ゆるむしの森プロジェクト

休耕田に自然発生した森林緑地「ゆるむしの森」の観察、管理・運営活動を中心とする情報ブログ

早春のゆるむしの森−2022

カテゴリー:日記・その他

先日「ゆるむしの森」に生き物観察で訪れましたが(→早春の生き物観察)、今日(3月23日)は、この森の清掃(ゴミ拾い)と観察路の草刈りを行ないました。

写真1は、森の北西側入り口にあるハンノキのエリアを示します。ハンノキはまだ芽吹いていませんでしたが、下草は青々としていて、この樹木の窒素固定能力を感じさせるものでした。ハンノキの根には、アクチノバクテリア Actinobacteria とよばれる系統の細菌の一種が共生していて空中窒素を固定します。

↓写真1

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写真2は、ハンノキの林の入り口から見た観察路を示します。観察路部分も青々としています。写真の中で見える青いテープは、昆虫の植樹となる幼木や主な樹木(エノキ、クヌギ、コナラなど)に目印をつけたものです。伐採したり、踏みつけたりしないように気をつけています。今回も沢山の幼木を見つけたので、目印をつけました。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20220324090311j:plain

ハンノキはミドリシジミ Neozephyrus japonicus の食樹ですが、まだ卵を見つけられていません。昨年夏にそれらしき成虫の姿を一度目撃したので、生息への淡い期待をしています。

写真3はハンノキの森の横に生えているカワヤナギです。こちらは新葉がもう出ていました。昨年晩秋にコムラサキ Apatura metis の越冬幼虫を確認していた木ですが、今日は、探した範囲では見つけられませんでした。もう枝上に移動してしまったのでしょうか。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20220324090325j:plain

森を訪れたメインの仕事の一つはメダケの伐採でした。周囲に広がっていたメダケの林を 1–2 m ほどの幅で伐採しました。写真4は、伐採して、通路を確保した後の様子を示します。手前右側に見える樹木はクワです。写真中央には、まっすぐ伸びたハンノキが見えます。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20220324090338j:plain

写真5は南側に広がるアキニレの森へ繋がる道を示します。写真中央付近に白っぽく見える木はムクノキです。この周辺の枯れ草を除去しました。

アキニレの森の中は、誰かが捨てた(多分周囲から投げ捨てた)家庭ゴミや除草剤(グルホサート)の空容器が散乱していました。木々の間を縫って集めるのは大変でしたが、何とかきれいにすることができました。ポリ大袋三つ分のゴミが集まりました。

↓写真5f:id:yurumushinomori:20220324090356j:plain

写真6は北東側にある、アキニレ、エノキ、カワヤナギなどから成る混成の森を示します。畑に咲いた菜の花がきれいでした。しかし、森の中に入ると、こちらもゴミがあちこちに散乱しており、またタヌキのものと思われる大量の糞が見つかりました。いわゆる「タヌキのため糞」のようです。

↓写真6f:id:yurumushinomori:20220324090410j:plain

今日は清掃と伐採と樹木・草本のチェックで正味4時間の作業でした。写真7は、帰りに撮った菜の花畑から見た、ハンノキ(右側)とアキニレの森(左側)を示します。昨年(→早春のゆるむしの森–2021)と比べると明らかに樹高が伸びていることがわかります。森が青々としてくるまでもう少しの時間です。

↓写真7f:id:yurumushinomori:20220324090426j:plain

              

カテゴリー:日記・その他

早春の生き物観察

カテゴリー:生き物観察

今年、少し暖かくなってきたので、「ゆるむしの森」に生き物観察に出かけました。昆虫の姿はほとんど見ることはできませんでしたが、いくつかの野鳥を観察することができました。残念ながら、写真に収めることはできませんでしたが、コゲラツグミシジュウカラなどが樹上にとまる姿があり、川辺ではカルガモ、ブッシュの中にはキジを観ることができました。

数少ない昆虫として、越冬したキタテハ成虫を観ることができました(写真1)。濃い色で傷ついた翅は、越冬成虫によくみられるものです。

f:id:yurumushinomori:20220320113224p:plain写真1

成虫ではこのほかに、キタキチョウ、モンシロチョウ、ヒオドシチョウを観ることができました。

エノキ下の落葉やカワヤナギ樹上の越冬幼虫(それぞれゴマダラチョウおよびコムラサキ)を探ってみましたが、検出できませんでした。カワヤナギはけっこう芽吹いており、越冬幼虫は枝上に移動したかもしれません。

エノキ幼木では、すでに起眠したアカボシゴマダラの越冬幼虫がたくさん観られました(写真2)。

f:id:yurumushinomori:20220320113238j:plain写真2

            

