2024.11.04更新 ゆるむしの森のチョウ
「ゆるむしの森」に生息するシジミチョウ科 Lycaenidaeのチョウは、これまで 10 種を確認しています。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。
ウラギンシジミ亜科 Curetinae
ウラギンシジミ Curetis acuta
●前翅長:20-27 mm ●時期:3–4 月(越冬型)、6–11 月 ●越冬態:成虫 ●目撃頻度:+ ●幼虫の食草:マメ科(クズ、フジなど)の花や蕾
備考:周年見られるシジミチョウ種ですが、目撃頻度はやや少ないです。成虫で越冬するので冬の暖かい日にも見かけることがあります。南方系の種ですが、関東地域でも普通に見られます。
シジミチョウ亜科 Lycaeninae
●前翅長:14-19 mm ●時期:3–11 月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:++ ●幼虫の食草:スイバ、ギシギシ、ノダイオウなどのタデ科植物
最も普通に見られるシジミチョウ種の一つですが、下に示すツバメシジミやヤマトシジミと比べると見かける頻度は少ないです。
ムラサキシジミ Arhopala japonica
●前翅長:16-22 mm ●時期:3–4 月(越冬型)、6–10 月 ●越冬態:成虫 ●目撃頻度:+ ●幼虫の食草:アラカシ、シラカシ、イチイガシ、スダジイなどのブナ科樹木
備考:普通種ですが、他のシジミチョウに比べると、目撃できる機会は少ないです。森内における幼虫の食樹であるアラカシやシラカシの少なさに帰因すると考えられますが、隣接する神社境内にはシラカシの高木があり、より多く観察することができます。南方系の種で、90年代には関東にはほとんど生息していませんでした。
ムラサキツバメ Arhopala bazalus
●前翅長:20-25 mm ●時期:3–4月(越冬型)、6–10 月 ●越冬態:成虫 ●目撃頻度:(+) ●幼虫の食草:マテバシイ、シリブカガシ、アカガシ、アラカシ、 クヌギなどのブナ科樹木
ムラサキシジミ同様、南方系のシジミチョウで、地球温暖化により北上化しています。幼虫の主な食草であるマテバシイなどの植樹も分布を広げる原因の一つとなっています。ゆるむしの森では、マテバシイは低木が数本しかなく、幼虫の発生はこれまで確認していません。おそらく、周辺から飛来しているものと思われますが、ここ数年まれながらも見かけるようになりました。
●前翅長:18-23 mm ●時期:6–7 月 ●越冬態:卵 ●目撃頻度:+ ●埼玉県 (2018) 準絶滅危惧1型(NT1)[1] ●幼虫の食草:ハンノキ、ヤマハンノキ、ミヤマハンノキなどのカバノキ科落葉樹
備考:埼玉県の県蝶に指定されている種で、この森でこれまで発生を確認している唯一のゼフィルス種です。発生時期である 6 月には割と見る機会が多いです。ゼフィルス類の多くが山地性なのに対して、本種とオオミドリシジミは平地(中部以北)でも見ることができます。
●前翅長:16-21 mm ●時期:4–8 月 ●越冬態:蛹 ●目撃頻度:(+) ●幼虫の食草:フジ、クズ・クサフジ、ミヤギノハギ、ハリエンジュ、シロツメクサ(マメ科)、ウツギ、マルバウツギ、ヒメウツギ(アジサイ科)、ノイバラ、リンゴ(バラ科)、ナツハゼ(ツツジ科)、クロウメモドキ・クロツバラ(クロウメモドキ科)、クリ(ブナ科)、トチノキ・ムクロジ(ムクロジ科)、ミズキ(ミスキ科)、キハダ(ミカン科)、ヤブデマリ(ガマズミ科)、アワブキ(アワブキ科)などの花、蕾、実
備考:ゆるむしの森では稀な種です。幼虫は多食性ですが、この森ではこれまでウツギのみに発生を確認しています。春型は裏翅のストライブが白く鮮やかです(上記写真は夏型)。
●前翅長:13-19 mm ●時期:4–10 月 ●越冬態:蛹 ●目撃頻度:+ ●幼虫の食草:マメ科(クズ、シロツメクサ、ミヤコグサ、ハリエンジュなど)、バラ科(スモモ、ナナカマド、ノイバラなど)、タデ科(イタドリ、ギシギシ、スイバなど)、トウダイグサ科(アカメガシワ)、ミカン科(キハダ)などの花
備考:普通種ですが、下記のツバメシジミやヤマトシジミの類似種と比べると、個体数は少ないです。ツバメシジミやヤマトシジミが地面近くや草本の上を飛び交うのに対し、本種は森の中の陽当たりのよい樹木の周りを飛ぶことが多く、地面で吸水する姿もよく見かけます。この森では、春にはほとんど見かけず、6 月以降に目撃頻度が高くなります。
●前翅長:10-18 mm ●時期:4–11月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:++ ●幼虫の食草:カラスノエンドウ(ヤハズエンドウ)、クズ、シロツメクサ、フジ、ミヤコグサ、ムサラキツメクサ(アカツメクサ)など、多くのマメ科植物
備考:この森では、最も個体数が多いシジミチョウの一つです。地面近くや草本の上をチラチラと飛んでいますが、止まっているところを見ないとヤマトシジミと識別するのは難しいです。
ウラナミシジミ Lampides boeticus
●前翅長:13-19 mm ●時期:8–11 月 ●越冬態:不定 ●目撃頻度:+++ ●幼虫の食草:アズキ、エンドウ、カラスノエンドウ、クズ、ダイズ、ミヤコグサ、ラッカセイなど、多くのマメ科植物
備考:夏から関東に向けて北上化し、秋に大発生しますが、冬越しはできず、翌年また北上化を繰り返すというシジミチョウです。地球温暖化とともに見かける時期が早くなっているような気がします。
●前翅長:10-16 mm ●時期:3–11 月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:+++ ●幼虫の食草:カタバミ科植物(カタバミ、ウスアカカタバミ、ムラサキカタバミなど)
備考:最も普通のシジミチョウですが、春の時期にはツバメシジミよりも個体数がやや少ないです。
上記のほかに、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、ゴイシシジミを目撃しており、生息しているかどうかを調査中です。
引用文献
[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018 (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf
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