ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

エノキ上の Hestina 幼虫

カテゴリー:生き物観察

4月はコムラサキ亜科チョウ種の越冬幼虫が脱皮を終えて羽化の準備を整える時期です。「ゆるむしの森」ではコムラサキゴマダラチョウ、アカボシゴマダラの3種の幼虫が見られます。コムラサキはヤナギ類の葉を食べ、後2者の Hestina 属種はエノキを食樹としています。

写真1–3ゴマダラチョウの終齢(5齢)幼虫です。背中に赤い2本のラインが走っていて、脱皮してからそれほど日数が経っていないことがわかります。時間経過とともにこの赤い線は消失し、青々とした緑色の幼虫になります。体長を測ってみると、26–29 mm(頭部突起を除く)でした。

↑写真1  ゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica の終齢幼虫(2023年4月10日)

↑写真2  上と同じエノキにいた別個体の終齢幼虫(2023年4月10日)

↑写真3  上とは別のエノキにいたゴマダラチョウの終齢幼虫(2023年4月10日)

ゴマダラチョウの幼虫は、亜高木から高木のエノキにいることが多いので、探すのは結構大変です。それでも 2 m 以内の低い位置から伸びている横枝の葉上を探せば、割と見つかることがあります。写真1-3の個体は、いずれも大人の目線程度の高さにいたものです。

双眼鏡を頼りに探せば、高い位置にいる幼虫も見つけることができます。幹上にはまだ脱皮前の個体が結構いました(写真4)。

↑写真4  脱皮前のゴマダラチョウの越冬幼虫(2023年4月10日)

一方、アカボシゴマダラの幼虫はもっぱらエノキ低幼木で見つけることができます。写真5は樹高 1 m 程度の幼木にいた個体です。ゴマダラチョウに比べて、背中の赤線がボヤけていて胴体斜めのストライプがはっきりしているのが特徴です。体長は 32 mmでした。

↑写真5  エノキ幼木上のアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis の終齢幼虫(2023年4月4日)

写真6は70 cmほどの幼木にいたアカボシゴマダラです。体長は 28 mm でした。

↑写真6  エノキ幼木上のアカボシゴマダラの終齢幼虫(2023年4月10日)

この時期の幼虫段階ではたくさん見ることができるゴマダラチョウとアカボシゴマダラですが、羽化までたどり着ける個体はわずかです。多くは幼虫や蛹の段階で野鳥に食べられてしまいます。特にこの時期はシジュウカラなどによる捕食が盛んです。

時折ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの幼虫が同じ木にいることがありますが、どちらかと言えば、前者の方が捕食される率が高いように思います。鳥の眼にはゴマダラチョウの方が見つけやすいのでしょうか。

5月に入れば本格的に羽化が始まります。私たちの目に成虫が乱舞する姿が映るためには、被捕食率を考えると、相当数の幼虫が越冬に成功する必要があるということになります。

           

カテゴリー:生き物観察