カテゴリー:生き物観察

エノキ下の越冬幼虫調査

カテゴリー:生き物観察

ゆるむしの森プロジェクトでは、毎年冬になると、エノキ Celtis sinensis 下のオオムラサキ Sasakia charondaゴマダラチョウ Hestina japonica (H. persimilis japonica) の越冬幼虫調査を行っています。調査場所は、埼玉県はもとより、周囲の茨城、千葉、東京の森や雑木林のエリアです。

東京都内では、もはや山地や丘陵地まで行かないとオオムラサキは見られませんが、埼玉、茨城、千葉では平野部でもエノキが生える森が残っており、オオムラサキの生息を支えています。

写真1は、今年の冬に訪れた埼玉県内某所(平野部)の森の周囲に生えるエノキの一つを示します。この森では数十本のエノキが点在しており、毎年その多くにオオムラサキの越冬幼虫が見られます。

f:id:yurumushinomori:20220320091520j:plain↑写真1

越冬幼虫が見られるのは主にエノキ高木、亜高木です。高木下の落葉からは、オオムラサキ以外にゴマダラチョウが頻繁に検出されますが、時おりアカボシゴマダラ Hestina assimilis assimilis も出てくることがあります。写真2は、3種がそろって出てきたところを撮影したものです。いまのところ、関東地域でしか遭遇しない光景です。

f:id:yurumushinomori:20220320091534j:plain写真2:左からオオムラサキ、アカボシゴマダラ、ゴマダラチョウの越冬幼虫

千葉県内の平野部や台地には、中央に川が流れる谷津田が点在し、その周囲に森が広がっていて、所々オオムラサキが生息しています。写真3千葉市内にある谷津田の一つです。

f:id:yurumushinomori:20220320091547j:plain写真3

谷津田の周囲の森には、根際が発達したエノキ高木が点在していますが、このような根元から越冬幼虫が出てきます(写真4)。

f:id:yurumushinomori:20220320091601j:plain写真4

写真5は、オオムラサキゴマダラチョウがいっしょに出てきたところを示します。

f:id:yurumushinomori:20220320091612j:plain写真5:左側2匹がゴマダラチョウ、右側2匹がオオムラサキ

埼玉、千葉、東京では年を追って、オオムラサキゴマダラチョウの越冬幼虫が減少しています。特に今年の冬は例年に比べて激減しており、ゴマダラチョウにおいてより顕著でした。

オオムラサキの成虫は森の縁を飛ぶ習性があり、樹液を吸いながらエネルギーを補給します。また越冬幼虫は、ある程度の湿気がないと冬を越すことができません。したがって、その生息や遺伝的多様性の維持には、エノキや樹液を出す樹木(クヌギやコナラなど)が豊富にあって、湿気が保たれたある程度の大きさの森や雑木林が必要です。

開発などで森が分断されると、成虫の生息を狭めることになり(遺伝的多様性の縮小)、幼虫に必要な湿気も失われていきます。エノキの伐採は特に大打撃になります。東京都では、過去このような経緯で平野部では急速にオオムラサキはいなくなったと思われます。一方、埼玉、茨城、千葉ではまだギリギリの状態で平野部での生息を保っているのではないでしょうか。

ゴマダラチョウオオムラサキと比べれば生息範囲が広く、街中の公園や緑地でも見ることができますが、同様に個体数の減少が起こっています。むしろ、個人的には、オオムラサキよりも経年の減少速度が速い印象を受けます。

日本本土産のアカボシゴマダラは特定外来生物に指定されており、在来種との食樹(エノキ)をめぐる競合が懸念されています。しかし、私たちの調査では、いくつかの先行研究もあるとおり、アカボシゴマダラの幼虫の生息場所は圧倒的にエノキ低幼木であり、高木を好むゴマダラチョウオオムラサキとは棲み分けを行なっていると考えられます。現在、詳細な分布調査を行っています。

            

カテゴリー:生き物観察

カワヤナギ上の越冬幼虫

カテゴリー:生き物観察

今日は「ゆるむしの森」のメダケの伐採・管理作業を行なう傍ら(→メダケの伐採管理)、ヤナギ類に生息するコムラサキの越冬幼虫の観察を行ないました。数日前、主幹上を移動する幼虫を目撃していましたので(→コムラサキ亜科幼虫は冬支度)、葉上から沢山下りてきていることを期待してのことです。

写真1に、観察したカワヤナギの一つを示します。森内には、このようなカワヤナギが10本程存在します。

↓写真1  カワヤナギf:id:yurumushinomori:20211126220532j:plain

早速、主幹を観察したところ、1分程で最初の幼虫を見つけることができました(写真2)。地上から0.7 mほどの高さで、樹皮の隙間にうまく乗っかって位置どりしていました。体長は約 8 mm の小さな幼虫なので、目を凝らして探す必要があります。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211126220551j:plain

