カテゴリー:生き物観察
2023.04.27更新
4月に入り、ゆるむしの森でもチョウの種類、数とも増えてきました。その中にはセセリチョウの仲間も含まれます。セセリチョウの種の多くは初夏から秋にかけて姿を見せますが、春に発生するものは比較的希少なものが多いです。
まずはミヤマチャバネセセリです(写真1)。森の南側の草地と田んぼの境にいました。ものすごいスピードで飛ぶというイメージがある本種ですが、今日見たものはユラユラと飛んでいて、最初見たときは何の種かわかりませんでした。とまったところを近づいて見ると、本種の特徴である後翅裏中央の孤立した白点がくっきりと確認できました。
↑写真1 オギの葉に留まるミヤマチャバネセセリ Pelopidas jansonis(2023年4月10日)
ミヤマチャバネセセリは、その名前から山地にいるようなイメージを抱きますが、埼玉県では平野部でも広く見ることができます。ただ発生場所は局地的で、近年個体数が減り続けています。県単位でも絶滅危惧種、あるいは準絶滅危惧種に指定するところが増えています。ゆるむしの森でも他のセセリチョウと比べると見る機会は少ないですが、幼虫の食草となるオギの草むらがあってこの種の発生を支えているものと思われます。
運良く、交尾中の様子をとらえることができました(写真2)。
↑写真2 交尾中のミヤマチャバネセセリ(2023年4月10日)
次はギンイチモンジセセリです(写真3–5)。ミヤマチャバネセセリが生息する場所にはギンイチモンジセセリもいることが多いようで、ゆるむしの森でもいっしょに発生します。森の南側のオギの草地にいることが多いです。
↑写真3 ギンイチモンジセセリ Leptalina unicolor(2023年4月10日)
↑写真4 別個体のギンイチモンジセセリ(2023年4月10日)
↑写真5 上二つとは別個体のギンイチモンジセセリ(少し翅を開いたところ、2023年4月10日)
ギンイチモンジセセリも県内平野部で割と見ることができますが、やはり減少が続いています。環境省カテゴリーでは準絶滅危惧種(NT)、埼玉県では準絶滅危惧2型(NT2)に指定されています。ゆるむしの森では割と豊富に観察することができます。その意味でこの森は貴重です。
4月下旬になれば、この森の草地区域にコチャバネセセリ(写真6、4月27日更新)が見られるようになります。この種も最近個体数の減少が激しく、埼玉県では準絶滅危惧2型(NT2)に指定されています。この森ではメダケ林の周辺で見ることが多く、この林が発生源になっている可能性が高いです。
↑写真6 コチャバネセセリ Praethoressa varia(2023年4月27日)
セセリチョウ以外ではアゲハチョウ、シロチョウ科(モンシロチョウ、キタキチョウ、モンキチョウ)、タテハチョウ科(コミスジ、キタテハ、ルリタテハ)、シジミチョウ科(ベニシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ、ムラサキシジミ)のチョウを目撃することができました。そのうちのいくつかを以下に挙げます。
写真7はアゲハチョウです。春型は瑞々しくてとてもきれいです。
↑写真7 アゲハチョウ Papilio xuthus(2023年4月10日)
次はモンシロチョウです(写真8)。この個体は黄色みが強く、とまっているところを見つけた時には一瞬何の種がわかりませんでした。
↑写真8 モンシロチョウ Pieris rapae(2023年4月4日)
越冬明けのルリタテハが森の隣の民家の庭先にとまっていました(写真9)
↑写真9 ルリタテハ Kaniska canace(2023年4月4日)
写真10はベニシジミです。多数発生しています。
↑写真10 ベニシジミ Lycaena phlaeas(2023年4月4日)
ベニシジミとともに沢山見られるのがツバメシジミです(写真11-13)。後翅に尾状突起があるので同定は容易ですが、飛んでいるときはヤマトシジミと識別しにくいです。
↑写真11 ツバメシジミ Everes argiades の♂(2023年4月4日)
写真12は、上とは別の日の♂の個体です。
↑写真12 ツバメシジミ(2023年4月10日)
写真13はツバメシジミの♀です。
↑写真13 ツバメシジミ(2023年4月10日)
最後はムラサキシジミです(写真14)。これも越冬明けの個体です。
↑写真14 ムラサキシジミ Narathura japonica(2023年4月10日)
ハンノキの森の周辺では、チョウ目ヤママユガ科のオナガミズアオやオオミズアオの羽化が見られました。森の中ではときおりブーンという音がするので、見上げてみるとオオスズメバチがホバリングしていました。一頃見られなくなっていましが、戻ってきたようです。
2023年4月27日更新
コチャバネセセリの写真(写真6)を挿入しました。
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