「ゆるむしの森」は平野のど真ん中にある小さな森ですが、タテハチョウの仲間が豊富に生息し、5月のこの時期1化目の個体が乱舞する姿を見ることができます。先のブログ記事「5月上旬の昆虫」でも紹介しましたが、飛ぶ姿が目立つのはコムラサキ亜科のゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica とアカボシゴマダラ Hestina assimilis assmilis です。
今日も沢山飛翔する姿が見られたものの、なかなかとまってくれず、あるいは木々の高い位置に葉に隠れるようにとまることが多かったため、写真におさめることができませんでした。一方で、蛹や幼虫もまだまだ見られます。写真1はエノキにぶら下がっていたゴマダラチョウの蛹です。
写真1. エノキの低い位置にぶら下がるゴマダラチョウの蛹(右側にオヤブジラミが見える)
アカボシゴマダラの蛹も沢山見ることができましたが、何とこの時期、エノキの幼木にまだ脱皮していない越冬幼虫がいました(写真2)。
写真2. アカボシゴマダラの越冬幼虫(脱皮前)
上記2種に負けじとたくさん飛んでいたのがコムラサキ Apatura metis です。ゆるむしの森にはヤナギ類が豊富に生えていますが、カワヤナギの周りを数個体が飛び回っていました。写真3はアキニレの葉上に静止するコムラサキです。
写真3. アキニレの葉にとまるコムラサキ
コムラサキ亜科の種と並んで沢山飛んでいたのがイチモンジチョウ亜科のチョウです。前のブログでコミスジを紹介しましたが、今日は加えてイチモンジチョウ Limenitis camilla とアサマイチモンジ Limenitis glorifica が乱舞していました。
写真4は、イチモンジチョウがとまる姿です。前翅の縦に並ぶ白紋の列の4番目が著しく小さくなる(消えかかる)ことでアサマイチモンジと見分けることができます。
写真4. クワの葉にとまるイチモンジチョウ
写真5は翅をひらいたところを捉えたものです。前翅の縦の白紋の4番目が小さいことに加えて、前側の中央の白紋がほとんど消えることで特徴付けられます。
写真5. ハンノキの葉上にとまるイチモンジチョウ
写真6は別の個体のイチモンジチョウです。
写真6. アキニレの葉上にとまるイチモンジチョウ
写真7はアサマイチモンジです。前翅の縦の白紋列の4番目がしっかり確認できます。また前翅表側の先端中央に、イチモンジチョウにはない白紋がかすかに見えます。
写真7. アキニレの木にとまるアサマイチモンジ
写真8は別個体のアサマイチモンジです。
写真8. カワヤナギの葉にとまるアサマイチモンジ
マルバヤナギの樹液が出ている部分にはルリタテハ Kaniska canace がいました(写真9)。翅が痛んでいて越冬の成虫だと思われます。
写真9. マルバヤナギにとまるルリタテハ
森の傍にある石塀には別のルリタテハがとまっていました(写真10)。こちらも翅が少し痛んでいて、翅の色もくすんでいます。越冬個体だと思われます。
写真10. 石塀にとまるルリタテハ
クワの幹には、ジャノメチョウ亜科のサトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii がとまっていました(写真11)。
写真11. クワの幹にとまるサトキマダラヒカゲ
ジャノメチョウでは、ヒメジャノメ Mycalesis gotama も写真に収めることができました(写真12)。
写真12. カキノキの葉上にとまるヒメジャノメ
タテハチョウでは、上記のほか、キタテハ、ツマグロヒョウモン、およびヒカゲチョウを見ることができました。
タテハチョウ以外では、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、ナガサキアゲハ、モンシロチョウ、キタキチョウ、モンキチョウ、ヤマトシジミ、ベニシジミ、イチモンジセセリを目撃しました。
カテゴリー:生き物観察