ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

セセリチョウ科

2023.11.04更新  ゆるむしの森のチョウ

ゆるむしの森に生息するセセリチョウ科 Hesperiidae のチョウは、これまで8種を確認しています。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                   

チャマダラセセリ亜科 Pyrginae

ダイミョウセセリ Daimio tethys 

●前翅長:16–22 mm  ●時期:4–10月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:●幼虫の食草:ヤマノイモ科(ヤマノイモ、ツクネイモ、オニドコロ、エドドコロ、ニガカシュウなど)

備考:春から秋まで見られる普通種ですが、目撃頻度はやや低いです。5月に見られるセセリチョウと言えば本種です。

                   

セセリチョウ亜科 Hesperiinae

イチモンジセセリ Parnara guttata

●前翅長:15–21 mm  ●時期:6月–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:イネ科(イネ、エノコログサジュズダマススキ、チガヤ、メダケなど)、カヤツリグサ科(シラスゲ、ミヤマシラスゲ)

備考:最も個体数が多いセセリチョウ種の一つですが、春には見られず、5月下旬頃から姿を現します。秋が最盛期です。

                   

チャバネセセリ Pelopidas mathias

●前翅長:14–21 mm  ●時期:6–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  幼虫の食草:イネ科(イネ、ススキ、ジュズダマ、チガヤ、メダケ、メヒシバなど)、カヤツリグサ科(ハマスゲ、ヒメクグ)

備考:イチモンジセセリと同様に普通種ですが、春には見られず、6月から現れるようになります。秋には大量に発生します。

                   

オオチャバネセセリ Zinaida pellucida

●前翅長:15–21 mm  ●時期:6–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+●埼玉県 (2018) 准絶滅危惧2型(NT2)[1●幼虫の食草:イネ科(イネ、エノコログサ、クマザサ、ススキ、チガヤ、ミヤコザサ、メダケなど)

備考:全国的に個体数を減らし続けているセセリチョウ種で、埼玉県でも准絶滅危惧2型(NT2)に指定されています。この森では、6月半ば頃から発生し、イチモンジセセリ、チャバネセセリと同様に夏から秋にかけて比較的多く見られます。6–7月にはむしろ本種が最も個体数が多くなります。

                   

コチャバネセセリ Praethoressa variaThoressa varia

●前翅長:14–18 mm  ●時期:4–9月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+  ●埼玉県 (2018) 准絶滅危惧2型(NT2)[1●幼虫の食草:クマザサ、ミヤコザサ、メダケなどササ・タケ類

備考:個体数を減らしているセセリチョウ種で、埼玉県では準絶滅危惧種(NT2)になっています。セセリチョウの仲間では比較的早い時期(4月)から発生するので、その時期には発見しやすいですが、目撃頻度は低いです。

                   

ミヤマチャバネセセリ Pelopidas jansonis

●前翅長:16–21 mm  ●時期:4–9月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:イネ科(ススキ、オギ、チガヤ、ヨシ、トダシバなど)

備考:他のセセリチョウ種より、早く発生し、4月と初秋によく見られます。埼玉県内での分布は局地的で個体数は多くないようです。この森でも目撃回数は少なめです。

                   

キマダラセセリ Potanthus flavus

●前翅長:13–17 mm  ●時期:5–10月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:●幼虫の食草:イネ科(アシボソ、イヌビエ、クマザサ、チヂミザサ、ススキ、メヒシバ、メダケなど)

備考:普通種ですが、どういうわけかこの森では目撃頻度が少ないです。

                   

チョウセンキボシセセリ亜科 Heteropterinae

ギンイチモンジセセリ Leptalina unicolor

●前翅長:15–21 mm  ●時期:4–5月、7–8月 ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+  環境省 (2015) 準絶滅危惧種(NT)、埼玉県 (2018) 准絶滅危惧2型(NT2)[1●幼虫の食草:イネ科(ススキ、オギ、チガヤ、ヨシなど)

備考:ミヤマチャバネセセリ同様、時期的には早く発生し、4月に最もよく見られます。環境省 (2015) 準絶滅危惧種(NT)に指定されていますが、この森では割と多く観察されます。他のセセリチョウの多くが猛スピードで飛ぶのとは対照的に、草地をヒラヒラとか弱く飛ぶ姿が特徴的です。

