく飛翔する姿を追っていたら、メダケにとまって翅を広げました。翅の縁が痛んでいるのが越冬した証です。

f:id:yurumushinomori:20220417205213j:plain写真1. メダケにとまるヒオドシチョウ Nymphalis xanthomelas

f:id:yurumushinomori:20220417205228j:plain写真2. ヒオドシチョウ(角度を変えて)

近年、個体数の減少が著しいヒオドシチョウですが(埼玉県絶滅危惧II類 [VU])、この森には食樹となるエノキやアキニレが豊富にあるので、初夏になれば割と頻繁に見ることができます。

今日はそのほかに、越冬成虫としてルリタテハやキタテハが見られましたが、残念ながら写真に収められませんでした。

タンポポで吸蜜するヒメアカタテハの姿も見ることができました(写真3)。

f:id:yurumushinomori:20220418121758j:plain写真3. タンポポで吸蜜するヒメアカタテハ Vanessa cardui 

こちらはきれいな翅なので、幼虫で越冬し、この春羽化した個体かもしれません(写真4)。

f:id:yurumushinomori:20220418121850j:plain写真4

タテハチョウ以外では、ナミアゲハキタキチョウ、モンシロチョウ、ツバメシジミなどが見られ、セセリチョウ(たぶんミヤマチャバネセセリ)が飛翔する姿も観察されました。

             

カテゴリー:生き物観察

オナガミズアオ

カテゴリー:生き物観察

今日はとても暖かく(というより暑く)、「ゆるむしの森」の中を歩いていても汗ばんできました。ハンノキの林の中の新葉の出具合を観察していたら、オナガミズアオActias gnoma がとまっているのを見つけました(写真1)。羽化したばかりのようです。ハンノキはオナガミズアオの幼虫の食樹です。

類縁種のオオミズアオと見分けるのが難しいですが、前翅の縁の赤紫のラインの外側にはっきりとした白いラインが入っているか、前翅先端の角張り具合で何とか判別できます。オオミズアオは白いラインがはっきりしないか薄く、前翅も丸まった感じです。また、オナガミズアオがとまるときは前翅が後翅に重なるように垂れていることが多いです。

f:id:yurumushinomori:20220415112413j:plain↑写真1: ハンノキの葉にぶら下がるオナガミズアオ

ハンノキの林の外れには、地面近くにとまっている別のオナガミズアオの個体(触角の形 [櫛状の広がりのなさ]からおそらくメス)を見つけました(写真2)。どうやら、この林で一斉に羽化したようです。オナガミズアオは蛹で越冬し、4月になると羽化します。それらの個体が産卵したものが、夏(7–8月)にもう一度羽化します。

f:id:yurumushinomori:20220415112441j:plain↑写真2

オナガミズアオ環境省によって准絶滅危惧種に指定されています。生息にはまとまったハンノキ林が必要なので、埼玉県内でも産地は局所的なようです。

            

カテゴリー:生き物観察

早春のゆるむしの森−2022

カテゴリー:日記・その他

先日「ゆるむしの森」に生き物観察で訪れましたが(→早春の生き物観察)、今日(3月23日)は、この森の清掃(ゴミ拾い)と観察路の草刈りを行ないました。

写真1は、森の北西側入り口にあるハンノキのエリアを示します。ハンノキはまだ芽吹いていませんでしたが、下草は青々としていて、この樹木の窒素固定能力を感じさせるものでした。ハンノキの根には、アクチノバクテリア Actinobacteria とよばれる系統の細菌の一種が共生していて空中窒素を固定します。

↓写真1

f:id:yurumushinomori:20220324090250j:plain

写真2は、ハンノキの林の入り口から見た観察路を示します。観察路部分も青々としています。写真の中で見える青いテープは、昆虫の植樹となる幼木や主な樹木(エノキ、クヌギ、コナラなど)に目印をつけたものです。伐採したり、踏みつけたりしないように気をつけています。今回も沢山の幼木を見つけたので、目印をつけました。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20220324090311j:plain

ハンノキはミドリシジミ Neozephyrus japonicus の食樹ですが、まだ卵を見つけられていません。昨年夏にそれらしき成虫の姿を一度目撃したので、生息への淡い期待をしています。

写真3はハンノキの森の横に生えているカワヤナギです。こちらは新葉がもう出ていました。昨年晩秋にコムラサキ Apatura metis の越冬幼虫を確認していた木ですが、今日は、探した範囲では見つけられませんでした。もう枝上に移動してしまったのでしょうか。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20220324090325j:plain

森を訪れたメインの仕事の一つはメダケの伐採でした。周囲に広がっていたメダケの林を 1–2 m ほどの幅で伐採しました。写真4は、伐採して、通路を確保した後の様子を示します。手前右側に見える樹木はクワです。写真中央には、まっすぐ伸びたハンノキが見えます。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20220324090338j:plain

写真5は南側に広がるアキニレの森へ繋がる道を示します。写真中央付近に白っぽく見える木はムクノキです。この周辺の枯れ草を除去しました。

アキニレの森の中は、誰かが捨てた(多分周囲から投げ捨てた)家庭ゴミや除草剤(グルホサート)の空容器が散乱していました。木々の間を縫って集めるのは大変でしたが、何とかきれいにすることができました。ポリ大袋三つ分のゴミが集まりました。

↓写真5f:id:yurumushinomori:20220324090356j:plain

写真6は北東側にある、アキニレ、エノキ、カワヤナギなどから成る混成の森を示します。畑に咲いた菜の花がきれいでした。しかし、森の中に入ると、こちらもゴミがあちこちに散乱しており、またタヌキのものと思われる大量の糞が見つかりました。いわゆる「タヌキのため糞」のようです。

↓写真6f:id:yurumushinomori:20220324090410j:plain

今日は清掃と伐採と樹木・草本のチェックで正味4時間の作業でした。写真7は、帰りに撮った菜の花畑から見た、ハンノキ(右側)とアキニレの森(左側)を示します。昨年(→早春のゆるむしの森–2021)と比べると明らかに樹高が伸びていることがわかります。森が青々としてくるまでもう少しの時間です。

↓写真7f:id:yurumushinomori:20220324090426j:plain

              

カテゴリー:日記・その他

早春の生き物観察

カテゴリー:生き物観察

今年、少し暖かくなってきたので、「ゆるむしの森」に生き物観察に出かけました。昆虫の姿はほとんど見ることはできませんでしたが、いくつかの野鳥を観察することができました。残念ながら、写真に収めることはできませんでしたが、コゲラツグミシジュウカラなどが樹上にとまる姿があり、川辺ではカルガモ、ブッシュの中にはキジを観ることができました。

数少ない昆虫として、越冬したキタテハ成虫を観ることができました(写真1)。濃い色で傷ついた翅は、越冬成虫によくみられるものです。

f:id:yurumushinomori:20220320113224p:plain写真1

成虫ではこのほかに、キタキチョウ、モンシロチョウ、ヒオドシチョウを観ることができました。

エノキ下の落葉やカワヤナギ樹上の越冬幼虫(それぞれゴマダラチョウおよびコムラサキ)を探ってみましたが、検出できませんでした。カワヤナギはけっこう芽吹いており、越冬幼虫は枝上に移動したかもしれません。

エノキ幼木では、すでに起眠したアカボシゴマダラの越冬幼虫がたくさん観られました(写真2)。

f:id:yurumushinomori:20220320113238j:plain写真2

            

カテゴリー:生き物観察