ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

オオミズアオとオナガミズアオ

カテゴリー:生き物観察

以前のブログ記事で、「ゆるむしの森」にはオナガミズアオが生息していることを記しました(→オナガミズアオ)。チョウ目ヤママユガ科に属する、きれいな青白色の大型の蛾です。最初に森の中でこの蛾を見つけたときは、てっきり類縁種(同属異種)のオオミズアオだと思いました。それほど両種は見た目が似ています。しかし、目撃できる場所や機会は圧倒的にオナガミズアオの方が少ないです。本種は環境省カテゴリーで準絶滅危惧(NT)種に指定されています [1]。ここで、あらためてオオミズアオオナガミズアオの特徴と違いを示したいと思います。

まず、オオミズアオの成虫を写真1、2に示します。

写真1  オオミズアオ(2018年5月27日、千葉県松戸市

写真2  オオミズアオ(2019年8月6日、千葉県松戸市

写真3–5オナガミズアオです。写真5は以前のブログ記事でも載せています(→7月のチョウ類)。

写真3  オナガミズアオ(2022年4月23日、埼玉県ゆるむしの森)

写真4  オナガミズアオ(2022年6月13日、埼玉県ゆるむしの森)

写真5  オナガミズアオ(2022年7月7日、埼玉県ゆるむしの森)

オオミズアオオナガミズアオの特徴を表1に示します。両種とも翅を広げると10 cm程度になる大型の蛾です。オオミズアオは翅の色の個体差が大きく、上記の写真でもわかるように、「ミズアオ」と言いながら黄ばんだ色のものが多いです。オナガミズアオの場合は、その名前から後翅の尾状突起が長いような印象をもちますが、オオミズアオに比べて特に長いということはありません。

両種の発生は年2回です。蛹で越冬し、4–5月に羽化します。その個体が産卵したものが夏(7-8月)にまた発生します。オオミズアオオナガミズアオの生態の大きな違いは、幼虫段階で、前者がバラ科ムクロジ科(モミジ類)、ブナ科、ミズキ科などを食草とする多食性なのに対して、後者はカバノキ科(ハンノキなど)に限定されるころです。オナガミズアオの生息の局地性はここから理解できます。

表1. オオミズアオオナガミズアオの特徴

オオミズアオ(Aa)とオナガミズアオ(Ag)の判別はそれほど簡単ではありません。両者を並べて比べてみたら判断できますが、単独で見た場合、慣れていないと同定が難しいです。図1とともに判別の仕方を以下に箇条書きにします。

                

1) 翅の色がAaでは黄色がかった青白色が多く(図1上)、Agでは青白色(図1下

2) 前翅の前の部分の赤紫色のラインがピンク色(薄く白粉をふいたような色)との二重になっているのがAa、鮮明な白色ラインが平行に走るのがAg(図1白色矢印)

3) 前翅の先端が丸みを帯びているのがAa、角張っているのがAg(図1オレンジ矢印)

4) Agではとまるときに前翅が垂れた状態になりやすい(写真4

                

しかし、1)の翅の色は個体差が大きく、2)の二重ラインも慣れないと判別し難いかもしれません。また、♀は♂に比べて翅全体が丸くなるので、3)の前翅の角張り(Agの特徴)は曖昧になります。

図1. オオミズアオ(上)とオナガミズアオ(下)の判別の仕方

上記以外でも、後翅にある斑紋がより丸くなるのがAg、触覚の色がAaでは茶色、Agでは緑がかった茶色などの識別法がありますが、単独で見た場合にはあまりあてになりません。同定においては、上記の特徴を総合的に考慮するしかないわけですが、その中でも、オナガミズアオの特徴である「前翅の赤紫と白色の二重ライン」が比較的頼りになる見分け方だと思います。あと、近くにハンノキ林がないのに目撃した場合には、まずオオミズアオと言って間違いないでしょう。

オオミズアオは時期になると割と普通に見ることができますが、オナガミズアオはなかなかお目にかかれませんし、近年個体数も減っているような印象を受けます。オナガミズアオは、埼玉県においても地域別危惧(RT)あるいは準絶滅危惧(NT)に指定されていることでもあり [2]、ゆるむしの森でも保護に努めています。

             

引用文献

[1] 日本のレッドデータ検索システム オナガミズアオhttp://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=07240235887

[2] 埼玉県レッドデータブック動物編2018 (6) 昆虫類 ③ チョウ目ガ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/17reddatabook-garui.pdf

             

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