ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、チョウ類を中心とする調査記録、管理・運営活動を中心とする情報ブログです

ハギ類

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

ハギは、マメ科ハギ属の総称で、ハギという和名の樹種はありません。アジア、北米東部、オーストラリアなどに分布する落葉低木であり、日本ではハギ属の 8 種の野生種が知られています。秋の七草の一つで、古くから鑑賞花として親しまれています。多くの園芸品種が創出されており、なかでも、最も広く栽培されてるのはミヤギノハギです。ゆるむしの森では、野生種の代表であるヤマハギが見られます。

       

ヤマハギ Lespedeza bicolorマメ科ハギ属)    🟠食樹とする(葉を食べる)幼虫のチョウ種:キチョウキタキチョウシロチョウ科)、ミスジタテハチョウ科)、トラフシジミウラナミシジミツバメシジミシジミチョウ科

北海道、本州、四国、九州の山地に自生する落葉広葉樹で、高さ 1~3 m の低木です。明確な主幹はなく、多数の枝が分岐しながら伸びていき、先端は下垂します。葉は3出複葉で互生し、葉縁は全縁です。先端はまるいか少し凹み、先端の中央は針が見られます。小葉の表面は緑色、裏面は淡白緑色で 0.5~0.7 mm の伏した毛があります。若い枝は淡褐色で短毛が見られます。花期は 7~9 月です。新枝の先端部の葉腋から葉より長い総状花序を出し、長さ 1.5 cm 程度で紅紫色の蝶形花をつけます。果実は豆果で、長さ 0.5~0.7 cm の扁平な楕円形をしています。秋の盛りに褐色に熟します。

ヤマハギの花には、多種多様のチョウ類やハチ類が吸蜜に訪れます。キチョウはもとより、シジミチョウやセセリチョウの仲間が目立ちます。

ヤマハギへの産卵で最も目立つのはキチョウです。長さ 1 mm に満たない白いレンズ状の卵を、若葉に一個ずつ産みつけます。幼虫たちの食欲は旺盛で、一株の葉が食い尽くされて丸裸になるほどです。枝には蛹(帯蛹)が連なる光景が見られます。

           

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ネムノキ(ネム)

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ネムノキ(ネムAlbizia julibrissinマメ科ネムノキ属) 🟠食樹とする(葉を食べる)幼虫のチョウ種:キチョウ(キタキチョウシロチョウ科)、コミスジタテハチョウ科

マメ科の落葉広葉樹で、高さ 5~15 m になります。本州、四国、九州、沖縄の山地、林縁、原野、河川敷などの日当たりのよい場所に自生します。公園の植栽にも利用されます。和名のネムノキ(合歓木)は「眠る木」を意味し、櫛の歯のような葉が、夜になると合わさって閉じて眠るように見えることに由来します。葉はマメ科特有の羽状複葉です。長さ 20~30 cm の 2 回偶数羽状複葉が互生(ほぼ対生)し、各羽片に 15~30 対の小葉がつきます。幹はまっすぐ伸びるか、または斜上に伸びます。樹皮は灰色から灰褐色で平滑状であり、皮目が多いです。

花期は 6~7 月で、枝先に淡紅色の花が 10~20 個頭状に集まって咲きます。

果実はいわゆるマメの形をした豆果です。長さ 10~15mで扁平な長楕円形で、秋の中頃から晩秋にかけて褐色に熟し、裂開します。

ネムノキは、キチョウ(キタキチョウ)やコミスジの幼虫の食草になります。ゆるむしの森では、ハギ類と並んでキチョウが好む木で、夏から秋にかけて大発生します。蛹は 2 本の糸で体を支える「帯蛹型」で、アゲハチョウと同じですが、細い小枝に横になったり、逆さまになったり、色々な姿を見ることができます。

        

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ハリエンジュ(ニセアカシア)

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

ハリエンジュ Robinia pseudoacaciaマメ科ハリエンジュ属) 🟠食樹とする(葉や蕾を食べる)幼虫のチョウ種:モンキチョウキタキチョウシロチョウ科)、トラフシジミ、ルリシジミシジミチョウ科