                   

引用文献

[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018  (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf

                   

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

シジミチョウ科

2023.11.23更新  ゆるむしの森のチョウ

「ゆるむしの森」に生息するシジミチョウ科 Lycaenidaeのチョウは、これまで8種を確認しています。ここでは、撮影できた8種の写真を載せます。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                

ウラギンシジミ亜科 Curetinae

ウラギンシジミ Curetis acuta

●前翅長:20-27 mm  ●時期:3–4月(越冬型)、6–11月  ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:マメ科(クズ、フジなど)の花や蕾

備考:周年見られるシジミチョウ種ですが、目撃頻度はやや少ないです。成虫で越冬するので冬の暖かい日にも見かけることがあります。

                

シジミチョウ亜科 Lycaeninae

ベニシジミ Lycaena phlaeas

●前翅長:14-19 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:スイバ、ギシギシ、ノダイオウなどのタデ科植物

最も普通に見られるシジミチョウ種の一つですが、下に示すツバメシジミヤマトシジミと比べると見かける頻度は少ないです。

                

ムラサキシジミ Arhopala japonica

●前翅長:16-22 mm  ●時期:3–4月(越冬型)、6–10月  ●越冬態:成虫  ●目撃頻度: ●幼虫の食草:アラカシ、シラカシ、イチイガシ、スダジイなどのブナ科樹木

備考:普通種ですが、他のシジミチョウに比べると、目撃できる機会は少ないです。森内における幼虫の食樹であるアラカシやシラカシの少なさに帰因すると考えられますが、隣接する神社境内にはシラカシの高木があり、より多く観察することができます。

                

ミドリシジミ Neozephyrus japonicus

●前翅長:18-23 mm  ●時期:6–7月  ●越冬態:卵  ●目撃頻度:+  ●埼玉県 (2018) 準絶滅危惧1型(NT1)[1●幼虫の食草:ハンノキヤマハンノキ、ミヤマハンノキなどのカバノキ科落葉樹

備考:埼玉県の県蝶に指定されている種で、この森でこれまで発生を確認している唯一のゼフィルス種です。発生時期である6月には割と見る機会が多いです。

ミドリシジミの幼虫(2023.04.19)

ミドリシジミの幼虫(2022.04.23)

                

ルリシジミ Celastrina argiolus

●前翅長:13-19 mm  ●時期:3–10月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度: ●幼虫の食草:マメ科(クズ、シロツメクサミヤコグサ、ハリエンジュなど)、バラ科(スモモ、ナナカマド、ノイバラなど)、タデ科(イタドリ、ギシギシ、スイバなど)、ミカン科(キハダ)などの花

備考:普通種ですが、下記のツバメシジミヤマトシジミの類似種と比べると、個体数は少ないです。ツバメシジミヤマトシジミが地面近くや草本の上を飛び交うのに対し、本種は森の中の陽当たりのよい樹木の周りを飛ぶことが多く、地面で吸水する姿もよく見かけます。

                

ツバメシジミ Everes argiades

●前翅長:10-18 mm  ●時期:4–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:アカツメクサカラスノエンドウ、クズ、シロツメクサ、フジ、ミヤコグサなど、多くのマメ科植物

備考:この森では、最も個体数が多いシジミチョウの一つです。地面近くや草本の上をチラチラと飛んでいますが、止まっているところを見ないとヤマトシジミと区別しにくいです。

                

ウラナミシジミ Lampides boeticus

●前翅長:13-19 mm  ●時期:8–11月  ●越冬態:不定  ●目撃頻度:+++  ●幼虫の食草:アズキ、エンドウ、カラスノエンドウ、クズ、ダイズ、ミヤコグサラッカセイなど、多くのマメ科植物

備考:夏から関東に向けて北上化し、秋に大発生しますが、冬越しはできず、翌年また北上化を繰り返すというシジミチョウです。地球温暖化とともに見かける時期が早くなっているような気がします。

                

ヤマトシジミ Zizeeria maha

●前翅長:10-16 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+++  ●幼虫の食草:カタバミ科植物(カタバミ、ウスアカカタバミムラサキカタバミなど)

