カテゴリー:生き物観察
前の記事でゆるむしの森のカエルを紹介しました(→ゆるむしの森のカエル)。そこでも少し触れましたが、森の中では頻度は少ないものの「キュッ、キュッ」とアカガエルと思われる鳴き声が聞こえることがあります。写真に収める機会がこれまでありませんでしたが、今年は9月になって2度目撃することができました。
写真1は、東側の「混成の森」付近にいたニホンアカガエル(無尾目アカガエル科)です。ヤマアカガエルやタゴガエルと似ていますが、眼の後ろからまっすぐ伸びる背側線で識別できます。
↑写真1 ニホンアカガエル Rana japonica(2022年9月16日)
写真2は、西側のハンノキの森にいたアカガエルで、写真1の個体よりも大きめでした。一般に、体長はオスが40–60 mm、メスが 45–70 mmで、メスの方が大きいです。
↑写真1 ニホンアカガエル(2022年9月26日)
ニホンアカガエルは、本州、四国、九州に分布するカエルですが、年を追って全国的に個体数が減少しており、環境指標生物の一つとしてよく取り上げられる種です。埼玉県では絶滅危惧II類(VU)に指定されています [1]。類縁のヤマアカガエル、タゴガエルも、それぞれ準絶滅危惧(NT2)、情報不足種(DD)となっています。
ニホンアカガエルは、雑木林の林床、河川敷内の湿地、水田環境などに生息し、ほかのカエルに先がけて冬から初春にかけて湿地や水田の水たまりなどに産卵します。このような生態的特性から、湿地の乾燥化や産卵場所の消失などの生息環境の悪化の影響を受けやすく、埼玉県内でも生息地と個体数はごく限られています。
その意味で、ゆるむしの森で本種が見られることは非常に貴重なわけですが、ここでも目撃回数は限られています。ゆるむしの森は基本的に落葉広葉樹の森であり、ため池や隣接する小川や水田はあるものの、冬場は森全体の乾燥が激しく、アカガエルの生息環境としては厳しいものがあります。加えて、ヘビや野鳥などの捕食動物が豊富にいます。
このような状況ですが、森と周辺の環境保全を行ないながら、注意深く見守っていきたいと思います。
引用文献
[1] 埼玉県レッドデータブック動物編>掲載種の解説 (3) 両生類 https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/13reddatabook-ryouseirui.pdf
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