マメ科ハリエンジュ属の落葉高木です。高さ 15–20 m になります。和名の由来ですが、別種であるエンジュに似た葉をもち、枝の付け根に針棘があることからこの名があります。別名ニセアカシアと呼ばれますが、これは、アカシアには似ているがアカシア属ではない、というのが理由です。植物学上はハリエンジュの名称が使われます。

樹皮は淡褐色、灰褐色で、縦に深い割れ目が入ります。葉はきょ歯なし、楕円形、長さ 12–25 cm、幅 4–7 m の奇数羽状複葉で、互生します。小葉は 3–11 対でほぼ対生です。見るからにマメ科という葉並びで、同定は容易です。

花期は 5–6 月で、葉腋から長さ 10-15 cm の総状花序を下垂した、白い蝶形花を多数つけます。

ハリエンジュは北米中東部原産ですが、今では北海道、本州、四国、九州、沖縄の全国で植栽としても利用されています。しかし、アレロパシー作用を有し、在来樹種と競合しながら駆逐する性質があります。そのため、日本の侵略的外来種ワースト 100 として、また、外来生物法で要注意外来生物に指定されています。非常に繁殖力が強く、ゆるむしの森でもどんどん広がっていくので、適宜伐採管理を行なっています。

このように厄介な外来種ではありますが、上記のように複数のチョウ種の幼虫の食草になっていて、その意味では貴重です。特にルリシジミの産卵はこの樹木でよく見られ、この森での主要な発生源の一つになっています。さらに、稀ではありますが、トラフシジミがこの樹木の周辺で見られることから、本種の発生を支えている可能性があります。

          

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6月の下草花とチョウ−2

前のブログ記事(6月の下草花とチョウ)で、6 月にシロツメクサムラサキツメクサアカツメクサ)などの下草の花で吸蜜するチョウを紹介しました。ここでは、追加で写真に収めることができた種や個体を載せます。

まずはモンキチョウです(写真1)。キチョウやモンシロチョウよりも飛び方が速く、花で吸蜜するシーンをなかなかタイミングよく捉えらませんでしたが、やっと一枚撮ることができました。

↑写真1  ムラサキツメクサで吸蜜するモンキチョウ Colias erate(2024.06.29)

次はヒメアカタテハです(写真2)。前回はシロツメクサにとまる個体だったので、今回はムラサキツメクサを訪れた個体を載せました。

↑写真2. ムラサキツメクサにとまるヒメアカタテハ Vanessa cardui(2024.06.29)

写真 3 はミヤマチャバネセセリです。当日の観察では、複数の個体がムラサキツメクサで盛んに吸蜜してところを確認できました。後翅裏側の中央にある目立つ白点が、同定のポイントになります。

↑写真3上下  ムラサキツメクサで吸蜜するミヤマチャバネセセリ Pelopidas jansonis(2024.06.29)

ミヤマチャバネセセリは、名に「ミヤマ」と付いていますが、平地でも見られる普通のセセリチョウ種です。しかし、最近では全国的に個体数が激減しており、関東でも生息場所は局所的になりつつあります。県や自治体によっては、凖絶滅危惧種に指定されています。ゆるむしの森でも個体数は少ないですが、主な食草であるオギチガヤが割と豊富にあり、減少している印象はないです。

チャバネセセリもムラサキツメクサを訪れていました(写真4)。

↑写真4  ムラサキツメクサで吸蜜するチャバネセセリ Pelopidas mathias(2024.06.29)

写真 5 は、ササの葉に付いた鳥の糞らしきものを吸っていたチャバネセセリです。

↑写真5  ササ上の遺物(鳥の糞?)を吸うチャバネセセ(2024.06.29)

前回もツバメシジミを紹介しましたが、今回はムラサキツメクサの上で交尾する個体を載せます(写真5)。

↑写真5  ムラサキツメクサの上で交尾するツバメシジミ Everes argiades(2024.06.29)