備考:最も普通のシジミチョウですが、春の時期にはツバメシジミよりも個体数がやや少ないです。

                

上記8種の他に、トラフシジミとムラサキツバメ(下の写真)を年複数回目撃しています(おそらく生息か?)。

ムラサキツバメ Arhopala bazalus

そのほかにウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミ、ゴイシシジミを目撃しており、生息しているかどうかを調査中です。

                

引用文献

[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018  (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf

                

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

タテハチョウ科ージャノメチョウ亜科・テングチョウ亜科

2023.11.02更新  ゆるむしの森のチョウ

「ゆるむしの森」においては、ジャノメチョウ亜科のチョウ6種の生息を確認しています。テングチョウ亜科は国内産として1種のみが知られていますが、ゆるむしの森でも稀ですが目撃できます。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                   

ジャノメチョウ亜科 Satyrinae 

ヒメジャノメ Mycalesis gotama

●前翅長:19–30 mm  ●時期:5–11月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+++  ●幼虫の食草:イネ科(イネ、エノコログサジュズダマ、ススキ、チガヤ、ミヤコザサ、チヂミザサメダケなど)、カヤツリグサ科(カヤツリグサ、シラスゲ、ヒメスゲなど)

備考:普通種で林間でよく見られます。裏翅のジャノメ模様にもけっこう個体変化があります。ゆるむしの森で最もよく見られるジャノメチョウ種です。

                   

ヒメウラナミジャノメ Ypthima argus

●前翅長:18–25 mm  ●時期:5–9月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:チヂミザサ、ススキ、イヌビエ、スズメノカタビラ、クサヨシなどのイネ科植物

備考:普通種ですが、ゆるむしの森では目撃頻度の少ないジャノメチョウです。年を追って個体数が増えています。

                 

ジャノメチョウ Minois dryas

●前翅長:29–42 mm  ●時期:6月下旬–9月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:(+)  ●埼玉県 (2018) 准絶滅危惧2型(NT2[1●幼虫の食草:イネ科(ススキ、コメススキ、カモジグサ、スズメノカタビラ、クサヨシなど)やカヤツリグサ科(ヒカゲスゲ、ショウジョウズゲなど)の植物

備考:毎年1〜2回の目撃のみで偶産と考えていましたが、2023年6月下旬から頻繁に見られるようになり、生息リストに加えました。

                 

ヒカゲチョウ(ナミヒカゲ)Lethe sicelis

●前翅長:19–30 mm  ●時期:5–10月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:イネ科(クマザサ、ススキ、ミヤコザサ、メダケなど)

備考:普通種ですが、他のジャノメチョウ種と比べると発生時期はやや遅く、5月下旬から見られるようになります。6月半ば過ぎると一時期最も多いジャノメチョウになります。

                   

サトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii

●前翅長:28–39 mm  ●時期:5–9月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:イネ科(クマザサ、ミヤコザサ、メダケモウソウチクなど)

備考:林間を飛ぶ性質のあるジャノメチョウのなかでも、本種は黄褐色の印象が強いので、飛翔中でも見当をつけることができます。面白いことに、上記のヒカゲチョウとは時期的に交互に発生するので、両種が混在する時期は短いです。類縁種のヤマキマダラヒカゲとの識別は難しいですが、ヤマキマダラヒカゲはこの地域には生息しません。

                   

クロコノマチョウ Melanitis phedima

●前翅長:35–45 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:(+)  ●幼虫の食草:イネ科(イヌビエ、エノコログサジュズダマ、チガヤ、ミヤコザサ、チヂミザサメダケ、メヒシバなど)

備考:南方系の種で、埼玉東部ではお隣の千葉県や東京都と比べても目撃は限られます。ゆるむしの森でも目撃回数は少ないですが、とくに秋になると林の中から突然ヒラヒラと飛び出してきて驚かしてくれます。

                   

テングチョウ亜科 Libytheinae

テングチョウ Libythea lepita  英: Nettle-tree butterfly

●前翅長:20-29 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:(+)  ●幼虫の食草:エノキ、エゾエノキ(アサ科)、ソメイヨシノヤマザクラバラ科

