カテゴリー:生き物観察
今年の夏は例年と比べて暑い日が続いていますが、8月も下旬になると空や風が秋めいてきました。空の青さが秋を感じさせます。周辺の水田は稲穂が伸びて黄色になっています。9月になれば稲刈りが始まるでしょう。
このページでは、今年の8月にゆるむしの森と周辺で見られたチョウ種を紹介します。特に8月になって初めて見られた種や写真に撮ることができた種、あるいは個体数が増してきた種などを中心に記します。
写真1は、森の近くの民家の畑に咲いていた花に飛来したキアゲハです。普通種ですが、アゲハに比べると見かける頻度は少なく、今月になって初めて撮影できました。
↑写真1 キアゲハ Papilio machaon(2025年8月5日)
アゲハチョウ科のなかで比較的稀にしか見ることができないのがジャコウアゲハです(写真2、3)。今年は8月になって初めて見ることができました。今年は森の一角に生えている食草のウマノスズクサがだいぶ成長しましたが、多くの茎がことごとく折られていたので(成長した幼虫は茎を食べる性質がある)、おそらくそこで発生したものと推測されます。
↑写真2 ジャコウアゲハ Atrophaneura alcinous の♂(2023年8月18日)
ジャコウアゲハのメスは、淡い黄褐色をしていてとても綺麗で目立ちます(写真4)。
↑写真3 ジャコウアゲハの♀(2023年8月10日)
ゆるむしの森では春先から初夏にかけてモンシロチョウが大発生しますが、夏には激減します。代わりの8月から個体数を増してくるシロチョウ科の種がキチョウ(キタキチョウ)です(写真4)。秋になれば激増すると思います。
↑写真4 キタキチョウ Eurema mandarina(2023年8月5日)
写真5は常連のタテハチョウ、キタテハです。8月は個体数が減りますが、森全体に幼虫の食草であるカナムグラが生えていて、秋になると大発生します。
↑写真5 キタテハ Polygonia c-aureum(2023年8月5日)
コムラサキ亜科のタテハチョウの多くは8月(特に下旬)には見られなくなりますが、その中でもアカボシゴマダラだけは継続的に目撃することができます(写真6)。
↑写真6 アカボシゴマダラ Hestina a. assimilis(2023年8月5日)
イチモンジチョウ亜科のタテハチョウでは、アサマイチモンジが特徴的にこの森に生息していますが、イチモンジチョウも見ることができます。アサマイチモンジよりも個体数が少なく、8月になってやっと写真に撮ることができました(写真7)。
↑写真7 イチモンジチョウ Limenitis camilla(2023年8月25日)
写真8は常連のコミスジです。カラムシの葉上にとまっているところを撮りました。
↑写真8 コミスジ Neptis sappho(2023年8月25日)
8月に増えてくるジャノメチョウ亜科のチョウと言えばヒメジャノメです(写真9)。いま大発生しています。
↑写真9 ヒメジャノメ Mycalesis gotama(2023年8月18日)
ヒメジャノメと同じような発生パターンを示すジャノメチョウが、サトキマダラヒカゲです(写真10)。
↑写真10 サトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii(2023年8月25日)
8月になってやっと撮ることができたのが、新しく発生したムラサキシジミです(写真11)。越冬個体は4月に撮影しています(→4月上旬の蝶ーセセリチョウを中心に)。森内には食草であるブナ科常緑樹は少なく、まだ低木の状態ですが、隣接する神社境内にシラカシの高木が数本生えており、そこでは割と成虫の姿を見ることができます。
↑写真11 ムサラキシジミ Arhopala japonica(2023年8月25日)
今年初めて目撃できたのがムラサキツバメです(写真12、13)。南方系の種で温暖化とともに北上化していますが、この森でも見られるようになりました。
↑写真12 ムラサキツバメ Arhopala bazalus(2023年8月25日)
上記写真の個体は翅が破損していて、本種に特徴的な尾状突起が見られませんが、写真13の個体ではしっかりと確認できます。
↑写真13 ムラサキツバメ(2023年8月25日)
ゆるむしの森はセセリチョウ科のチョウが多いことで特徴付けられます。8月になって多くの種が個体数を増やしてきました。写真14はダイミョウセセリです。この種の目撃頻度はそれほど高くありません。
↑写真14 ダイミョウセセリ Daimio tethys(2023年8月18日)
いま最も個体数が多いセセリチョウの一つがイチモンジセセリです。いま森内で大繁殖しているジュズダマの葉上に止まった個体を撮りました(写真15)。
↑写真15 イチモンジセセリ Parnara guttata(2023年8月18日)
写真16はチャバネセセリです。この種もいま大発生しています。
↑写真16 チャバネセセリ Pelopidas mathias(2023年8月18日)
イチモンジセセリと並んで最も個体数が多いのがオオチャバネセセリです(写真17)。草むらを歩いていると次から次に飛び出してきます。
↑写真17 オオチャバネセセリ Zinaida pellucida(2023年8月18日)
上記のセセリチョウ種と比べると、ぐっと目撃回数が減るのがミヤマチャバネセセリです(写真18)。しかし、イチモンジセセリやオオチャバネセセリがあまりにも多いので、そのなかに埋もれて見逃している可能性もあります。春先には他種に先んじて発生するので、この時期には見つけやすいです(→4月上旬の蝶ーセセリチョウを中心に)。
↑写真18 ミヤマチャバネセセリ Pelopidas jansonis(2023年8月10日)
普通種なのになかなか見ることができないセセリチョウがキマダラセセリです(写真19)。8月になってやっと見ることができるようになりました。
↑写真19 キマダラセセリ Potanthus flavus(2023年8月25日)
上記の写真で示したチョウ以外で、今年の8月に見られた種は以下のとおりです。
アゲハチョウ科:アゲハチョウ、クロアゲハ、ナガサキアゲハ、アオスジアゲハ
シロチョウ科:モンシロチョウ、モンキチョウ
タテハチョウ科:コムラサキ、ゴマダラチョウ、アサマイチモンジ、ツマグロヒョウモン、ヒメウラナミジャノメ、ジャノメチョウ
シジミチョウ科:ウラギンシジミ、ルリシジミ、ツバメシジミ、ヤマトシジミ
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