最後は、シロツメクサで吸蜜するツメクサガです(写真6)。ムラサキツメクサシロツメクサを頻繁に訪れるヤガ科、タバコガ亜科の種です。後翅の裏側中央に黒い斑点があるはずですが、この個体にはありませんでした。

↑写真6  シロツメクサで吸蜜するツメクサガ Heliothis maritima(2024.06.29)

          

カテゴリー:生き物観察

6月の下草花とチョウ

カテゴリー:生き物観察

ゆるむしの森では、春から初夏にかけていろいろな花が咲きます。5月からはノイバラ、スイカズラ、ウツギ、イボタノキ、ネズミモチ、クリ、アカメガシワなどの樹木の白い花が順に咲きますが、6月に入るとこれらは衰えていき、6月下旬にもなるともう見られなくなります。この時期になると、チョウの吸蜜源はもっぱら下草の花です。特にヒメジョオンシロツメクサムラサキツメクサアカツメクサ)には、多種多様のチョウが蜜を求めてやってきます。6 月に写真に収めることができたチョウを以下に紹介します。

写真 1 は、シロツメクサで吸蜜するモンシロチョウです。今年は特にモンシロチョウが大発生しているようで、ゆるむしの森全体および周囲の農道、畑に、例年以上に乱舞しています。この時期は 2 化目の個体です。

↑写真1  シロツメクサで吸蜜するモンシロチョウ Pieris rapae(2024.06.22)

シロチョウ科では、他にモンキチョウシロツメクサによく訪れていますが、なかなかチャッターチャンスがありません。

タテハチョウの仲間では、ヒメアカタテハが比較的よく花にとまっています(写真2)。

↑写真2  シロツメクサで吸蜜するヒメアカタテハ Vanessa cardui(2024.06.20)

草地のヒメジョオンには、ツマグロヒョウモンをよく見かけます(写真3)。

↑写真3  ヒメジョオンで吸蜜するツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius(2024.06.22)

シジミチョウの仲間は、下草の花が大好きで花の周りを乱舞しています。写真 4 ヒメジョオンを訪れたベニシジミです。この時期は 2 化目の個体です。

↑写真4  ヒメジョオンにとまるベニシジミ(2024.06.17)

次はシロツメクサで吸蜜するベニシジミです(写真5)。

↑写真5  シロツメクサで吸蜜するベニシジミ(2024.06.22)

トラフシジミはこの森では稀にしか見ない種ですが、この日はシロツメクサで吸蜜していました(写真6)。この個体は夏型で、春型には見られる白いストライプが薄茶色になって見にくくなっています。

↑写真6  シロツメクサで吸蜜するトラフシジミ(2024.06.22)

写真 7 はツバメシジミです。この個体はメスで、シロツメクサで産卵していました。

↑写真7  シロツメクサを訪れたツバメシジミ(2024.06.22)

ツバメシジミとともにシロツメクサの周りを乱舞しているのがヤマトシジミです(写真8)。この小さなチョウを見ると、いつも心が和みます。

↑写真8  シロツメクサにとまるヤマトシジミ(2024.06.22)

ムラサキツメクサが好きなチョウがセセリチョウです。この時期は、オオチャバネセセリがよく吸蜜しています(写真9)。

↑写真9  ムラサキツメクサで吸蜜するオオチャバネセセリ(2024.06.17)

6 月はオオチャバネセセリよりも少ないですが、イチモンジセセリも時々見かけます(写真10)。

↑写真10  ムラサキツメクサで吸蜜するイチモンジセセリ(2024.06.05)

このほかに、チャバネセセリとミヤマチャバネセセリが吸蜜する場面を見かけますが、今年はまだ写真に撮れていません。

農道沿いにはこれらの花がたくさん咲いていますが、定期的に草刈りがなされているので、その間の貴重なチョウとの出会いです。チョウのトランセクト調査を定期的に行っていますが、草刈りの後はいつも記録する個体数が減るのが残念です。

          

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ムラサキツメクサ(アカツメクサ)

カテゴリー:チョウの食草と食樹

       

ムラサキツメクサ Trifolium pratenseマメ科シャクジソウ属) 🟠食草とする幼虫のチョウ種:モンキチョウシロチョウ科)、ミスジタテハチョウ科)、ツバメシジミシジミチョウ科