備考:この森では滅多にお目にかかれない種ですが、毎年複数回目撃できますし、周辺の屋敷林の周囲や神社境内の森でも時々見かけますので、確実に生息していると思われます。

           

引用文献

[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018  (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf

                   

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

タテハチョウ科ーイチモンジチョウ亜科・ドクチョウ亜科

2023.11.23更新  ゆるむしの森のチョウ

「ゆるむしの森」には、イチモンジチョウ亜科のチョウ3種が生息しています。ドクチョウ亜科のチョウは1種を確認しています(ほかに偶発的飛来の可能性のある2種)。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                   

イチモンジチョウ亜科 Limenitidinae

イチモンジチョウ Limenitis camilla

●前翅長:25–36 mm  ●時期:5–10月 ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:●幼虫の食草:スイカズラ、ウグイスカズラ、タニウツギハコネウツギ、ヤブウツギなどのスイカズラ科植物

備考:イチモンジチョウ亜科のなかでは、全国的にコミスジと並んで普通に見られる種ですが、ゆるむしの森での目撃頻度は下記のアサマイチモンジより低いです。飛んでいる時には、アサマイチモンジとの識別は困難で、同定には止まっている状態で前翅の白紋をよく観察する必要があります。

                   

アサマイチモンジ Limenitis glorifica

●前翅長:28–38 mm  ●時期:5–10月 ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●埼玉県 (2018) 准絶滅危惧2型(NT2)[1●幼虫の食草:スイカズラタニウツギハコネウツギ、ヤブウツギなどのスイカズラ科植物

備考:日本では本州にしかいない種で、埼玉県内の分布も局地的ですが、分布地での個体数は割と多いです。この森でもイチモンジチョウよりも多く見られます。

                   

ミスジ Neptis sappho

●前翅長:24–30 mm  ●時期:4–10月  ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:クズ、ナンテンハギ、ハギ、ハリエンジュ、フジなどのマメ科植物

備考:イチモンジチョウ亜科のなかでは、最も普通の種です。

                   

ドクチョウ亜科 Heliconiinae

ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius

●前翅長:28–38 mm  ●時期:4–11月 ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:野生のスミレ類(スミレ、シロバナスミレ、タチツボスミレ、ヒメスミレなど)のほか、スミレ属の園芸種(パンジービオラなど)

備考:南方系のチョウであり、数十年前には関東にはいませんでしたが、年を追って北上化し、分布域を広げています。今では最も普通のヒョウモンチョウの種になりました。地球温暖化の影響に加え、ビオラなどの園芸植物の広がりも分布拡大に拍車をかけていると考えられます。

                   

ミドリヒョウモン Argynnis paphia

これまで2021年の秋、2022年の秋にそれぞれ一回ずつ目撃しています。埼玉県東部ではほとんど見られない種ですが、生息の可能性もあります。

                   

メスグロヒョウモン Damora sagana

2022年9月、ゆるむしの森の近くの樹木で一回のみ目撃(偶発的飛来か、生息しているのかを調査中)

                   

引用文献

[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018  (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf

                   

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

タテハチョウ科ータテハチョウ亜科・コムラサキ亜科

2023.10.13更新  ゆるむしの森のチョウ

「ゆるむしの森」には、沢山のタテハチョウ科 Nymphalidae の仲間が生息しています。これまで生息を確認しているのは19種です。ここではタテハチョウ亜科5種、コムラサキ亜科3種の写真を載せます。目撃できる個体数(目撃頻度)については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                   

タテハチョウ亜科 Nymphalinae

キタテハ Polygonia c-aureum (Nymphalis c-aureum) 英:Asian Comma

●前翅長:25–35 mm  ●時期:3–4月(越冬型)、5–11月(年4回発生) ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:+++  ●幼虫の食草:アサ、カナムグラ、カラハナソウなどのアサ科草本、アカソ、コソバイラクサイラクサ科)

備考:ゆるむしの森では最も個体数が多いタテハチョウの一つです。一年中見られる種ですが、特にカナムグラの繁殖に伴って秋に大発生します。夏型の黄色に比べて秋型は朱色が強くなります。

                   

