2023.11.02更新 ゆるむしの森のチョウ
「ゆるむしの森」においては、ジャノメチョウ亜科のチョウ6種の生息を確認しています。テングチョウ亜科は国内産として1種のみが知られていますが、ゆるむしの森でも稀ですが目撃できます。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。
ジャノメチョウ亜科 Satyrinae
ヒメジャノメ Mycalesis gotama
●前翅長:19–30 mm ●時期:5–11月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:+++ ●幼虫の食草:イネ科(イネ、エノコログサ、ジュズダマ、ススキ、チガヤ、ミヤコザサ、チヂミザサ、メダケなど)、カヤツリグサ科(カヤツリグサ、シラスゲ、ヒメスゲなど)
備考:普通種で林間でよく見られます。裏翅のジャノメ模様にもけっこう個体変化があります。ゆるむしの森で最もよく見られるジャノメチョウ種です。
ヒメウラナミジャノメ Ypthima argus
●前翅長:18–25 mm ●時期:5–9月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:+ ●幼虫の食草:チヂミザサ、ススキ、イヌビエ、スズメノカタビラ、クサヨシなどのイネ科植物
備考:普通種ですが、ゆるむしの森では目撃頻度の少ないジャノメチョウです。年を追って個体数が増えています。
ジャノメチョウ Minois dryas
●前翅長:29–42 mm ●時期:6月下旬–9月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:(+) ●埼玉県 (2018) 准絶滅危惧2型(NT2)[1] ●幼虫の食草:イネ科(ススキ、コメススキ、カモジグサ、スズメノカタビラ、クサヨシなど)やカヤツリグサ科(ヒカゲスゲ、ショウジョウズゲなど)の植物
備考:毎年1〜2回の目撃のみで偶産と考えていましたが、2023年6月下旬から頻繁に見られるようになり、生息リストに加えました。
ヒカゲチョウ(ナミヒカゲ)Lethe sicelis
●前翅長:19–30 mm ●時期:5–10月 ●越冬態:幼虫 ●目撃頻度:++ ●幼虫の食草:イネ科(クマザサ、ススキ、ミヤコザサ、メダケなど)
備考:普通種ですが、他のジャノメチョウ種と比べると発生時期はやや遅く、5月下旬から見られるようになります。6月半ば過ぎると一時期最も多いジャノメチョウになります。
サトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii
●前翅長:28–39 mm ●時期:5–9月 ●越冬態:蛹 ●目撃頻度:++ ●幼虫の食草:イネ科(クマザサ、ミヤコザサ、メダケ、モウソウチクなど)
備考:林間を飛ぶ性質のあるジャノメチョウのなかでも、本種は黄褐色の印象が強いので、飛翔中でも見当をつけることができます。面白いことに、上記のヒカゲチョウとは時期的に交互に発生するので、両種が混在する時期は短いです。類縁種のヤマキマダラヒカゲとの識別は難しいですが、ヤマキマダラヒカゲはこの地域には生息しません。
クロコノマチョウ Melanitis phedima
●前翅長:35–45 mm ●時期:3–11月 ●越冬態:成虫 ●目撃頻度:(+) ●幼虫の食草:イネ科(イヌビエ、エノコログサ、ジュズダマ、チガヤ、ミヤコザサ、チヂミザサ、メダケ、メヒシバなど)
備考:南方系の種で、埼玉東部ではお隣の千葉県や東京都と比べても目撃は限られます。ゆるむしの森でも目撃回数は少ないですが、とくに秋になると林の中から突然ヒラヒラと飛び出してきて驚かしてくれます。
テングチョウ亜科 Libytheinae
テングチョウ Libythea lepita 英: Nettle-tree butterfly
●前翅長:20-29 mm ●時期:3–11月 ●越冬態:成虫 ●目撃頻度:(+) ●幼虫の食草:エノキ、エゾエノキ(アサ科)、ソメイヨシノ、ヤマザクラ(バラ科)
備考:この森では滅多にお目にかかれない種ですが、毎年複数回目撃できますし、周辺の屋敷林の周囲や神社境内の森でも時々見かけますので、確実に生息していると思われます。
引用文献
[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018 (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf
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