ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

コムラサキ亜科幼虫は冬支度

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」にはヤナギ類やエノキが豊富にあります。これらを食樹とするコムラサキ亜科(Apaturinae)のチョウにとっては棲みやすいと思われ、夏季にはコムラサキゴマダラチョウ、アカボシゴマダラが飛ぶ姿が頻繁に見られます。

今日、カワヤナギの樹皮上をコムラサキの幼虫が這っている姿を見ることができました(写真1, 2)。10 mm程度の小さな幼虫です(結構移動が速いため、撮影時の焦点合わせが甘くなってしまいました)。

↓写真1f:id:yurumushinomori:20211125083102j:plain

越冬に向けて、樹皮上の適当な位置を探している最中だと思います。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211125083119j:plain

エノキ低木には、アカボシゴマダラの越冬型幼虫が見られました(写真3, 4)。主幹にへばりついていました。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211125083140j:plain

よくアカボシゴマダラは幹上で越冬すると言われていますが、本州産(外来種)についてはそんなことはなく、大部分は落ち葉の下で越冬します。写真の個体も、本格的な冬になれば落ち葉の下に移動すると思います。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211125083152j:plain

今日、エノキの葉、枝、幹上を探した限りでは、ゴマダラチョウは見つけることができませんでした。冬になったら、エノキの落ち葉の下の探索を行ないたいと思います。

            

カテゴリー:生き物観察

森の中の幼木

カテゴリー:樹木と草本

森の中には沢山の種類の幼木が観察されます。成木が見当たらないのに、一体どこから侵入したのだろうと思われるような種類も見られます。草刈り作業中にうっかり切ってしまわないように、慎重に保全、観察を続けています。

写真1はムクノキです。アキニレ、エノキとともにこの森で最もよく見られる種類です。

↓写真1f:id:yurumushinomori:20211127102620j:plain

写真2クヌギです。この森にはクヌギの高木はありませんし、周囲にも見当たりませんが、何本かの低幼木を観察することができました。どこからかドングリが転がり込んできた(鳥が運んできた?)のでしょうね。保全対象の幼木は青いテープで目印をつけています。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211127102534j:plain

写真3はコナラです。クヌギ同様、こちらも高木はありませんが、低幼木がいくつか見られました。貴重な幼木なので、大切に保全しています。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211127102549j:plain

写真4はミズキです。森の周辺にはミズキの高木がありますが、森内ではまだ低木、幼木の状態です。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211127102643j:plain

写真5クスノキです。森内は常緑樹は非常に少ないので、貴重な種類です。

↓写真5f:id:yurumushinomori:20211127103958j:plain

最後はオニグルミです(写真6)。森内をくまなく探して見ましたが、わずか3本のみ生えていました。

↓写真6f:id:yurumushinomori:20211127102654j:plain

他にもいろいろな種類の幼木が見られますので、適宜紹介していきたいと思います。

            

カテゴリー:樹木と草本

秋の昆虫ーアサマイチモンジを初目撃

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」ではタテハチョウ科イチモンジチョウ亜科の種を頻繁に見ることができます。一つはコミスジ、もう一つはイチモンジチョウです。しかし、後者の場合、類似種にアサマイチモンジがいて、飛んでいる姿だけでは識別できません。これまで撮影する機会がなく、単にイチモンジチョウとしてきましたが、今回初めて写真撮影に成功し、アサマイチモンジが混在していことがわかりました。

写真1が今回撮ることができたアサマイチモンジです。タイトルに「アサマイチモンジを初目撃」と書きましたが、正確には「初めて同定」とすべきでしょう。これまでイチモンジチョウと思っていた目撃個体は、実はアサマイチモンジだったということが多いかもしれません。

↑写真1  ムクノキの葉にとまるアサマイチモンジ

以下は、今日(9月29日)写真にすることができた主な昆虫(チョウ中心)を示します。

↑写真2  キタテハ

↑写真3  コムラサキ

エノキの幼木にはアカボシゴマダラの蛹がぶら下がっていました(写真4)。この時期だと4化目の個体でしょう。

↑写真4  アカボシゴマダラの蛹

秋になり、ウラナミシジミが目立ってきました(写真5)。

↑写真5  ウラナミシジミ

↑写真6  アキアカネ

            

カテゴリー:生き物観察

アキニレとクワガタムシ

カテゴリー:生き物観察

樹液に集まる昆虫の代表格と言えば、カブトムシやクワガタムシです。そして、樹液が豊富な樹木と言えばクヌギやコナラなどのブナ科の落葉樹が想像されますが、実はアキニレもそれらに勝るとも劣りません。むしろ、クワガタはアキニレが好きなように思います。