アカタテハ  Vanessa indica  英:Indian Red Admiral

●前翅長:30–35 mm  ●時期:3–4月(越冬型)、5–10月(年3回発生)  ●越冬態:成虫、幼虫  ●目撃頻度:(+)  ●幼虫の食草:カラムシ、ヤブマオなどのイラクサ科草本ケヤキ、ハルニレ(ニレ科樹木)

備考:普通種ですが、この森や周囲エリアでは珍しい種で、目撃頻度は限られます。食草であるカラムシやヤブマオの少なさに帰因していると考えられます。

                   

ヒメアカタテハ  Vanessa cardui  英:Painted Lady

●前翅長:26–33 mm  ●時期:4–11月  ●越冬態:不定  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:キク科(ハハコグサヨモギなど)、イラクサ科(イラクサ、カラムシなど)

備考:本種もアカタテハ同様普通種ですが、目撃は限られます。幼虫の食草のヨモギなどの少なさが原因だと思われます。

                   

ルリタテハ  Kaniska canace  英:Blue Admiral

●前翅長:27–43 mm  ●時期:3–4月(越冬型)、5–10月 (年3回発生) ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:サルトリイバラ科(サルトリイバラ、シオデ)、ユリ科ヤマユリホトトギスなど)

備考:タテハチョウ亜科のなかでは、キタテハに次いでよく目撃できます。森内のサルトリイバラなどに幼虫の発生も見られます。

                   

ヒオドシチョウ  Nymphalis xanrhomelas 英:Large Tortoiseshell (yellow-legged tortoiseshell)

●前翅長:27–43 mm  ●時期:3–4月(越冬型)、6月、9–11月 (年1回発生) ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:(+)  ●埼玉県 (2018) 絶滅危惧II類(VU)[1●幼虫の食草:エノキ、アキニレ、ヤナギ類

備考:全国的に減少が著しい種で、埼玉県内でも生息地は限られます。ゆるむしの森でも目撃頻度は少ないですが、春には越冬した個体が比較的多く見られます。

                   

コムラサキ亜科 Apaturinae

コムラサキ  Apatura metis  英:Freyer's Purple Emperor

●前翅長:30–42 mm  ●時期:5–10月(年3回発生) ●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:++  幼虫の食草:カワナヤギ、シダレヤナギ、マルバヤナギなどのヤナギ科の樹木

備考:埼玉県や周辺の地域でも減少している種で、ヤナギ類の伐採とともに次第に分布が局地的になってきています。ゆるむしの森ではヤナギ類が多く、成虫も豊富に見ることができます。

                   

ゴマダラチョウ  Hestina japonica (Hestina persimilis japonica) 英:Siren Butterfly

●前翅長:34–48 mm  ●時期:5–9月(年3回発生)●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+  幼虫の食草:エノキ、エゾエノキ(アサ科樹木)

備考:エノキを食樹とする普通種ですが、やはり全国的に個体数が年々減る傾向にあるようです。この森では、コムラサキや下記のアカボシゴマダラと比べると、目撃できる回数は少ないです。

                   

アカボシゴマダラ  Hestina assimilis assimilis   英:Red Ring Skirt

●前翅長:38–52 mm  ●時期:4–11月(年3–4回発生)●越冬態:幼虫  ●目撃頻度:+++  特定外来生物  幼虫の食草:エノキ、エゾエノキ、クワノハエノキ(アサ科樹木)

備考:この森ではキタテハと並んで最も多く見られるタテハチョウです。関東中心に生息する外来種ですが、年々生息域を拡大しています。たとえば、西の地域では愛知県で毎年越冬幼虫を確認しています。幼虫の宿木が同じであるゴマダラチョウとの競合が懸念されていますが、ゆるむしの森を含めて調べた範囲(埼玉、千葉、東京、愛知)では、本種の幼虫はもっぱらエノキ低幼木に、ゴマダラチョウは高木・亜高木に幼虫が見られ、棲み分けしている印象です。

                   

引用文献

[1] 埼玉県レッドデータブック動物編2018  (6) 昆虫類 ② チョウ目チョウ類: https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/16reddatabook-chourui.pdf

                   

カテゴリー:ゆるむしの森のチョウ

シロチョウ科

2024.04.13更新 ゆるむしの森のチョウ

「ゆるむしの森」および周辺エリアで、これまで観察できたシロチョウ科 Papilionidae のチョウは4種です。時期については、成虫の出現時期を表します。目撃できる個体数については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                   

