ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

クワガタムシ発生

「ゆるむしの森」では、例年5月の終わり頃になるとクワガタが見られるようになります。今年もそろそろかなと思って訪れてみると、ちゃんと発生していました。この森には樹液の豊富なクヌギの高木はないのですが、この時期、アキニレ、ハンノキ、マグワ、ヤナギ類の樹液レストランが開店中、クワガタのお客が来店していました。

写真1はハンノキ Alnus japonica の主幹にいたクワガタです。コクワガタ Dorcus rectus のオスと思われますが、特徴的な内歯の発達が確認できませんでした。小型の部類でしょう。

写真1. ハンノキ上のコクワガタのオス(2022年5月25日)

同じハンノキにいたコクワガタと思われるメスです(写真2)。

写真2. ハンノキにとまるコクワガタのメス(2022年5月25日)

写真3はアキニレ Ulmus parvifolia にとまるクワガタです。こちらもコクワガタのメスと思われますが、メスははっきり言ってよくわかりません。

写真3. アキニレにとまるコクワガタ(メス)と思われる個体(2022年5月25日)

この森には立派なマルバヤナギ Salix gilgiana が生えていますが、樹液が豊富で次々とアカボシゴマダラ Hestina assimilis assmilisオオスズメバチがやってきていました。写真4はアカボシゴマダラの白化型です。

写真4. マルバヤナギの樹液を吸うアカボシゴマダラ白化型(2022年5月25日)

同じ位置で画像を撮っていたら横から樹液の固形物を抱えたクワガタがやってきました(写真5)。

写真5. マルバヤナギ上のアカボシゴマダラとクワガタ(2022年5月25日)

こちらもアカボシゴマダラとクワガタの共演です(写真6)。

写真6. マルバヤナギ上のアカボシゴマダラとクワガタ(2022年5月25日)

もっと近づいて観察したかったのですが、どの樹液の木の周りもオオスズメバチがブンブン飛んでいて、思うようにいきませんでした。まもなく、ノコギリクワガタヒラタクワガタなども登場してくると思います。昨年は5月末に、ノコギリクワガタが見られました(→初夏の昆虫)。

            

カテゴリー:生き物観察

5月のタテハチョウ

「ゆるむしの森」は平野のど真ん中にある小さな森ですが、タテハチョウの仲間が豊富に生息し、5月のこの時期1化目の個体が乱舞する姿を見ることができます。先のブログ記事「5月上旬の昆虫」でも紹介しましたが、飛ぶ姿が目立つのはコムラサキ亜科のゴマダラチョウとアカボシゴマダラです。

今日も沢山飛翔する姿が見られたものの、なかなかとまってくれず、あるいは木々の高い位置に葉に隠れるようにとまることが多かったため、写真におさめることができませんでした。一方で、蛹や幼虫もまだまだ見られます。写真1はエノキにぶら下がっていたゴマダラチョウの蛹です。

写真1. エノキの低い位置にぶら下がるゴマダラチョウ Hestina persimilis japonica の蛹(右側にオヤブジラミが見える)(2022年5月18日)

アカボシゴマダラの蛹も沢山見ることができましたが、何とこの時期、エノキの幼木にまだ脱皮していない越冬幼虫がいました(写真2)。

写真2. アカボシゴマダラ Hestina assimilis assmilis の越冬幼虫(脱皮前)(2022年5月18日)

上記2種に負けじとたくさん飛んでいたのがコムラサキです。ゆるむしの森にはヤナギ類が豊富に生えていますが、カワヤナギの周りを数個体が飛び回っていました。写真3はアキニレの葉上に静止するコムラサキです。

写真3. アキニレの葉にとまるコムラサキ Apatura metis(2022年5月18日)

コムラサキ亜科の種と並んで沢山飛んでいたのがイチモンジチョウ亜科のチョウです。前のブログでコミスジを紹介しましたが、今日は加えてイチモンジチョウとアサマイチモンジ(埼玉県準絶滅危惧2型 [NT2])が乱舞していました。

