カテゴリー:樹木と草本
ウマノスズクサは Aristolochia debilis は、ウマノスズクサ科ウマノスズクサ属の多年生つる植物です。葉っぱは、トランプのスペードマークを引き延ばしたような形(葉先は丸い)をしていて可愛いですが、独特の臭いがあり、そして強い毒性成分(アリストロキア酸などのアルカロイド)を含んでいます。
分布は本州以南で、河川敷や道ばたなど日当たりのよいところによく生えています。公園や車道の舗道部分によくツツジなどが植えられていますが、その上から葉っぱが顔を出しているところもしばしば見かけます。伸びた地下茎から容易に新しい芽を出し、夏場は草刈りされてもすぐにまた生えてきます。
「ゆるむしの森」にも自生していて、少なくとも2カ所見ることができます。写真1は、農道と畑にの間にある土の部分に生えているウマノスズクサです。農家の方に定期的に草刈りされてしまいますが、しぶとく生えてきます。
写真1 農道脇に生えたウマノスズクサ(2022年10月11日)
写真2は、ゆるむしの森の草地部分に生えたウマノスズクサで、イネ科植物に絡み付いています。
写真2 草地に生えたウマノスズクサ(2022年10月11日)
地下茎が周辺に伸びて、新しい葉があちこちに出ています(写真3)。
写真3 新しく伸び始めたウマノスズクサ(2022年10月11日)
ウマノスズクサは、アゲハチョウ科のジャコウアゲハ Atrophaneura alcinous (Byasa alcinous) や外来種ホソオチョウ Sericinus montela の食草です。ウマノスズクサはアリストロキア酸を含むことで昆虫による食害から身を守っていますが、ジャコウアゲハの幼虫はこの毒性成分をせっせと食べて体内に蓄積し、今度は自らを小鳥などの天敵から身を守っています。ホソオチョウもおそらくそうでしょう。
ゆるむしの森では、ときどきジャコウアゲハが飛んでいる姿を見ることがありますが、ウマノスズクサに幼虫がいるところはまだ確認できていません。とはいえ、周辺にもあちこちにウマノスズクサが生えているので、このエリアで発生しているのは間違いないでしょう。
というわけで、以前別の場所で撮った写真をここで紹介します。写真4は、千葉県柏市内の公園で見つけたウマノズズクサに産みつけられたジャコウアゲハの卵です、
写真4 ウマスズクサの葉の裏に産みつけられたジャコウアゲハの卵(2019年6月4日、千葉県柏市)
別の葉っぱには幼虫が数匹がいました(写真5)。
写真5 ジャコウアゲハの幼虫(2019年6月4日、千葉県柏市)
写真5の日から4日後の幼虫が写真6です。ジャコウアゲハの幼虫は、茎を食いちぎって他の幼虫の移動を阻止する性質があり、ちょうどそのシーンが撮れました。
写真6 ウマノズズクサの茎を食いちぎる幼虫(2019年6月8日、千葉県柏市)
ちなみに、ゆるむしの森周辺ではまだホソオチョウを目撃したことはありません。埼玉県内では嵐山町や小川町に行くと比較的観察できる確率が高いです。
ゆるむしの森では、これからもウマノスズクサを注意深く見守っていきたいと思います。
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