ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

秋の下草−2

カテゴリー:樹木と草本

先のブログ記事で「ゆるむしの森」の秋の草本を紹介しました(→秋の下草)。この記事では秋の下草第二弾として、昨日(10月21日)観察した草本を中心に紹介します。

秋と言えば、お馴染みのセイタカアワダチソウです。キク科アキノキリンソウ属の多年草で、大人の背丈ほどに伸び、秋に黄色い花を咲かせます(写真1)。北アメリカ原産の外来種で、環境省が生態系被害防止外来種リストに載せている植物です。1株数万個の種子を飛ばすほか、根と茎からは他の植物の成長を阻害するアレロパシー物質を出すことによって、旺盛な繁殖力を示し、生息場所を広げていきます。

ゆるむしの森の草地部分でも、いまこの花が咲き誇っています。

写真1  セイタカアワダチソウ Solidago canadensisSolidago altissima)(2022年10月21日)

ヨシ(イネ科ヨシ属の多年草)もアレロパシーを有し、繁殖力も相当なものですが、ヨシの群生をものともせず、セイタカアワダチソウが浸食しています(写真2)。

写真2  ヨシ Phragmites australis の群落のなかに生えるセイタカアワダチソウ

ゆるむしの森では、随時セイタカアワダチソウの引き抜きを行なっており、昨年と比べると2割ほど繁殖域を減らすことができました。とはいえ、セイタカアワダチソウは昆虫の吸蜜植物として優れていますので、適宜調節・管理を行なっています。

セイタカアワダチソウと並んで浸食が著しいのがコセンダングサ(キク科)で、先のブログ記事でも紹介しました(→秋の下草)。このコセンダングサに混じって、ところどころにコシロノセンダグサ(別名:シロノセンダングサ、シロバナセンダングサ)が生えていました(写真3、4)。

写真3 コシロノセンダングサ Bidens pilosa var. minor(2022年10月21日)

コシロノセンダングサは、コセンダングサそっくりですが、黄色の頭花の周りに白色の舌状花が4–7個あることで識別できます。

写真4 コシロノセンダングサ

コセンダングサもコシロノセンダングサも侵入生物として、在来植物を駆逐する恐れのある植物ですが、セイタカアワダチソウ同様、昆虫の吸蜜植物として優れています。

数は少ないですが、アキノノゲシがところどころに咲いていました。キク科アキノノゲシ属の一年草または二年草で、名前のとおり秋に薄黄色の花を咲かせます(写真5)。

写真5  アキノノゲシ Lactuca indica の花(2022年10月21日)

写真6は葉の部分です。

写真6  アキノノゲシの葉

花が終わった後は下部が膨らみます(写真7)。種子はタンポポの綿毛を小さくしたような形をしています。

写真7  花が終わった後のアキノノゲシ

次からイネ科植物が続きます。初夏はチガヤ、真夏はジュズダマの繁殖が目立ちますが、この時期はヌカキビ(キビ属)と思われる植物が群生しています(写真8)。

写真8  ヌカキビ Panicum bisulcatum の群生(右側はジュズダマ、2022年10月21日)

細長い枝先には小さな穂がついています(写真9

写真9 ヌカキビの小穂

このあたりのエリアは、初夏は、セリ科のオラブジラミや同じイネ科のチガヤ (写真10)で覆われていました。

写真10 チガヤ Imperata cylindrica の穂(2022年5月12日)

イネ科植物で最も馴染みの深い草の一つと言えば、エノコログサエノコログサ属、通称ネコジャラシ)でしょう。イヌタデと混在していました(写真11

写真11  エノコログサ Setaria viridis イヌタデ Persicaria longiseta の混在(2022年10月21日)

こちらはムラサキエノコログサです(写真12)。花序が紫褐色に見える以外はエノコログサと同じです(種形容名も同じ)。

写真12 ムラサキエノコログサ Setaria viridis var. minor f. misera(2022年10月21日)

こちらも馴染み深いイネ科植物で、メヒシバ(メヒシバ属)です(写真13)。ところどころにオヒシバ(オヒシバ属)が混在しています。

写真13 メヒシバ Digitaria ciliaris(2022年10月21日)

写真14  メヒシバの穂

オヒシバはメヒシバよりも穂が太いことで識別できます。

写真15  オヒシバ Eleusine indica の穂

森の周囲の農道には、チカラシバチカラシバ属)がたくさん生えていました(写真16、17)。引き抜こうとしてもなかなか難しいイネで、名前の由来になっています。

写真16  チカラシバ Pennisetum alopecuroides(2022年10月21日)

写真17  チカラシバの穂

馴染みが深いイネ科植物の一つと言えばススキがありますが、ゆるむしの森の南側に隣接する水田と湿地の間にはススキ原のようなものがあります(写真18)。

写真18  ススキのような植物の草地(2022年10月21日)

以前からススキかなと思っていたのですが、近づいてよく見たら、ススキと違って穂の毛が長く、芒(のぎ)が見当たらないので、どうやら類縁種のオギのようです(写真19a, b)。

↑写真19a  オギの穂

写真19b  オギの穂を拡大したもの

イネ科の植物は、タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科やセセリチョウ科のチョウにとって食草となるものが多く、草刈りには最新の注意が必要です。観察路を覆ってしまう場合にはやむおえず刈り取る必要がありますが、時折切った草に幼虫がついていることがあり、随時レスキューしています。

上記したように、草地のあちこちでセイタカアワダチソウが繁茂していますが、ポツンポツンとガマ(ガマ科ガマ属)が顔を出しています。写真20は、まだセイタカアワダチソウが花を開く前の頃のガマです。

写真20  ガマ Typha latifolia の穂(2022年9月6日)

写真21はクズ(マメ科クズ属)です。草本ではありませんが(つる性落葉低木)、前の記事(→秋の下草)で紹介したカラスウリより繁殖力が強く、成長すると長さが 10 m ほどに達し、下草をまたたく間に覆ってしまいます。ゆるむしの森のなかにはまだ侵入していませんが、隣接する空き地に繁茂していました。

写真21  空き地を覆ったクズ Pueraria montana var. lobata(2022年10月21日)

最後に下草ではありませんが、ゆるむしの森を代表する樹木の一つ、アキニレ(ニレ科ニレ属)の今の様子です。若い果実がたくさん付いていました(写真22、23)。

写真22  アキニレ Ulmus parvifolia のいまの様子、張り出した下枝(2022年10月21日)

写真23  アキニレの果実

アキニレの一部の葉は紅葉し始めています。本格的な紅葉の時期にまた紹介したいと思います。

            

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