マメ科多年草で、別名アカツメクサとも称されます。一般には、赤クローバー、レッドクローバーとも呼ばれることもあります。「ツメクサ」の名は、昔ヨーロッパから輸入されたガラス製品などの詰め物(緩衝材)に使われていたのがその由来とされています。 茎は直立して高さ 20–50 cm 程度になり、初夏に紅色の丸い花を咲かせます。日本では牧草や緑肥として利用されていましたが、今では全国に野生化しています。ゆるむしの森では、周囲の農道に沿って群生します。

小葉はふつう 3 個で、長さ 2-5 cm の楕円形をしています。葉の中心に V 字形の白い斑紋があるものが多いです。花期は 5–9 月で、長さ 1–1.5 cm の紅色の花が球状に集まって咲きます。

マメ科植物を好むモンキチョウ、コミスジ、ツバメシジミの幼虫の食草になり、特にツバメシジミの産卵シーンはよく見ることができます。また、多食性のガ(ナシケンモンなど)の幼虫の食草にもなります。花には吸蜜のために、シロチョウ科、シジミチョウ科、セセリチョウ科のチョウがよく訪れます。

ムラサキツメクサにはマルカメムシが集まっているシーンをしばしば目撃します。マルカメムシは、ダイズなど豆類の食害虫と知られているカメムシの仲間です。おそらく、ムラサキツメクサも産卵の対象としていると思われます。

興味深いことに、マルカメムシの豆類を食べる性質は、昆虫自身の遺伝子ではなく、腸内の共生細菌によって決まっているようです。メス成虫は、食草に産卵するときに、共生細菌を含んだ分泌物をいっしょに産みつけますが、卵から孵化した幼虫はその分泌物に口吻を差し込んで、共生細菌を獲得するとされています。

       

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アカメガシワ

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アカメガシワ Mallotus japonicusトウダイグサ科アカメガシワ属) 🟠食樹とする(葉を食べる)幼虫のチョウ種:ルリシジミシジミチョウ科

落葉高木また落葉低木の広葉樹で、高さ 3–15 m になります。和名の由来は、春から初夏の若葉が紅色であること、そして葉がカシワの葉のように大きくなることからといわれています。また細枝や葉柄も赤褐色をしています。またヒサギ(楸)とも呼ばれます。葉は互生し、幅 5–14 cm の卵形~広卵形で、葉先は尖ります、葉縁は全縁で、やや波打ちます。

本州(東北中西部以南)、四国、九州、沖縄 に広く分布し、林縁や荒地など明るいところに自生します。あまり環境条件を選ばず、成長が速いので、森の形成のスターターになる木の一つですが、やたら生えてくるので、一般には駆除対象の雑木とされているようです。ゆるむしの森でも至る所に生えてくるので、適宜伐採管理が必要になるくらいです。

樹皮は若木では灰褐色、成木では暗灰色で縦に細いわ割れ目ができます。

雌雄異株で、花期は 6–7 月です。枝先に淡黄色の長さ 7–20 cm の円錐花序を出します。果実は直径 1 cm 弱の三角状偏球形で、表面にやわらかい棘状の突起が密生し、秋に褐色に熟します。

不分裂葉と分裂葉があります。低幼木では浅く3裂することが多く、しばしば波状のきょ歯が見られます。成木では、上記写真のように、不分裂葉で全縁の場合が多いです。晩秋には黄色に「紅葉」します。

アカメガシワは、ルリシジミの幼虫の食草になる樹木です。ルリシジミは、マメ科、ミズキ科、バラ科など、様々な植物の花やつぼみを食べるチョウで、ゆるむしの森ではもっぱらハリエンジュで発生しているようですが、時々アカメガシワに産卵するシーンも目撃できます。

また、アカメガシワの葉の基部には、花外蜜腺があり、多数のアリが吸蜜に訪れているところが観察できます。花外蜜腺の役割としては、アリを誘引することによって、ガの幼虫の食害を防いでいることと考えられています。

       

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