2022.06.29更新 カテゴリー:生き物観察
樹液を出す木と言えばクヌギがコナラがよく知られています。残念ながら「ゆるむしの森」のクヌギやコナラはまだ低幼木の段階であり、樹液は期待できません。他方、樹液ではクヌギに劣らないヤナギ類が豊富にあります。ここで、5月の終わりから6月に観察できたヤナギ類上の昆虫について紹介します。
まずは、マルバヤナギ Salix chaenomeloides に飛来したアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis の春型(白化型)です(写真1)。先のブログ記事(→クワガタムシ発生)でもすでに紹介していますが、この写真を撮った5月終わり頃に樹液を吸う姿が最もよくみられるチョウの一つです。6月に入ると急激に個体数を減らし、このブログを書いている時点ではほとんどみられなくなりました。7月に入れば、2化目の成虫がみられるようになるでしょう。
写真1. マルバヤナギにとまるアカボシゴマダラの白化型(2022年5月28日)
写真2はゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica です。アカボシゴマダラの類縁種で、ほぼ同時期に発生しますが、この森ではアカボシと比べると樹液を求めて飛来する姿は少ないです。個体数が少ないというわけではなく、エノキやアキニレの樹上を飛翔する姿を頻繁にみることができます。
写真2. マルバヤナギの樹液を吸うゴマダラチョウ(2022年6月1日)
樹液の吸蜜に飛来するチョウはほとんどがタテハチョウの仲間で、タテハチョウ亜科のルリタテハ Kaniska canace も頻繁にみることができます。5月はまだ越冬型の個体が主です。先のブログ記事(5月のタテハチョウ)でも紹介しています。
写真3. マルバヤナギにとまるルリタテハ(2022年5月28日)
写真4はキタテハ Polygonia c-aureum です。タテハチョウ亜科のなかでは、最も目撃が多い種です。
写真4. マルバヤナギにとまるキタテハ(2022年6月1日)
ヤナギを食樹とする代表種がコムラサキ Apatura metis です。時おり樹液を吸う成虫をみることができますが、ヤナギ類や他の樹木の周囲を旋回する個体が主で、比較的高い位置で静止するので、なかなか写真に収める機会がありません。写真5は、樹液を吸う個体の貴重なスナップです。
写真5. マルバヤナギの樹液を吸うコムラサキ(2022年6月29日)
一方、6月も後半になると、2化目の終齢幼虫の姿が見られるようになります。写真6は、カワヤナギ Salix gilgiana の葉を食べている最中の終齢幼虫です。
写真6. カワヤナギの葉を食べるコムラサキ終齢幼虫(2022年6月23日)
ほかのコムラサキ亜科の幼虫と同じように、葉上に台座をつくり、頭をもたげるような格好で位置取りする姿をみることができます(写真7)。
写真7. カワヤナギの葉上で位置取りするコムラサキ終齢幼虫(2022年6月23日)
5月の終わり頃、マルバヤナギの幹上にホシカレハ Gastropacha populifolia の卵を見つけました(写真8)。
写真8. マルバヤナギに産みつけられたホシカレハの卵(2022年5月28日)
すでに先のブログ記事(→クワガタムシ発生)で紹介しているように、ヤナギの幹上にはクワガタムシをはじめとするたくさんの甲虫類をみることができます(写真9)。
写真9. マルバヤナギ上のコクワガタとヨツボシケシキスイ(2022年6月18日)
5月終わりにはまだみられなかったノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus ですが、6月に入ってからだんだんと個体数が増えてきました(写真10)。
写真10. マルバヤナギ上のノコギリクワガタ(2022年6月23日)
6月も後半になると、1化目の成虫が減り始め、ほとんど姿が見えなくなるなかで、ジャノメチョウ亜科の種が幅を利かしています。ヤナギの樹液を吸う姿ではヒカゲチョウが最も多く、サトキマダラヒカゲがこれに次ぎます。樹液レストランの昆虫については、また追って紹介したいと思います。
2022年6月29日更新
樹液を吸うコムラサキの写真(写真5)を挿入しました。
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