写真4は、イチモンジチョウがとまる姿です。前翅の縦に並ぶ白紋の列の4番目が著しく小さくなる(消えかかる)ことでアサマイチモンジと見分けることができます。

写真4. クワの葉にとまるイチモンジチョウ Limenitis camilla(2022年5月18日)

写真5は翅をひらいたところを捉えたものです。前翅の縦の白紋の4番目が小さいことに加えて、前側の中央の白紋がほとんど消えることで特徴付けられます。

写真5. ハンノキの葉上にとまるイチモンジチョウ(2022年5月18日)

写真6は別の個体のイチモンジチョウです。

写真6. アキニレの葉上にとまるイチモンジチョウ(2022年5月18日)

写真7はアサマイチモンジです。埼玉県では準絶滅危惧2型(NT2)に指定されている種です。前翅の縦の白紋列の4番目がしっかり確認できます。また前翅表側の先端中央に、イチモンジチョウにはない白紋がかすかに見えます。

写真7. アキニレの木にとまるアサマイチモンジ Limenitis glorifica(2022年5月18日)

写真8は別個体のアサマイチモンジです。

写真8. カワヤナギの葉にとまるアサマイチモンジ(2022年5月18日)

マルバヤナギの樹液が出ている部分にはルリタテハがいました(写真9)。翅が痛んでいて越冬の成虫だと思われます。

写真9. マルバヤナギにとまるルリタテハ Kaniska canace(2022年5月18日)

森の傍にある石塀には別のルリタテハがとまっていました(写真10)。こちらも翅が少し痛んでいて、翅の色もくすんでいます。越冬個体だと思われます。

写真10. 石塀にとまるルリタテハ(2022年5月18日)

クワの幹には、ジャノメチョウ亜科のサトキマダラヒカゲがとまっていました(写真11)。

写真11. クワの幹にとまるサトキマダラヒカゲ Neope goschkevitschii(2022年5月18日)

ジャノメチョウでは、ヒメジャノメも写真に収めることができました(写真12)。

写真12. カキノキの葉上にとまるヒメジャノメ Mycalesis gotama(2022年5月18日)

タテハチョウでは、上記のほか、キタテハ、ツマグロヒョウモン、およびヒカゲチョウを見ることができました。

タテハチョウ以外では、ナミアゲハ、アオスジアゲハ、ナガサキアゲハ、モンシロチョウ、キタキチョウモンキチョウヤマトシジミベニシジミイチモンジセセリを目撃しました。

            

カテゴリー:生き物観察

5月上旬の昆虫

5月初旬の大型連休に明けに「ゆるむしの森」を訪れました。森はますます緑の度合いを増していました。たくさんのチョウが乱舞していて、目立ったのがゴマダラチョウとアカボシゴマダラです。5月初めは1化目の羽化が続々と始まる時期ですが、あちこちに蛹痕を見つけることができました。

残念ながら、これらのチョウは樹木の周りを割と高速で舞っていて、写真に収めることができませんでした。他にはナガサキアゲハナミアゲハ、モンシロチョウ、ルリタテハ、キタテハ、ヒメアカタテハ、アサマイチモンジ、ツマグロヒョウモンサトキマダラヒカゲ、ダイミョウセセリを目撃することができましたが、シャッタ−チャンスがありませんでした。

それらのなかで、唯一とまるところを撮ることができたのがコミスジ(タテハチョウ科 イチモンジチョウ亜科)です(写真1)。パッパッ、スーという感じの独特の飛び方をしますが、大発生していました。

写真1. コミスジ(2022年5月4日)

ハンノキの林の下は、オヤブジラミ Torilis scabra(セリ科)が大繁茂していて一面を覆っていました。前のブログ記事「ギンツバメ」でも紹介したように、ギンツバメがあちこちにとまっていました。

写真2. ハンノキの林の下に繁茂するオヤブジラミ(2022年5月12日)

ギンツバメとともに、オオウンモンクチバ Mocis undata(ヤガ科 シタバガ亜科)があちこちに見られました(写真3)。本種は、前翅内側には黒点があることで特徴付けられますが、これはその特徴がない個体です。

写真3. オヤブジラミにとまるオオウンモンクチバ(2022年5月12日)

