カテゴリー:生き物観察
11月も後半になり、チョウを見る機会はめっきり少なくなりました。しかし、「ゆるむしの森」にチョウの成虫個体数調査に行くと、まだまだがんばっている種もいます。キタキチョウ、キタテハ、ウラナミシジミ、ヤマトシジミなどです。同時に、この時期になると越冬幼虫の調査も始まります。特にエノキ Celtis sinensis を食樹とするコムラサキ亜科のチョウの越冬幼虫の調査は毎年詳細に行っています。
写真1は、エノキ幼木の葉上にいたアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis の越冬型4齢幼虫です(褐色化しています)。通常の4齢幼虫とは異なり、頭部突起が短くなり、胴体もコンパクトになっています。
↑写真1 エノキ幼木葉上のアカボシゴマダラの越冬型4齢幼虫(2022年11月18日)
11月に入るとアカボシゴマダラの越冬型幼虫は葉上から幹上に徐々に引っ越しします。写真2は幹上の位置取りを終えた個体です。さらに12月に入るとほとんどの個体は落葉の下へ移動し、そこで冬を越します。幹上に引っ越ししないで、直接落葉へ向かう個体もけっこういます。
↑写真2 エノキ幼木幹上のアカボシゴマダラの越冬型4齢幼虫(2022年11月18日)
なぜアカボシゴマダラは落葉に潜る前に幹上で一定期間過ごすのか、理由はよくわかっていないようです。これは類縁種のゴマダラチョウには見られない特徴です。
ある一本のエノキ幼木にはアカボシゴマダラの蛹の抜け殻がぶら下がっていました(写真3)。この幼木は一ヶ月前に調査したときは、通常型5齢幼虫しかいませんでしたので、その個体が蛹になり羽化したものと思われます。この時期だと4化目の羽化になります、
↑写真3 エノキ幼木にぶら下がるアカボシゴマダラの蛹痕(2022年11月18日)
エノキを見ていると割とカメムシの仲間が目撃できます。あるエノキ幼木には、アオクサカメムシ Nezara antennata の幼虫がいました(写真4)
↑写真4 エノキ幼木葉上のアオクサカメムシの終齢幼虫(2022年11月18日)
別の日には、葉上にはエサキモンキツノカメムシ Sastragala esakii がいました(写真5)。紫色がかった褐色の体の中央に特徴的な白いハート型の斑紋があるので、同定は容易です。体の周囲と脚は緑から黄緑色をしています。
↑写真5 エノキ幼木葉上のエサキモンツノカメムシ(2022年11月2日)
エノキ葉上にいろいろなチョウが翅を休めていることがありますが、この日はチャバネセセリ Pelopidas mathias がとまっていました(写真6)。
↑写真6 エノキ幼木葉上のにとまるチャバネセセリ(2022年11月18日)
エノキ高木のほとんどは、まだ葉が沢山ついた状態ですが、比較的落葉が進んだ木を数本選んで根元を探索してみました。すると、ゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica の越冬幼虫が1匹出てきました(写真7)。この森でも、アカボシゴマダラはもっぱら低幼木で、ゴマダラチョウは高木根元で越冬します。
↑写真7 エノキ高木根元の落葉にいたゴマダラチョウの越冬型4齢幼虫(2022年11月18日)
落葉をめくっていたら、ここにもエサキモンツノカメムシがいました(写真8)。
↑写真8 エノキ落葉にいたエサキモンツノカメムシ(2022年11月18日)
最後に、まだまだ目撃できるチョウの一つとして、キタテハ Polygonia c-aureum を挙げます(写真9)。
↑写真9 晩秋のキタテハ(2022年11月18日)
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