「ゆるむしの森」には、アキニレの森(写真1)のエリアが二カ所あり、夏にはこれらの昆虫の樹液レストランと化します。

f:id:yurumushinomori:20211125095341j:plain↑写真1 アキニレの森の入り口の一つ

森の中には、大小の数えきれないほどのアキニレがあり、あちこちに樹液レストランが開店中でした(写真2)。甲虫類やオオスズメバチが主なお客です。

f:id:yurumushinomori:20211125095359j:plain↑写真2

その中でも圧倒的な存在感を示しているのがノコギリクワガタです(写真3, 4)。

f:id:yurumushinomori:20211125095434j:plain↑写真3  ノコギリクワガタの♂と穴の中にいる♀

f:id:yurumushinomori:20211125095532j:plain↑写真4

ノコギリクワガタの他にもコクワガタ写真5左)やヒラタクワガタが見られました。

f:id:yurumushinomori:20211125095417j:plain↑写真5  アキニレの枝上を駆け上るコクワガタの♂(左)とノコギリクワガタの中歯型♂(右)

アキニレの森には、サトキマダラヒカゲヒカゲチョウ、ヒメジャノメ(写真6)などのジャノメチョウ亜科の仲間も多く見られ(→初夏の昆虫)、樹液に集まります。

f:id:yurumushinomori:20211125104722j:plain↑写真6  ヒメジャノメ

これから8月いっぱいまで、アキニレ樹液レストランは開店営業中でしょう。

引用したブログ記事

  2021.05.31 初夏の昆虫

            

カテゴリー:生き物観察

初夏の昆虫

カテゴリー:生き物観察

初夏を迎えて「ゆるむしの森」でも多くの昆虫が見られるようになりました。この日(5月31日)、観察できたチョウを中心とする主な昆虫を写真1–11に示します。

f:id:yurumushinomori:20211124221947j:plain↑写真1  モンキチョウ Colias erate (シロチョウ科)の♀

f:id:yurumushinomori:20211124222006j:plain↑写真2  アキニレの主幹にとまるヒカゲチョウ Lethe sicelis(タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科)

f:id:yurumushinomori:20211124222026j:plain↑写真3  樹液が出ているアキニレにとまるサトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii(タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科)

f:id:yurumushinomori:20211124222038j:plain↑写真4  樹液が出ているハンノキの主幹にとまるサトキマダラヒカゲ

f:id:yurumushinomori:20211124222059j:plain↑写真5  コムラサキ Apatura metis(タテハチョウ科コムラサキ亜科)の♀(この日一番多く見られたチョウの種)

f:id:yurumushinomori:20211124223436j:plain↑写真6  ミスジ Neptis sappho(タテハチョウ科イチモンジチョウ亜科)(ノイバラの葉上)

f:id:yurumushinomori:20211124222112j:plain↑写真7  イチモンジセセリ Parnara guttataセセリチョウ科)

f:id:yurumushinomori:20211124224012j:plain↑写真8  マイマイガ Lymantria dispar(ドクガ科)の幼虫

f:id:yurumushinomori:20211124223538j:plain↑写真9  アキニレの樹液を吸いにきたオオスズメバチ Vespa mandariniaスズメバチ科)

f:id:yurumushinomori:20211124222134j:plain↑写真10  コガネムシ Mimela splendensコガネムシ科)

f:id:yurumushinomori:20211124222145j:plain↑写真11  カワヤナギの主幹上にとまるノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatusクワガタムシ科)の♂と♀(アキニレ上にも多数目撃)

写真に収めることはできませんでしたが、ナガサキアゲハキタキチョウゴマダラチョウ、アカボシゴマダラ、キタテハ、イチモンジチョウ、ヒメジャノメ、ヒメウラナミジャノメ、ツバメシジミベニシジミなどの姿も見られました。

            

カテゴリー:生き物観察

5月初旬の樹木観察

カテゴリー:樹木と草本

5月に入り、新緑の季節になりました。「ゆるむしの森」も緑が豊かになってきました。この時期、葉をつけてきた樹木をいくつか紹介します。

写真1は、森の入り口に生えるノイバラ Rosa multifloraバラ科バラ属)です。白い花をつけていて、いい香りを放っていました。

↓写真1f:id:yurumushinomori:20211124205650j:plain

次は、この森の中では比較的高木のマルバヤナギ Salix chaenomeloides(ヤナギ科ヤナギ属)です(写真2-4)。樹高 10 mを超えます。新葉は赤くなるので、別名アカメヤナギともよばれます。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211124205717j:plain

その名のとおり、葉は丸みを帯びます(写真3)。細長い円錐形の雄花序が観察できました。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211124205912j:plain

