カテゴリー:生き物観察
今年も12月に入り寒さが増してきました。ゆるむしの森では飛翔するチョウの姿もめっきり減りましたが、それでもモンチロチョウ、キタキチョウ、モンキチョウ、キタテハ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミなどがまだまだ見られます。一方で冬支度が本格化し、各々の越冬態での姿があちこちで見られます。
というわけで、今年の冬最初のコムラサキ亜科の越冬幼虫の調査を行いました。対象はエノキ Celtis sinennsis を食樹とするゴマダラチョウ Heitina p. japonica とアカボシゴマダラ Hestina a. assimilis、それにヤナギ類を食樹とするコムラサキ Apatura metis です。
写真1はアキニレ Ulmus parvifolia を中心とする混成の森で、ところどころに樹高10 mを超えるエノキの高木、3–<10 mの亜高木が生えています。このエリアのエノキを中心に根元の落葉にいる越冬幼虫を探索しました。
↑写真1 アキニレを中心とする混成の森
主なエノキ高木は落葉が風で拡散しないように、木の枝でこしらえた囲いと防風壁を設けています(写真2)。
↑写真2 落葉の拡散防止のための囲いと防風壁
写真2のエノキ高木は、例年10匹近くのゴマダラチョウの越冬幼虫を産出しますが、今回も落葉をめくってみると無事続々と出てきました(写真3)。他の高木、亜高木も約半数から1本あたり1–4匹のゴマ幼虫が出てきました。体長は頭部突起を除いて15-18 mmです。
↑写真3 ゴマダラチョウの越冬幼虫
エノキ高木から出てくるのはもっぱらゴマダラチョウで、アカボシゴマダラは稀です。アカボシが出てきたとしても数の上では圧倒的に少ないです。写真4は樹高 7 m 程度の亜高木ですが、この程度の樹高だとよくゴマダラチョウとアカボシゴマダラが時折混在して出てきます。
↑写真4 樹高 7 m のエノキ亜高木の根元
この亜高木を探ってみるとゴマダラチョウが3匹、アカボシゴマダラが2匹見つかりました(写真5)。
↑写真5 ゴマダラチョウとアカボシゴマダラの越冬幼虫
この日は樹高 2 m 以下のエノキ低幼木も30本ほど探索しました。ほとんどからアカボシゴマダラが検出されました。数で言えば、幹上にいたものが4割、落葉にいたものが6割でした。だんだん寒くなるにつれて、幹上の幼虫は落葉に潜っていくものと思われます。
エノキの探索に時間をかけ過ぎて、コムラサキがいるヤナギ類の調査の頃には陽が傾き始めました。薄暗くなった状態での、ヤナギの樹皮の間にいるコムラサキの越冬幼虫(体長は頭部突起を除いて10 mm弱)を探すのはなかなか大変です。1本のヤナギからやっと1匹見つけました(写真6)
↑写真6 カワナヤギ Salix gilgiana の主幹上のコムラサキの越冬幼虫(よく目を凝らして見つけてください)
ヤナギ類の探索はまた日をあらためて詳細に行ないたいと思います。
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