オヤブジラミの繁みのところどころには、セイタカアワダチソウが生えていて、そのうちの一つにマメドクガ Cifuna locuples confusa(ドクガ科)の幼虫がいました(写真4)。いかにも毒々しい感じです。

写真4. セイタカアワダチソウの葉上のマメドクガの幼虫(2022年5月12日)

観察路の脇にはムラサキツメクサアカツメクサTrifolium pratenseマメ科)がたくさん見られました(写真5)。

写真5. ムラサキツメクサアカツメクサ)(2022年5月12日)

よく見ると、花にマルカメムシ Megacopta punctatissimumマルカメムシ科)が群がっていました(写真6)。本種は甲虫にも見えますが、れっきとしたカメムシの仲間で、実際触ってみるとスパイシーなカメムシ臭がします。

写真6. アカツメクサの花に群がるマルカメムシ(2022年5月12日)

アカツメクサの葉の裏側にはナシケンモン Viminia rumicis(ヤガ科 ケンモンヤガ亜科)と思われる幼虫がいました(写真7)。

写真7. ナシケンモンと思われる幼虫(2022年5月12日)

アキニレの主幹からは、まだ匂うほど本格的ではありませんが、あちこちから樹液が出ていて、甲虫類が集まっていました。写真8は、サビキコリ Agrypnus binodulus(コメツキムシ科 サビキコリ亜科)です。

写真8. アキニレ上のサビキコリ(2022年5月12日)

樹液にはヨツボシケシキスイ Glischrochilus (Librodor) japonius(ケシキスイ科 オニケシキスイ亜科)が群がっていました(写真9)。クワガタの雌のような「あご」をしています。

写真9. アキニレの樹液に群がるヨツボシケシキスイとサビキコリ(2022年5月12日)

アキニレの上にはハナムグリ CetoniaEucetoniapilifera piliferaコガネムシハナムグリ亜科)もいました(写真10)。

写真10. アキニレの上のハナムグリ(2022年5月12日)

もう少しすれば、樹液上にはクワガタやカブトムシが見られるのではないかと思います。

            

カテゴリー:生き物観察

ギンツバメ

この時期「ゆるむしの森」には、オヤブジラミ(セリ科)が一面に繁茂してきました。ハンノキの林も下側はオヤブジラミだらけですが、今日訪れてみると、この草のブッシュの間からあちこち白いものが見えます。何だろうと思って近づいてみると、ギンツバメAcropteris iphiata(ツバメガ科 ギンツバメ亜科)でした。

ギンツバメは開張 25–30 mm のガで、翅を広げてペタッと葉上にとまった姿は、何かのデザイン画の模様に見えます(写真1)。

写真1. オヤブジラミの葉上にとまるギンツバメ

オヤブジラミのブッシュのところどころには、セイタカアワダチソウが生えていて、ここにもとまっていました(写真2)。

写真2. セイタカアワダチソウの葉上にとまるギンツバメ

ヨシの葉上にもとまっていました(写真3)。

写真3. ヨシの葉の上にとまるギンツバメ

ギンツバメの幼虫が食草とするのは、ガガイモ、オオカモメヅル、コカモメヅル、トキワカモメヅル、ナンゴクカモメヅルなどのガガイモ科(現在キョウチクトウ科に再分類)の植物です。これだけ大発生しているということは、食草がたくさんあるということでしょう。森の中のガガイモ類を今度探してみようと思います。

            

カテゴリー:生き物観察

4/30-今日の生き物観察・キジの夫婦

今日の「ゆるむしの森」は昨夜の雨から一転、よく晴れた清々しい新緑の森でした。しかし、日中でも20℃に至らず、4月末としては肌寒い日となりました。写真1は森の中央に位置する二つのハンノキの孤立木です。