幹はヤナギ特有のゴツゴツした感じで、粗い縞模様が見られます(写真4)。初夏になると樹液が出てきて、沢山のチョウ、甲虫類、スズメバチが集まってきます。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211124205747j:plain

写真5は、同じヤナギ属のカワヤナギ Salix gilgiana です。この森には少なくとも10本以上は生えていて、タテハチョウ科のコムラサキの生息を支えています。

↓写真5

写真6はエノキ Celtis sinensis(アサ科エノキ属)です。大きくなると樹高 20 mを超えますが、この森ではまだ樹高 10 mを超えるものは少ないです。この木を食樹とするゴマダラチョウの幼虫は高木を好むといわれていますが、この森では 3-10 m 程度の低木にたくさん発生しています。

↓写真6

ゆるむしの森にはアキニレ Ulmus parvifolia(ニレ科ニレ属)が豊富に存在しますが、この時期葉上に虫こぶ(アキニレハフクロフシ)が沢山見られました(写真7)。アキニレヨスジワタムシ(アブラムシ科タマワタムシ亜科Tetraneura)が作る虫こぶですが、鮮やかな赤い葉瘤なので、何かの実か?と見間違うほどです。

↓写真7f:id:yurumushinomori:20211124205951j:plain

写真8, 9は、アジサイ科ウツギ属の落葉低木、ヒメウツギ Deutzia gracilis です。白い可憐な花を咲かせる低木です。

↓写真8f:id:yurumushinomori:20211124210006j:plain

枝先には多数のつぼみが見られました。まもなく白い花が開くことでしょう。

↓写真9f:id:yurumushinomori:20211124210020j:plain

この森にはスイカズラ Lonicera japonicaスイカズラスイカズラ属)もたくさん生えています(写真10)。白い花に鼻を近づけると香水のようないい匂いがします。タテハチョウ科のイチモンジチョウやアサマイチモンジの食草です。

↓写真10

最後はハリエンジュ Robinia pseudoacacia です(写真11)。北米原産のマメ科の落葉樹でニセアカシアともよばれます。侵略的外来種であり、共生する根粒菌が窒素固定をするので、痩せた土地でも旺盛に繁殖します。ゆるむしの森では高木はまだ1本のみですが、低幼木が周囲にたくさん生えていて油断すると広がっていきますので、適宜伐採処理が必要になると思います。

↓写真11

                            

カテゴリー:樹木と草本

4月の樹木観察

カテゴリー:樹木と草本

4月も下旬に入り、「ゆるむし虫の森」もだいぶ緑が深くなってきました。基本はハンノキとアキニレを中心とする森ですが、その他にも沢山の種類の自然木があります。今日、確認した中から少し紹介します。

写真1、2はこの森の中でも最も高木の一つのハリエンジュ(ニセアカシア)です。北米原産のマメ科ハリエンジュ属の落葉高木です。繁殖力が強い外来種で、日本生態学会は日本の侵略的外来種ワースト100に選定しています。

アキニレの森の周辺や中にポツポツと低幼木がありましたので、今日伐採しました。高木はこの1本のみでした。

↓写真1f:id:yurumushinomori:20211123133627j:plain

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211123133650j:plain

写真34はヤナギ科ヤナギ属のカワヤナギです。河川沿いに広くみられるヤナギですが、ここでは川の近くでもない森の周辺に生えており、少なくとも7本確認できました。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211123133719j:plain

最も太い主幹の株(写真4)は、樹液が流れたと思われる痕があり、夏になれば昆虫の樹液レストランになる可能性があります。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211123133734j:plain

写真5–7はクワ(ヤマグワ)です。クワ科クワ属の落葉高木または灌木ですが、この森に自生しているものは10 m前後のものが多いので、高木の部類に入ると思います。樹高5 mを超えるものは、全部で12本確認できました。

↓写真5f:id:yurumushinomori:20211123133755j:plain

クワの実がなり始めていました(写真6)。

↓写真6f:id:yurumushinomori:20211123133806j:plain

↓写真7f:id:yurumushinomori:20211123133820j:plain

最後はミズキです(写真8)。ミズキ科ミズキ属の落葉高木ですが、まだ低幼木の段階で、森の真ん中のブッシュエリアにポツンと2本だけ確認できました。どこから侵入したのでしょうか(森のはずれには高木を1本確認)。ミズキも成長が速いので、夏を過ぎる頃には大きくなっているのではないでしょうか。

↓写真8f:id:yurumushinomori:20211123133838j:plain

最後は、散策路の予定部分を一部草刈りして、今日の観察会を終わりました。

            

カテゴリー:樹木と草本