モンキチョウ亜科 Coliadinae

モンキチョウ  Colias erate  英:Eastern Pale Clouded Yellow

●前翅長:24–33 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:アカツメクサシロツメクサミヤコグサレンゲソウなどの多くのマメ科植物

備考:最も普通に見られるチョウの一つです。

                   

キタキチョウ(キチョウ) Eurema mandarina  英:Common Grass Yellow

●前翅長:19–27 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:成虫  ●目撃頻度:+++  ●幼虫の食草:ネムノキ、ケハギ、ウマゴヤシ、ハリエンジュなどのマメ科、クロウメモドキなどのクロウメモドキ

備考:普通種ですが、5月から初夏にかけては個体数が少なくなります。秋に大発生します。

                   

モンシロチョウ亜科 Pierinae

モンシロチョウ Pieris rapae  英:Small White

●前翅長:20–30 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+++  ●幼虫の食草:アブラナシロツメクサ、キャベツなどの多くのアブラナ科植物

備考:ゆるむしの森で、年間を通じて最も個体数が多いチョウです。

                   

スジグロシロチョウ Pieris melete  英:Gray-vanied Whilte

●前翅長:25–35 mm  ●時期:4–10月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:イヌガラシ、ダイコン、アブラナカラシナなどのアブラナ科植物

備考:モンシロチョウよりやや大きく、飛び方も緩やかで、林縁や林間をヒラヒラ飛んでいることが多いです。普通種ですが、モンシロチョウよりはるかに少なく、なかなかお目にかかれません。

                   

ツマキチョウ Anthocharis scolymus  英:Yellow Tip

●前翅長:20–30 mm  ●時期:3–5月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:タケツネバナ、イヌガラシ、スカシタゴボウハナダイコンヤマハタザオ・ハタザオ・ミヤマハタザオなどのアブラナ科植物

備考:モンシロチョウより一回り小さく、飛び方はやや直線的かつ緩やかです。春にこのような飛び方をしているシロチョウを見たら、本種の可能性が高いです。♂は前翅の先端がオレンジ色をしており、目を凝らすと飛んでいてもその色を確認できます。普通種ですが、春にしか発生しないので(春の妖精と呼ばれている)、時期を過ぎると見逃してしまいます。
                   

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アゲハチョウ科

2023.9.01更新  ゆるむしの森のチョウ

「ゆるむしの森」および周辺エリアで、これまで生息が確認できたアゲハチョウ科 Papilionidae のチョウは6種です。目撃できる個体数については:多い +++ 、中程度 ++、少ない +、稀 (+) で表しています。

                 

アゲハチョウ亜科 Papilioninae

アゲハチョウ(ナミアゲハPapilio xuthus   英: Asian Swallowtail

●前翅長:38–60 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:ミカン、カラタチ、サンショウなどのミカン科植物

                 

キアゲハ Papilio machaon  英: Old World Swallowtail

●前翅長:38–65 mm  ●時期:3–11月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:ハマウド、シシウド、ノダケなどのセリ科植物、ニンジン、ミツバ、アシタバ、パセリなど

                 

クロアゲハ  Papilio protenor  英: Spangle

●前翅長:45–70 mm  ●時期:4–9月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:ミカン、ユズ、カラタチ、サンショウなどのミカン科植物

                 

ナガサキアゲハ  Papilio memnon  英: Great Mormon 

●前翅長:60–80 mm  ●時期:5–10月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:+  ●幼虫の食草:ミカン、ユズ、カラタチ、サンショウなどのミカン科植物

                 

ジャコウアゲハ  Atrophaneura alcinous

●前翅長:45–60 mm  ●時期:4–10月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:(+)  ●幼虫の食草:ウマノスズクサなどウマノスズクサ科植物

                 

アオスジアゲハ Graphium sarpedon  英: Common Bluebottle

●前翅長:35–45 mm  ●時期:5–10月  ●越冬態:蛹  ●目撃頻度:++  ●幼虫の食草:クスノキタブノキ、イヌガシ、ニッケイなどのクスノキ科植物

                 

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