写真1

この森には国鳥であるキジが頻繁に見られます。今日も「キェー」「キェーン』と甲高いオスの鳴き声が森にこだましていました。写真2は森の一部にある畑地を歩くオスです。

写真2

ときどきエサをついばんでいました(写真3)。

写真3

キジはほとんど夫婦(と言っても一夫多妻で)連れ添って歩いています。今日は、普段見られるメス2頭ではなく、1頭のみでした(写真4)。

写真4

ハンノキの林は青々としてきました(写真5)。

写真5

ハンノキの葉上にはアマガエルがいました(写真6)。この森にはたくさんのアマガエルが見られます。

写真6

エノキは新緑豊富で、ゴマダラチョウの幼虫を探すのが大変ですが、1頭見つけることができました(写真7)。モッチリ太っていて、蛹化に至る直前でしょうか。

写真7

            

カテゴリー:生き物観察

クヌギとコナラ

昨年、「ゆるむしの森」で何種類かの樹木の幼木を見つけました(→森の中の幼木)。そのなかにクヌギとコナラがありました。この森にはブナ科の高木はありませんが、クヌギ、コナラの低幼木(0.5〜3 m)はあちこちに生えていて、これから成長が期待される貴重な木です。

今年も春になって、これらの幼木が急激に新葉をつけてきました。写真1クヌギです。樹高は 1 m ほどです。

写真1. クヌギの幼木

葉の上を見たら、ナミテントウの蛹がありました(写真2)。

写真2. クヌギの葉上のナミテントウ(蛹)

こちらはコナラです。クヌギと同じく樹高 1 m ほどです(写真3、4)。

写真3. コナラの幼木

写真4. コナラの幼木-2

クヌギとコナラは多種類の昆虫の幼虫の食草として知られています。また成木になれば樹液が豊富で成虫のエネルギー源となります。

幼虫期にクヌギとコナラを食べる昆虫としてよく知られているのが、ゼフィルス類のシジミチョウです。この森から約 200 m の距離にある雑木林にはミズイロオナガシジミやウラナミアカシジミを確認していますので、この森での生息も十分に期待できます。

            

カテゴリー:樹木と草本

ミドリシジミ

「ゆるむしの森」の特徴の一つとして、ハンノキを中心とした森があります。この森や周辺には、ハンノキが好む湿地があるわけでもないのに、数えただけでも10 m 程度のハンノキが50本程集まった森が形成されています。

ハンノキと言えば、ミドリシジミ Neozephyrus japonicusオナガミズアオが食草とする木で、後者はすでにこの森で何度も見かけていますが(→オナガミズアオ)、前者はこれまで未確認でした。そこで、今日は、ミドリシジミの幼虫探しをすることにしました。

ミドリシジミの幼虫は大きくなると、葉を巻いて中に隠れる性質がありますので、餃子の形に似た巻いた葉を目印に探すことができます。4月下旬がちょうど探すチャンスです。

今日、ハンノキの森に入り、一本一本丁寧に探したところ、それらしき”ハンノキギョーザ”が直ぐに見つかりました(写真1)。

写真1

一つギョーザを確認すると、後は続けざまに見つけることができ、1本のハンノキで10個ほどになりました。ただ、写真2のようにひしゃげた形のものもあり、これら全部がミドリシジミのものか今ひとつ自信がありません。

写真2

そこで、典型的な形のもので、先が少し開いたものがあったので、これを覗いてみることにしました(写真3)。

写真3

くっついていた糸をほぐして中を開いてみると、いました。ミドリシジミの幼虫です(写真4)。ゆるむしの森で初めて確認しました。6月になれば、成虫が乱舞する姿が見られることでしょう。

なお、ミドリシジミは埼玉県の「県のチョウ」に、かつ準絶滅危惧1型(NT1)に指定されています。

写真4

葉を開けてしまって幼虫には気の毒なことをしてしまいましたが、3時間後に同じ葉を見たら、しっかり再縫合してありました。

それにしても水田地帯の真ん中にある森なのに、いったいどこからこのチョウはやってきたのでしょう。この森の周囲1km の範囲には、まとまったハンノキの森はありません。ところどころに、ハンノキの孤立木を含む雑木林や屋敷林があるのみです。これらの残った孤立木を食べながら細々と命をつなぎ、ゆるむしの森のハンノキにやってきたのでしょうか。

いずれにしろ、この森の楽しみがまたひとつ増えました。

            

カテゴリー:生き物観察