ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

秋の下草

カテゴリー:樹木と草本

10月も中旬を過ぎ、寒暖の差が激しくなってきました。「ゆるむしの森」でも本格的な秋の様相を呈してきましたが、ここでは9月から10月中旬までに見られた主な下草について紹介します。

繁殖力が強いつる性植物の一つとしてカラスウリTrichosanthes cucumeroides(ウリ科)が知られていますが、ゆるむしの森でも毎年夏から秋にかけて繁茂します。9月初旬にはハンノキの森の下草をすっかり覆っていました(写真1)。

写真1  ハンノキの森に繁茂するカラスウリ(2022年9月16日)

9月下旬からはカラスウリの実が朱色に色付き始め、10月に入ると多くが鮮やかな赤色になりました(写真2)。

写真2  カラスウリの実(2022年10月3日)

この日は、カラスウリの上を数頭のキタテハが乱舞していました(写真3

写真3  キタテハがとまるカラスウリ(2022年10月3日)

夏から秋にかけてハンノキの森のなかや観察路を覆ってしまうのがイノコズチ(ヒカゲイノコズチ)Achyranthes bidentata var. japonicaです。ヒユ科イノコヅチ属の多年草で、「ヒカゲ」と名がついていますが、日当たりのよい道端や原野にも割とよく生えています。

ヒナタイノコズチと識別が難しいですが、葉が波打たないことと(写真4)、花穂が比較的長いこと(写真5)でヒカゲイノコズチと判断しています。

写真4  ハンノキの森のなかのヒカゲイノコズチ(2022年9月26日)

観察路を覆ってしまうので、適宜草刈りが必要です。引き抜こうとしても、根は地中深くに伸びているため、途中で切れてしまいます。

写真5  ハンノキの森のなかのヒカゲイノコズチ(2022年9月26日)

日当りがよい草地エリアにはイヌタデ Persicaria longiseta が咲き誇っています(写真6、7)。タデ科イヌタデ属の一年草、野原、道端などありとあらゆる場所に普通に見られる、いわゆる雑草ですが、ピンクの花は可憐です。春から秋まで見られますが、秋はよく目立ちます。

写真6  イヌタデ(2022年10月3日)

写真7  イヌタデ(2022年10月11日)

秋と言えば、黄色い花のイメージがあります。ゆるむしの森の草地を覆っているのが黄色い花のコセンダングサ Bidens pilosa var. pilosaです(写真8キク科センダングサ属の一年草です。

写真8  コセンダングサの群生(2022年10月11日)

センダングサなど類似種との識別・同定が難しいですが、舌状花がないことで見分けられます。コセンダングサという名がついていますが、センダングサよりも小さいということはないです。大人の身長くらいに伸びたものもあります。

コセンダングサの花には、たくさんのチョウやハチ、アブの仲間が訪れます。ゆるむしの森で圧倒的に見られるのは、セセリチョウ科、シロチョウ科、花蜜食性のタテハチョウ科のチョウです(写真9、10)。

写真9  コセンダングサで吸蜜するキタテハ(2022年10月11日)

写真10  コセンダングサで吸蜜するチャバネセセリ(2022年10月11日)

コセンダングサの先端に細い棘があり、衣服などに付きやすく、いわゆる「ひっつき虫」と呼ばれるものの一つです。根には強力なアレロパシー作用が確認されており、ほかの植物を駆逐しながら拡大していく性質があります。帰化植物外来生物)の一つであり、環境省によって生態系被害防止外来種に指定されていましたが、今年になって外されました。

数はそれほど多くありませんが、ノハラアザミ Cirsium oligophyllum も咲いています(写真11)。キク科アザミ属の多年草です。 これにもチョウやアチ、アブの仲間がたくさん訪れていました。

写真11  ノハラアザミ(2022年9月26日)

写真12、13はミズヒキ Persicaria filiformis です。タデ科イヌタデ属の草本です。開花期は8〜11月で、いまが見頃です。花は総状花序で、上半分が赤色、下半分が白色の小花が枝上に並んで咲きます。

写真12  ミズヒキ(2022年9月6日)

写真13  ミズヒキ(2022年10月11日)

これも数はそれほど多くはありませんが、農道脇や畑の近くでシロザ Chenopodium album ちらほら見られます。ヒユ科アカザ科)アカザ属の一年草です。花期は9–10月で、花は淡い緑色、黄緑色をしています。この日はウラナミシジミがとまっていました(写真14)。

写真14  ウラナミシジミが訪れたシロザ(2022年10月3日)

夏にはあちこちに青々と茂っていたジュズダマ Coix lacryma-jobi(イネ科ジュズダマ属)ですが、この時期葉が枯れ気味になってきました。秋を思わせます(写真15)。まれにですが、クロコノマチョウの幼虫が群生しているのが見つかります、

写真15  ジュズダマ(2022年10月3日)

次回も秋の下草を紹介したいと思います。

              

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