ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

10月のゆるむしの森ー低幼木を中心に

カテゴリー:樹木と草本

「ゆるむしの森」は、休耕田に草木が生え始めてから10年も経ちませんが、すでに多種多様な樹木が見られ、これまで40種類以上を確認しています。樹高 10 mを超える高木はハンノキ、アキニレ、エノキ、ムクノキ、クワ、ハリエンジュ、ヤナギ類など10種にもなりませんが、樹高 3 mに満たない低幼木はたくさんの種類を確認しています。10月に入ってから観察した高木、亜高木の様子は別ページで紹介していますが(→10月のゆるむしの森ー樹木を中心に)、ここでは低幼木を中心に載せたいと思います。

ゆるむしの森の周辺には屋敷林や神社の森があり、ケヤキシラカシクスノキなどの高木が生えています。また200 mほど離れたところには、クヌギ、イヌシデなどの高木を含む雑木林があります。ゆるむしの森の植生は、おそらくこれらの影響と思われる低幼木が多く観察されます。

まずはブナ科コナラ属の低幼木です。森全体にクヌギが点在し、数えただけでも樹高 1 m 以上のものが20本以上はありました。野鳥がドングリを運んで落としているのでしょう。写真1および2は、それぞれ草地、ハンノキの森に生えるクヌギ低木(樹高 2 m)を示します。

写真1 草地に生えるクヌギ Quercus acutissima(ブナ科コナラ属)の幼木(樹高 1.5 m、2022年10月3日)

写真2 ハンノキの森の中に生えるクヌギ低木(樹高 2 m、2022年10月3日)

森の中には 3 mを超えるクヌギがあったのですが、6月のヒョウを伴う豪雨で折れてしまい、残念ながら枯れてしまいました。

写真3はコナラの低木です(樹高 1.5 m)。1 m以上のコナラの低幼木も10本以上は生えています。

写真3  コナラ Quercus serrata(ブナ科コナラ属)の幼木(樹高 1 m、2022年10月3日)

ゆるむしの森は落葉広葉樹の森であり、これまで常緑のブナ科高木は確認していませんが、低木ではアラカシを確認しています(写真4)。今のところ、確認しているのはこの1本のみです。低幼木は、適宜支柱でユルく固定しています。

写真4  アラカシ Quercus glauca(ブナ科コナラ属)の幼木(樹高 1.3 m、2022年10月3日)

加えて、シラカシの幼木が数本見つかっています(写真5)。森の西側には神社があり、境内にシラカシの高木がありますので、そこからの影響でしょう。

写真5  シラカシ Quercus myrsinifolia(ブナ科コナラ属)の幼木(2022年10月3日)

あと、この森の周辺には、マテバシイは全く見当たらないのに、どういうわけか幼木を3本確認しています(写真6)。マテバシイは南方系のブナ科植物で、九州や四国にしか自生していませんが、最近では関東でも公園の植栽によく使われている樹木です。近くに公園があるので、そこからドングリが飛来してきたのでしょうか。

写真6  マテバシイ Lithocarpus edulis(ブナ科マテバシイ属)の幼木(2022年10月3日)

ケヤキ(ニレ科)は1–2 mのものが数本見られます(写真7)。森の脇にはケヤキの並木がありますので、その影響でしょう。

写真7  ケヤキ Zelkova serrata(ニレ科ケヤキ属)の幼木(樹高 1.5 m、2022年10月3日)

写真8はイヌシデ(カバノキ科)の幼木で、これまで3本確認しています。これも森の外周にはない木ですが、近くの屋敷林に高木が見られます。

写真8  イヌシデ Carpinus tschonoskii(カバノキ科クマシデ属)の幼木(樹高 1.2 m、2022年10月3日)

写真9、10は、ミズキ(ミズキ科)です。昨年紹介した幼木ですが(→森の中の幼木)、1年で樹高 3 m近くになりました。森の中には3本確認し、南側のはずれには高木があります。

写真9  ミズキ Cornus controversa (ミズキ科ミズキ属)の低木(樹高 3 m、2022年10月3日)

写真10  ミズキの幼木(樹高 1 m、2022年10月3日)

これも昨年も紹介しましたが、オニグルミ(クルミ科)の低幼木を3本確認しています。1年間でかなり成長し、1.5 mほどになりました(写真11)。この木もどこからやってきたのかよくわかりません。森の近くには高木を確認していません。オナガシジミの食草として知られています。

写真11  オニグルミ Jaglans mandshuricaクルミクルミ属)の幼木(樹高 1.5 m、2022年10月3日)

写真12はカキノキ(カキノキ科)です。樹高 2 m前後の低木があちこちに生えています。

写真12  カキノキ Diospyros kakiカキノキ科カキノキ属)の低木(樹高 2 m、2022年10月3日)

写真13は、落葉低木のイボタノキ(モクセイ科)です。ブッシュの中に数本生えていて、気をつけないと踏みつけてしまいそうです。ウラゴマダラシジミやイボタガの食草として知られています。

写真13  イボタノキ Ligustrum obtusifolium(モクセイ科イボタノキ属)の幼木(樹高 1 m、2022年10月3日)

森の中には、イロハモミジ(ムクロジ科)の幼木がたくさん見つかりますが、なかなか育ちません(大部分が夏枯れしてしまいます)。写真14はその中でも何とか成長した株です。

写真14  イロハモミジ Acer palmatumムクロジ科カエデ属)の幼木(樹高 1 m、2022年10月3日)

昨年も紹介しましたが、森の中には落葉低木のヒメウツギアジサイ科)が生えていて、初夏になると白い可憐な花を咲かせます。少しずつ増えているようで、今日も1本みつかりました。

写真15 ヒメウツギ Deutzia gracilisアジサイ科ウツギ属)の幼木(2022年10月3日)

写真16は、つる性落葉低木のサルトリイバラ(別名:サンキライ)です。森の草地部分に数株見つけました。晩秋にかけて 1 cm弱の朱赤色の赤い実をつけます。タテハチョウ科ルリタテハの食草として知られています。

写真16  サルトリイバラ Smilax china(サルトリイバラ科サルトリイバラ属、旧分類ではユリ科シオデ属)(2022年10月3日)

これもつる性低木ですが、スイカズラスイカズラ科)です(写真17)。昨年も紹介しましたが、森の中のあちこちに生えていて、初夏には香水のようないい匂いがする白い花を咲かせます。森の中には、タテハチョウ科のイチモンジショウやアサマイチモンジがたくさん見られますが、これらの生育を支える貴重な食草です。

写真17  スイカズラ Lonicera japonicaスイカズラスイカズラ属)(2022年10月3日)

最後はムラサキシキブです(写真18)。シソ科の落葉低木で、日本各地の林などに自生しています。果実が紫色で美しいので観賞用に栽培されている木です。

写真18  ムラサキシキブ Callicarpa japonica(シソ科ムラサキシキブ属)の幼木(樹高 1 m、2022年10月3日)

以上、ゆるむしの森の低幼木のいくつかを紹介してきました。残りの種や新しく見つかったものについても随時紹介していきたいと思います。

              

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