目が慣れてくると、次々と幼虫が見つかりました。写真3には、2匹の幼虫が並んでいます。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211126220625j:plain

写真4の幼虫は、樹皮の内側に入り込んでいるのでちょっとわかりにくいです(矢印の位置)。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211126220607j:plain

このカワヤナギでは、合計7匹を見つけることができました。他のカワヤナギも当たってみましたが、やはり続々と幼虫が見つかりました。一方、マルヤナギでは見つけるができませんでした。

幼虫探しをしている間に、周りを黒っぽいチョウが飛んでいるのが目につきました。幼虫探しを中断して、追跡しながら葉上に止まったところを見たら、ヒオドシチョウでした。急いでカメラに収めようとしましたが、逃げられてしまいました。ヒオドシチョウを見たのは今年初めてです。

            

カテゴリー:生き物観察

メダケの伐採管理

カテゴリー:日記・その他

ゆるむしの森の西側にはちょっとした竹林があります。竹林といってもメダケ(女竹、雌竹)の林です。メダケはササの仲間で、見た目は、ササと竹の中間といったところでしょうか。

地下茎が伸び、繁殖力が旺盛なので、ちょっと油断すると観察路を覆ってしまったり、草地エリアを浸食したりします。そこで、定期的に伐採管理しています。

今日は今年2回目の伐採を行ないました。夏前に伐採を行なっていましたが、今日来てみると観察路が一部覆われていて通れなくなっていました。約1時間かけて、伐採し、路を確保しました。

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メダケ材はやわらかくねばり強いので、竹細工や農業資材などに利用されてきました。炭にもできるようです。筍は食べると苦味が強いようですが、工夫すれば食材にもできるでは? いま活用法を考えています。

             

カテゴリー:日記・その他

コムラサキ亜科幼虫は冬支度

カテゴリー:生き物観察

「ゆるむしの森」にはヤナギ類やエノキが豊富にあります。これらを食樹とするコムラサキ亜科(Apaturinae)のチョウにとっては棲みやすいと思われ、夏季にはコムラサキゴマダラチョウ、アカボシゴマダラが飛ぶ姿が頻繁に見られます。

今日、カワヤナギの樹皮上をコムラサキの幼虫が這っている姿を見ることができました(写真1, 2)。10 mm程度の小さな幼虫です(結構移動が速いため、撮影時の焦点合わせが甘くなってしまいました)。

↓写真1f:id:yurumushinomori:20211125083102j:plain

越冬に向けて、樹皮上の適当な位置を探している最中だと思います。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211125083119j:plain

エノキ低木には、アカボシゴマダラの越冬型幼虫が見られました(写真3, 4)。主幹にへばりついていました。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211125083140j:plain

よくアカボシゴマダラは幹上で越冬すると言われていますが、本州産(外来種)についてはそんなことはなく、大部分は落ち葉の下で越冬します。写真の個体も、本格的な冬になれば落ち葉の下に移動すると思います。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211125083152j:plain

今日、エノキの葉、枝、幹上を探した限りでは、ゴマダラチョウは見つけることができませんでした。冬になったら、エノキの落ち葉の下の探索を行ないたいと思います。

            

カテゴリー:生き物観察

森の中の幼木

カテゴリー:樹木と草本

森の中には沢山の種類の幼木が観察されます。成木が見当たらないのに、一体どこから侵入したのだろうと思われるような種類も見られます。草刈り作業中にうっかり切ってしまわないように、慎重に保全、観察を続けています。

写真1はムクノキです。アキニレ、エノキとともにこの森で最もよく見られる種類です。

↓写真1f:id:yurumushinomori:20211127102620j:plain

写真2クヌギです。この森にはクヌギの高木はありませんし、周囲にも見当たりませんが、何本かの低幼木を観察することができました。どこからかドングリが転がり込んできた(鳥が運んできた?)のでしょうね。保全対象の幼木は青いテープで目印をつけています。

↓写真2f:id:yurumushinomori:20211127102534j:plain

写真3はコナラです。クヌギ同様、こちらも高木はありませんが、低幼木がいくつか見られました。貴重な幼木なので、大切に保全しています。

↓写真3f:id:yurumushinomori:20211127102549j:plain

写真4はミズキです。森の周辺にはミズキの高木がありますが、森内ではまだ低木、幼木の状態です。

↓写真4f:id:yurumushinomori:20211127102643j:plain

写真5クスノキです。森内は常緑樹は非常に少ないので、貴重な種類です。

↓写真5f:id:yurumushinomori:20211127103958j:plain

最後はオニグルミです(写真6)。森内をくまなく探して見ましたが、わずか3本のみ生えていました。

↓写真6f:id:yurumushinomori:20211127102654j:plain

他にもいろいろな種類の幼木が見られますので、適宜紹介していきたいと思います。

            

カテゴリー:樹木と草本